【マレーシア】マレーシア女性のファッション:ムスリムならではのコーディネートとは?
- 公開日:2025/11/10
- 更新日:2025/11/10
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マレーシアでは6割以上※がイスラム教を信仰するムスリムであり、服装文化もそれを反映しています。例えば、ムスリムの女性は、一般的にヒジャブ(マレー語ではトゥドゥン )と呼ばれる髪や首、肩を覆うために着用する布(ベール)を着用します。マレーシアでのヒジャブは顔を出すスタイルが一般的で、同じくヒジャブの着用が見られる中東諸国と比べると色もカラフルでファッション性が高いのが特徴です。
しかし、マレーシアにおけるヒジャブの着用は、宗教的義務ではあるものの国家による法的強制力はないため、着用率等は政府統計として収集されていません。
この記事では、インテージが保有する海外生活者ビジュアルデータベース「Consumer Life Panorama」 に掲載されている実際の生活者の仕事の際と外出時の服装写真をもとに、マレーシア女性の服装実態を考察していきます。
※2020年時点のデータ。
出典:Share of Malaysian population in 2020, by religion(Statistaより引用)
1.仕事の際の服装
まず、仕事の際に着用する服装に注目すると、都市部のオフィスではブラウスやスカート、シャツにジーンズなどシンプルな服装が見られます。ここにプラスでヒジャブ(イスラム教徒の女性が着用するベール)を身につけるパターンも多く見られました。色使いは落ち着いており、清潔感と信頼感を重視したスタイルが主流です。冷房の効いた職場環境に対応するためか、ジャケットや重ね着も見られました。職場の規定によってヒジャブ着用が推奨または義務化されている場面もあり、逆にムスリムを自認する女性でもヒジャブを巻かないケースもあるようです。

(左)清潔感のある白のブラウスと黒いチェックのスカート
(右)落ち着いた色合いのジャケットとスカート
出典:インテージConsumer Life Panorama
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

2.外出時の服装
一方、外出時の服装はよりカジュアルで個性が表れています。シャツにパンツを合わせた洋装に加えて、バジュ・クルン と呼ばれる長袖のゆったりしたブラウスとロングスカートというムスリムの女性が着る伝統的な服装も見られます。
いずれの場合も、ヒジャブの色や柄で個性を演出する若い女性の姿が目立ちました。SNSの影響もあり、トレンドに敏感な若年層はファッション性を重視していると思われ、ヒジャブも単なる宗教的アイテムではなく、スタイルの一部として進化しているようです。
以下の服装の写真にあるヒジャブも、コーディネートの差し色やアクセントとして使われていることが見て取れます。マレーシアではシャツやジーンズ、ワンピースといった洋装は決して珍しいものではありませんが、これらの洋装を販売する場合もヒジャブを含めたトータルコーディネートを意識する必要がありそうです。

(左)全身白のバジュ・クルン(マレー系ムスリム女性の伝統的な服装)に
赤の入ったヒジャブを差し色にしている
(右)全身をベージュでまとめ、靴とヒジャブをブラウンで揃えてアクセントをつけている
出典:インテージConsumer Life Panorama
3.まとめ
マレーシアにおける女性の服装は、宗教的背景と個人の価値観、そして現代的なライフスタイルが複雑に交差する文化的表現となっています。ムスリムの女性の多くがヒジャブ(トゥドゥン)を着用しているますが、そのスタイルや着用の有無は一律ではなく、職場環境や個人の信仰、ファッション感覚によって柔軟に変化しています。仕事の際には清潔感と信頼感を重視した服装が選ばれ、外出時には個性やトレンドを反映したスタイルが見られました。
ヒジャブは宗教的アイテムであると同時に、現代マレーシア女性にとって自己表現の一つとして機能しており、彼女たちの日常と価値観を映し出す象徴的な存在となっています。
マレーシア市場への進出を考える服飾メーカーにとっては、宗教・文化への配慮と、機能性・ファッション性の両立が求められ、現地女性の価値観に寄り添った商品開発がカギとなるでしょう。
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執筆者プロフィール
新垣 海綺
2025年より現職にて、日系FMCG企業向けに海外進出のためのマーケティング支援・サポートに従事。
趣味は言語学習と写真撮影。英語、フランス語、スペイン語をゆるく勉強中で、最近欲しいものは24mm以下の広角レンズ。 -

編集者プロフィール
高浜 理沙
日系のFMCGメーカー(化粧品、ベビー用品、食品・飲料等)のアジア・欧米でのマーケティング・リサーチ支援に従事したのち、2019年より現職にて、日系企業の海外マーケティング・リサーチのためのソリューション開発や、セミナー等の対外発信を行う。
子どもが生まれてからは、家族と自身の心身の健康をいかに保つかが最大の関心事で、様々なグッズ・サービスを試している。
