ASEAN各国男性の肌悩みと美容行動:彼らの肌悩みとその対処法とは?
- 公開日:2025/12/16
- 更新日:2025/12/16
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これまでスキンケアやメイクは女性中心のものとされてきましたが、いまや男性も自分の肌や見た目を積極的にケアする時代へと進化しています。世界の男性向けパーソナルケア市場は拡大しており、2024年の約900億ドル(約14兆円)から2028年には約1,150億ドル(約17兆9000億円)に達すると予測されています。近年、男性の美容意識が高まっており、シャンプーやシェービング用品だけではなく、洗顔料、美容液、マスクなど、多様な商品が使われるようになっています。この動きはASEAN各国でも同様で、ASEANにおける男性美容市場は2024年には15.7億ドル(約2,400億円)に達しています(※)。
この記事では、インテージの海外生活者データ「*Global Viewer」(2024年)をもとに、ASEAN市場の中でも消費者の特徴がそれぞれ異なるマレーシア・ベトナム・タイの男性の美容行動を比較していきます。
※ 出典:
South East Asia Mens Grooming Products Market Size, Share Report By 2033
1.ASEAN各国男性は、見た目のうち何を重視している?
ASEAN各国の男性は、外見について、どう考えているのでしょうか。それをひも解くため、インテージが保有する海外生活者データGlobal Viewer(2024年実施)より、見た目の重視度を確認しました。
3カ国全てにおいて、「清潔感」が他の項目を大きく引き離して1位となっていて、特にベトナム(77.6%)は、タイ(70.2%)、マレーシア(68.5%)と比べても高い数値を示しており、清潔感への意識が非常に高いことがうかがえます。
また、「肌」もベトナム・タイでは2位、マレーシアでも4位で、外見の中で「肌」も重要な要素の一つと捉えられていることが分かります。

図1:見た目重視度(複数選択)各国上位5位を抜粋(ベース:各国18~64歳男性)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
*Global Viewerとは
インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリーに関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。

2.ASEAN各国男性の肌悩みとメイクアップアイテム
では、見た目を構成する重要な要素である「肌」について、各国の男性はどのようなことに悩みを持っているのでしょうか?その肌悩みを解決する手段として、まだ少数ではあるものの最近では男性もメイクアップアイテムを使う人も出てきています。そうした人たちが、どのようなアイテムを使って肌悩みをカバーしようとしているのかも併せて見てみましょう。
まず、いずれの国でも「皮脂・べたつき」や「吹き出物・ニキビ」がトップ3に入っており、高温多湿な気候も相まってオイリー肌やニキビが共通の主要な悩みであることが分かります。
一方、使用しているメイクアップアイテムについては、国ごとに特徴が出ました。例えばベトナムでは、「コンシーラー」が現使用アイテム1位となっています。これは、ベトナムの肌悩み1位である「吹き出物・ニキビ」を隠したいというニーズからきていることが推察されます。
特に非常に興味深いのがタイです。タイでは最も多い悩みが「肌のくすみ」(26.9%)で、さらに5位には「透明感のなさ」(20.7%)も入っているなど、他の2カ国とは異なり、肌のトーンや明るさに対する関心が非常に高いことがうかがえます。その影響もあってか、現使用アイテムを見ると「おしろい・フェイスパウダー」や「BBクリーム」などのベースメイクアイテムを使って肌をきれいに見せるニーズがうかがえます。

図2:顔の肌悩み(複数選択)各国5位を抜粋(ベース:各国18~64歳男性)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)

図3:現使用メイクアップアイテム各国5位を抜粋(ベース:各国18~64歳男性)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
3.ASEAN各国男性の現使用スキンケアアイテム
国ごとに異なる特徴的な「肌悩み」が浮き彫りになりました。では、彼らはこうした具体的な悩みを解決するために、日々どのようなスキンケアアイテムを実際に使用しているのでしょうか。
まず「洗顔料」は男性スキンケアの常識で、3カ国すべてにおいて「洗顔料」の使用率が6割前後と圧倒的トップです。 これは、肌を清潔に保つ「洗顔」が、国を問わず男性のスキンケアの第一歩として広く定着していることを示しています。
マレーシア男性は、2位に「化粧水(保湿)」が入っており、洗顔後の「保湿」というスキンケアの基本ステップを忠実に実行していることが特徴です。
一方、ベトナム男性は、「日焼け止め」の使用率が他2カ国より突出して高く、さらに「美容液」も3位に入るなど、紫外線対策やスペシャルケアに対する意識が非常に高いことが分かります。
そしてタイでは、「メイク落とし」関連のアイテムが上位にランクインしており、これはおしろい・フェイスパウダーやBBクリームなどのベースメイクを日常的に使用し、「落とす」ケアの必要性を感じている男性が多いことを示唆しています。

図4:現使用スキンケアアイテム各国5位を抜粋(ベース:各国18~64歳男性)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
今回は、消費者の特徴がそれぞれ異なるマレーシア、ベトナム、タイの3カ国の男性の美容行動を比較しました。そのデータからは、3カ国の共通点と違いが見られました。
まず共通点としては、高温多湿な気候に由来するオイリー肌やニキビといった肌悩みがあります。そのため基本的なニーズとして、皮脂やニキビ悩みへの対処ができることや「清潔感」を維持できることが重視されており、例えば洗顔料の使用率は年齢を問わず50%以上に達しています。
一方、国ごとに異なる特徴も見られます。例えばタイでは、皮脂・ニキビ対策といった基本ニーズに加え、トーンアップ・肌をきれいに見せるニーズが男性化粧品市場でも高く、「おしろい・フェイスパウダー」などのベースメイクアイテムや、それを落とすための「メイク落とし」関連アイテムの使用が見られます。
以上の分析から、高温多湿という環境がもたらす共通の肌悩みと、各国で異なるトレンドの双方が明らかになりました。この「共通点」と「違い」のバランスを見極めることこそが、ASEANの男性化粧品市場を捉えるのに重要なポイントと言えます。
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執筆者プロフィール
紀 子寧
中国出身。2024年入社、化粧品チームのマーケティング・リサーチを担当。
ファッションとスキンケアが好きで、好奇心旺盛。
日系化粧品の魅力を世界に発信したい。 -

編集者プロフィール
高浜 理沙
日系のFMCGメーカー(化粧品、ベビー用品、食品・飲料等)のアジア・欧米でのマーケティング・リサーチ支援に従事したのち、2019年より現職にて、日系企業の海外マーケティング・リサーチのためのソリューション開発や、セミナー等の対外発信を行う。
子どもが生まれてからは、家族と自身の心身の健康をいかに保つかが最大の関心事で、様々なグッズ・サービスを試している。


