データが語る10カ国のZ世代:世界を動かす若者の価値観とは? ~ 国別比較でひも解くZ世代のライフスタイル ~
- 公開日:2025/09/30
- 更新日:2025/09/30
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デジタルネイティブであり、SNS世代。タイパやコスパを重視し、物欲は少なく、“自分らしさ”を大切にする——。これらは日本のZ世代の特徴としてよく知られています。
では、その姿は海外でも共通しているのでしょうか。そして、私たちは本当にZ世代の価値観やライフスタイルをデータで正確に捉えられているのでしょうか。
この記事では、2025年6月17日に開催されたセミナーをもとに、アジア10カ国・延べ28万人・404項目に及ぶ大規模調査から、Z世代の実像をデータでひも解きます。
目次
1.そもそもZ世代とは?
Z世代という呼び方は、1991年に出版された小説『ジェネレーションX』をきっかけに広まった「Gen X」という言葉に由来します。その後、「Gen X」の次の世代が「Y世代」、さらにその次が「Z世代」と呼ばれるようになったとされています。
こうした「Gen X・Y・Z」という区分はアメリカをはじめとする英語圏で広く使われるようになりましたが、日本では10歳刻みの年代区分が一般的です。
なお、本セミナーでは世代を以下のように定義しました。
・Z世代(Gen Z):1996年~2010年生まれ。2025年時点で15〜29歳
※ただしセミナーでは未成年を除き、18〜29歳を対象に集計
・Y世代(Gen Y):30〜49歳
・X世代(Gen X):50〜64歳
Z世代は、5年後の2030年には世界人口の4分の1を占め*1、消費総額も47%増加すると予測されています。*2
Z世代の価値観を知ることは、今後さらに拡大するマーケットを把握する上でも重要となるでしょう。
*1 https://www.statista.com/statistics/1607121/estimated-population-of-the-world-by-generation/
*2 出典:日本経済新聞(2025/3/13)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO87294120S5A310C2TB2000/
2.Z世代の価値観
最初に、10カ国のZ世代が持つ価値観について探っていきます。日々の生活においてさまざまな判断をする際、どのような基準が背景にあるのか、「安定か刺激か」「将来か今か」「体験か物か」「客観か主観か」の4つの角度から紹介します。
なお、本セミナーで使われたデータはインテージが保有する海外生活者データベース「Global Viewer」*をもとに作成しています。
*Global Viewerとは
インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリーに関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。
(1)どのような生活をしたいか?
まず、どのような生活をしたいかに関する調査です。
調査結果から見えてきたトレンドとして、一人あたりGDPが低い国ほど「刺激的な生活をしたい」と答える割合が高くなる傾向がありました。
一般的にZ世代は「現実的」「安定志向」と言われますが、先進国であるシンガポールと香港はそのイメージどおりの結果となりました。一方で、ベトナムを除く他の7カ国では、Z世代が前の世代であるY世代よりも「刺激的な生活」を求める傾向が強く出ています。
つまり、10カ国中7カ国で、Z世代は他の世代以上に「安定よりも変化や挑戦に満ちた刺激的な生活」を望んでいることが明らかになりました。
(2)将来のことより今を充実させたいか?
「将来のために頑張るか、それとも今を充実させることを優先するか」について見ると、国の一人あたりGDPによって傾向が分かれます。
韓国・中国・ベトナム・フィリピンでは、Z世代はX世代・Y世代に比べて「今を充実させたい」と考える割合が高く出ました。一方で、韓国を除くGDP上位国(シンガポール・香港・台湾)のZ世代は、他の世代よりも「将来に備えて準備・投資したい」という意識が強いことが分かります。
つまり、先進国では将来志向、準先進国や発展途上国では「今を楽しみたい」志向がZ世代でより強まるという対照的な傾向が見られるのです。
(3)物の所有欲に関する価値観は?
続いて、物の所有欲に関する価値観を調査しました。
Z世代は「物欲がない」と思われがちですが、東アジア4カ国(香港・韓国・台湾・中国)とフィリピンでは、前の世代となるX・Y世代よりも「物を所有することが大切」と考える割合が高い結果となりました。なお、一人あたりGDPが高い国ほど、その傾向は弱まります。
(4)自分の考えと他者の考えの優先度
この調査では、自分の考えと他者の考えのどちらを優先するかを分析しました。
Z世代は「主観を大切にする」というイメージがありますが、東アジアでは必ずしもそうではないことがわかりました。GDP上位国では主観重視の割合が低く、シンガポールや香港のZ世代はY世代よりも客観的に判断する傾向があります。一方で、中国からフィリピンにかけては主観を重視する姿勢が強く見られます。
(5)Z世代の価値観(国比較)
これまでの調査を振り返ると、一人あたりGDPが高い国ほど、Z世代の4つの価値観は全体的に低くなる傾向があります。ただしその下がり方には違いがあります。「将来重視」「客観的判断」は中位国から上位国になる段階で大きく低下する一方、「刺激的生活」「物の所有欲」は下がり方が緩やかで、上位国と下位国の差は小さいといえます。
一般に“モノ離れ”と言われるZ世代ですが、実際にはGDPが低い国ほど所有欲は高めに出ています。こうした傾向から、上位国のZ世代を参考にすれば、今後の価値観の変化をある程度予測できるかもしれません。
3.Z世代の周りに対する意識
ここからは、環境や健康、買い物など、Z世代が日常生活でどのように意識し、行動しているかを見ていきます。
(1)1年後の自分の経済状況について
まず、1年後の自分の経済状況に関する意識調査です。
シンガポールを除く各国のZ世代は、国の成長率の影響もあってか、他の世代より「良くなる」と考える傾向が強く、将来に対して比較的楽観的に捉えているようです。
(2)自分の健康に関する考え方
次に、自分の健康に関する考え方を調査しました。
一人あたりGDPが高い国ほど平均寿命は延びる一方で、健康意識スコアが下がる傾向にあります。特に韓国は、ほぼ全ての項目で健康意識が低いのが特徴です。医療設備が整っている上位国では、個人で強く健康を意識しなくても安心して過ごせる環境があるためと考えられます。
つまり「GDPが高い=平均寿命は長いが健康意識は低い」という反比例の関係が見られるのです。ただし世代で比較すると、Z世代は他世代よりも健康を重視する傾向があり、国全体の平均とは異なる姿が浮かび上がりました。
ゼロシュガーやゼロカロリーの商品はおいしくないというイメージがありましたが、近年では企業努力によりその味も好評です。清涼飲料のほか、お酒やエナジードリンクなどさまざまな商品が発売され、注目を集めています。
関連記事紹介:【アジア各国のZ世代】手軽に楽しく健康を管理する韓国Z世代
韓国のZ世代女性は、他国よりもお菓子の「味・風味」を重視しつつ「低カロリー」も求める傾向が強く見られます。健康志向の商品であるというだけでは響かず、おいしさとヘルシーを両立した商品でなければ支持されにくいのが特徴です。
(3)環境に関する考え方
環境に対する、いわゆるエコ意識についてはどうでしょうか。
一人あたりGDPが中位・下位の国はエコ意識が高く、GDPが低いほどその傾向が強まります。先進国は環境意識が高いと思われがちですが、必ずしもそうではありません。ただし調査対象国の中でもっともGDPが高いシンガポールでは、Z世代が「ごみを減らす努力」をしており、環境活動に積極的なブランドへの好感度が高いことが特徴です。
エコ意識に関係があるトレンドとして、ヴィーガンコスメが注目を集めています。選ばれる理由は、エシカルや環境配慮といった意識の高さだけでなく、それを選ぶこと自体が“おしゃれ”であり、流行に乗っているという感覚も大きな要因です。こうしたZ世代の消費者心理をうまく取り入れたブランドが成功しており、単なる「意識の高さ」にとどまらず、「おしゃれで欲しくなる要素」を組み合わせることが重要になっています。
関連記事紹介:【アジア各国のZ世代】健康と環境意識の高いベトナムZ世代~注目されている「ヴィーガンコスメ」~
ベトナムのZ世代女性は美と健康への関心が高く、ヴィーガンコスメが注目を集めています。化粧品を選ぶ際はブランドより成分や効果、安全性を重視しており、その背景には偽物商品への警戒心もあります。ヴィーガンコスメは環境や倫理性に加え、「おしゃれ・トレンド」としても支持され、国内外ブランドが市場を拡大。持続可能な消費意識の広がりとともに、今後も成長が期待される分野です。
(4)買い物に関する考え方
続いて、買い物に関する意識を調査しました。
一人あたりGDPが低い国ほど買い物への意識が強く、新しいものへの積極性が見られ、また他者の意見を参考にする傾向があります。逆にGDPが高い国(シンガポールを除く)では、新規性や口コミを重視する姿勢が弱まり、購買行動は慎重さを欠くようになります。
先進国では質の低い商品が少なく、失敗しにくい環境にあるため、意識して選ぶ必要性が低いと考えられます。なお、インドネシアは下位国の中では他者の意見をあまり重視しない点が特徴的です。
(5)Z世代とY世代の比較
最後に、Z世代とY世代の比較です。
これまでの調査では、一人あたりGDPが高い国ほど各意識レベルが低い傾向が見られました。上位国はマーケットが成熟しており、消費者の選択肢が広がっていることから意識が下がっていると考えられます。
しかし詳細に見ると、韓国や台湾のZ世代はY世代よりも意識が高いことがわかります。つまり「GDPが高い=Z世代の意識が低い」とは一概にいえず、シンガポールと香港を除けば、むしろZ世代のほうがY世代より意識レベルが高いケースも確認できました。
4.まとめ
今回は、10カ国のZ世代を対象に、さまざまな価値観や意識をデータで分析しました。世間一般のイメージと一致する部分がある一方で、意外な傾向も多く見られます。また、国ごとに比較することで、それぞれのZ世代の価値観や意識の強弱の違いも浮かび上がってきました。
マーケティング施策を考える際には、国ごとの特徴を理解し、単なるグローバル戦略ではなく、現地のZ世代に刺さる訴求ポイントを設計することが重要です。
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。