【アジア各国の国民性】おおらかで寛容な性格のタイ人の意外な一面
- 公開日:2025/10/30
- 更新日:2025/10/30
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タイ人の性格は、一般的におおらか。小さな困りごとや悩みには、「大丈夫、気にしなくていいよ」という意味のタイ語“マイペンライ”で受け流し、日々を楽しむ。
そんな微笑みの国・タイの人々には、外見重視の一面もある。持ち物が社会的地位を表すとも言われ、ロゴ入りのブランド品が人気になる傾向にある。また、性に寛容な国でもあるタイでは、近年、同性間の恋愛ドラマに登場するアイドルたちがインフルエンサーとして、街中の広告を彩っている。
タイの社会で長く暮らすうちに見えてきたタイ人の性格と、その性格にうまく応えるタイ発ブランドの成功事例を紹介したい。

1.外見は社会的地位を測るもの!?体裁を気にして、より良く見せたい
2024年10月、俳優Rapeepatさん(通称Nam)がFacebookに、自身のピックアップトラックの画像とともにこんな言葉を投稿した。「車は乗り物であり、社会的地位を測るものではない。移動ができて、目的地に着ければそれでよい」。
当時は大規模な詐欺事件が発覚し、詐欺で得た金で数十台もの高級車を所有していた有名人が複数逮捕された時期でもあった。この投稿には多くの賛同や称賛のコメントが寄せられ、メディアでも広く取り上げられて話題となった。この反響の大きさからも、裏を返せば、タイ社会では車が社会的地位の尺度として見なされ、人々が車のブランドに敏感であることがうかがえる。
タイ人は、一般的に外見から相手の社会的地位を推し量る傾向がある。高級品を持っていれば一目置かれやすく、高級車やハイブランドのバッグを好む人も多い。そのため、ときに見栄っ張りに映ることもある。
RapeepatさんのFacebook投稿
Rapeepatさん関連記事:
Matichon Online https://www.matichon.co.th/entertainment/news_4861250

タイでは体裁を重んじ、持ち物や服装に気を配る人が多い。男女問わず、髪を整え、歯並びを意識し、ネイルサロンに通い、食事や汗の匂いで相手に不快感を与えないよう香水をまとうといった気遣いが見られる。
とはいえ、高級商品はごく一部の富裕層のものであり、中間層や若年層にとって高級ブランド品は必ずしも身近な存在とは言えない。そうした層が注目するのは、手が届く価格帯でありながら“きちんとして見える”、つまり「高見え」する商品であり、さらに「人気のため入手困難である」ことも購買意欲を刺激するポイントになっている。
タイ発の女性向けファッションブランドにおいても、オリジナルバッグがブレイクのきっかけになることがある。
2023年にファッションブランド Rally Movement(https://www.instagram.com/rallymovement/)から発売されたバケツ型バッグは、ユニークなデザインと大きな“Ra”ロゴが話題を呼んだ。2025年9月現在でも、新しいロットの発売が告知されると即日完売するほどの人気を維持している。
また、2020年にスタートした Merge(https://www.instagram.com/merge.official_/)も、現在急成長中の注目ブランドだ。ウエストが細くヒップが大きいタイ人女性の体型に合ったジーンズを中心に、ユニセックスファッションを展開している。2024年9月に発売されたトートバッグ Merge A Day Bag は、2025年までに複数のサイズやカラーが登場し、今では「持っていて当然」と言われるほどの必須アイテムとして話題になっている。
いずれのブランドのバッグも価格はおよそ2,500バーツ(約11,500円)。学生でも手が届く価格帯となっている。
女性ファッショニスタとして知名度の高い女優でモデルのArayaさん(通称Chompoo)は、現在40代半ばで3人の子どもを育てる母親でもある。Instagramアカウント(https://www.instagram.com/chomismaterialgirl/)のフォロワー数は1,100万人超。彼女は同世代の女性からZ世代まで、幅広い層から絶大な支持を得るセレブリティだ。女子大学生からは「母がChompooさんをフォローしていて、その影響で私も彼女のファッションをチェックするようになった」という声も聞かれる。
Chompooさんは、Rally MovementやMergeのようなタイブランドのバッグを、可愛らしく華やかなスタイルに合わせてInstagramに投稿している。憧れのインフルエンサーの影響によって、手頃な価格のタイブランドのバッグも、旬のファッションアイテムとして魅力を増している。
バンコクのショッピングモールで行き交う人々を見ていると、数十年前に比べてセンスの良い人が増えたと感じる。SNS上では、欧米のブランド品を身にまとい、OMAKASEを楽しむ投稿があふれているが、実際には自分の身の丈に合ったおしゃれを楽しんでいる人が多い。人気ブランドの多くには、ユニークなデザインや独自の特徴があり、トレンドに敏感な人たちは、それらを“見せるために持つ”傾向があるようだ。
2.性に寛容…LGBTQ+アイドルやタレントの活躍
タイ人の特徴として、性に寛容であることがよく挙げられる。タイの学生に聞くと、男女共学の学校で女子の友達グループに男子1人が混ざっていることはよくあるし、女性的なキャラでかわいい格好が好きな男子も自然に受け入れられている。また、女子の間で憧れの的となるカッコいい女子が、イケてる男子を上回る人気になることもあるという。
10代の子どもを持つタイ人の友人は、「自分の子どもがLGBTQ+でも自然に受け止められる」と話す。自身の経験として、学校や職場といったコミュニティに多様な性の人がいたため、違和感を覚えたことがないという。10年以上前は、LGBTQ+であることを職場でオープンにするのはためらわれる雰囲気もあったそうだが、海外で多様性受容の気運が高まる中、タイ国内でも意識がより一層高まっているようだ。
そうした背景もあり、タイでは10年ほど前から男性同士の恋愛を描くBL(ボーイズ・ラブ)ドラマが人気を博し、現在までに国内外に多くのファンを獲得してきた。近年では、女性同士の恋愛を描いたGL(ガールズ・ラブ)ドラマのヒット作も登場している。タイでは、BLやGLドラマに出演するアイドルたちが、熱心なファンを中心に若者たちへ大きな影響力を持つ存在になっている。
2024年頃からバンコクの街中では、GLドラマ『ใจซ่อนรัก The Secret Of Us』の主人公カップル、通称LingとAomを起用した広告が多く見られるようになった。国内最大手のドラッグストアWatsonsをはじめ、PANTENE、Ichitanといった日用品や飲食料品、さらにGrabやOppoなど多岐にわたるブランドの広告に登場している。LingとAomは洗練された雰囲気で、多くの人に好印象を与えているようだ。

タイの大手メーカーによる広告やプロモーションでは、BLやGLドラマで人気を博したカップルが頻繁に起用されており、彼らの強力なファンを中心に、SNSで商品情報が急速に拡散される傾向がある。
女子大学生によると、最近ではLGBTQ+インフルエンサーによるYouTubeチャンネルをよく視聴しているという。周囲の友人たちも同様で、LGBTQ+タレントの発言から若者の間で流行語が生まれることもあるそうだ。

たとえば、Nisamaneeさん(通称Nutt)はトランスジェンダー女性であり、トランスジェンダー女性によるミスコンテスト「ミス・ティファニー2012」で最優秀水着賞を受賞した経歴を持つ。美容ブロガーとしても知られ、YouTubeチャンネル「Nisamanee.Nutt」(登録者数249万人)を運営するなど、多方面で活躍する人気インフルエンサーの一人である。
Instagram: https://www.instagram.com/nisamanee_nutt?hl=en&g=5
YouTube: https://www.youtube.com/@NisamaneeNutt
Nuttさんは、リップブランドLip ItのKOLとしても活躍。同ブランドは、Cathy Dollをはじめとする人気ブランドを擁するタイの大手化粧品・スキンケア製品メーカーKarmarts傘下にあり、ドラッグストアやコンビニで広く販売されている。潤い成分があり日焼け止め効果のある、リップバームやリッププライマーといったリップ下地商品がある。価格は100バーツ(約470円)前後。Nuttさんの美貌と知名度の高さで、商品の販促に一役買っている。
https://www.instagram.com/lipit.official/?hl=en
ドラッグストアのコスメ売り場で男性を見かけることもある。NuttさんのLip Itをはじめ、タイのコスメブランドの多くは性別を限定せず、男性用やトランスジェンダー女性用といった区別がない。個々人が自分に合う商品を自由に手に取るスタイルが一般的だ。
3.まとめ
タイ人は体裁を気にし、外見を重視する。また、自身や周囲の性のあり方に対しても誠実であろうとする傾向がある。バンコクでは新しいブランドや商品が次々と登場し、短期間で入れ替わっていくことも珍しくない。行列をつくっていた話題の店舗が、数か月後には別の店に変わっていることもある。日本の商品には「品質が高い」というイメージがあるものの、タイの消費者は移り気で飽きやすい一面もある。そのため、商品の入れ替わりが激しい市場においては、飽きさせない工夫や、SNSで注目を集めるビジュアルの面白さが重要なポイントとなる。
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  執筆者プロフィールTNCライフスタイル・リサーチャータイ・バンコク在住19年目です。ここ数年、バンコクの旧市街やチャイナタウンにおしゃれカフェが増えており、のんびりカフェめぐりをしながら散歩するのが楽しみです。 
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  編集者プロフィールチュウ フォンタット日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。 

