【海外各国の国民性】ベトナム:戦勝国マインドが加速させる、ポジティブな上昇志向
- 公開日:2026/02/17
- 更新日:2026/02/17
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目次
1. ベトナム人の国民性を解き明かす鍵は、「不屈の戦勝国マインド」
単なる愛国心にとどまらず、大国に勝利してきた歴史の積み重ねが育んだ、揺るぎない自己肯定感と、未来に対する力強い楽観主義といっていい。
この「自分たちが負けるはずがない」という強烈な自尊心が、現在の劇的な経済成長を支える国を突き動かすエネルギーの源になっている。
いまベトナムは、メトロの開業やEVシフトなど、社会の前提が切り替わる転換点にある。人々の価値観も、かつてないスピードでアップデートされつつある。ただ、インフラがどれほど近代化しても、彼らの根底にある「不屈のプライド」という本質は簡単には揺らがない。
劇的に変化する現地のトレンドを切り口に、この国を突き動かす多面的な国民性の正体を掘り下げていきたい。
2.「不便」を即座に脱ぎ捨てる。劇的なインフラ変化を乗りこなす驚異の適応力
いま、ベトナムの交通インフラは歴史的な転換点にある。象徴的なのがホーチミン市メトロ1号線だ。建設中、現地では「ベトナム人はバイクを愛しているから、電車なんて誰も使わない」と懐疑的な声が多く聞かれた。

しかし、2024年末に運行が始まると、その予想は鮮やかに裏切られた。涼しく快適な車内に市民が殺到する光景は、利便性を実感した瞬間に、過去の習慣をあっさりと脱ぎ捨てる彼らの合理性と変化への強さを象徴している。
※リール動画ですので、再生時の音量にご注意ください。
特にベトナム南部では、この「新しいもの好き」で「現金」な性質は、かつてライドシェアの Grab が参入した際にも顕著に表れた。当時は「セオム」と呼ばれる個人バイクタクシーとの激しい縄張り争いが起こり、各地でトラブルやニュース沙汰が相次いだ。
だが、それも今や昔の話だ。一度「便利だ」と実感されれば、過去の摩擦などなかったかのように、瞬く間に生活インフラとして定着していく。

そして今、この国は「脱ガソリン」という、さらに大きな転換の渦中にある。世界最悪レベルとも言われる冬季の大気汚染にさらされるハノイでは、2025年7月12日、環境保護と大気汚染抑制を目的としたガソリンバイク規制が首相の指示により決定された。政府による強い舵取りは、電動バイクへの移行を一気に押し進めている。
インフラ整備と並行して EV 車も急増しており、高い関税を払いながらも輸入車を求める富裕層の動きは、2025年に過去最高の輸入台数を記録するほどの勢いだ。
かつて「バイクが街を埋め尽くす」風景として語られてきた都市景観は、公共交通と EV が存在感を増す、よりスマートな都市像へと塗り替えられつつある。変化を不安がるよりも、むしろその波を楽しんでいるかのような適応力は、不屈のプライドに支えられた「攻めの姿勢」とも言えるだろう。
3.進出成功の鍵は「味」の先にある。+αの体験価値が必須な理由

ベトナム進出を検討するオーナーからは、「味や品質さえ良ければ勝負できる」という声をよく耳にする。しかし、現地のリアルはそれほど単純ではない。
まず理解しておきたいのが、一般層の食に対する「保守性」だ。都市部には世界各国の料理店が次々と進出しているものの、日常の食事の中心はいまもフォーやバインミーといった伝統料理であり、外国料理は「月に一度のイベント」という位置づけが根強い。
日常の胃袋をつかもうとするなら、すでに飽和状態にあるベトナム料理市場での競争を強いられることになり、経営の難易度は一気に跳ね上がる。
そこで重要になるのが、単なる食事体験を超えた「空間」や「ストーリー」といった+αの価値提供である。高所得層やトレンドに敏感な層の間では、すでに「おいしいのは当たり前」という認識が共有されており、味だけでは選ばれにくくなっている。
例えば、2025年に「世界最高の新規レストラン」に選ばれた「Ciel Dining」や、日本料理における「Omakase(おまかせ)」スタイルの流行は、こうした潮流を象徴している。
彼らが求めているのは、高級食材である「ウニ」そのものだけではない。それをどのような空間で、どんなストーリーとともに体験できるのかという、「特別感」まで含めた価値である。
これは何も高級店に限った話ではない。中価格帯の店であっても、SNSで共有したくなるような独創的な内装や、現地の人にとって新鮮なサービス体験を組み込まなければ、「一度行って終わり」の店になってしまう。
ベトナム市場に挑む際に問われるのは、「味の追求」だけではなく、「いかに“外国の文化”として認知され、体験してもらうか」という設計である。
胃袋を満たすだけでなく、彼らの「好奇心」や「所有欲」を刺激する+αの仕掛けこそが、長く愛されるビジネスを成立させるための絶対条件なのだ。
4.韓国トレンドの席巻と、進化を遂げる伝統の「アオザイ」

画像出典:https://paradox.vn/blogs/xu-huong-thoi-trang/5-phong-cach-thoi-trang-gen-z
ベトナムの街を歩くと、若者たちの装いがこの数年で劇的に変化していることに気づかされる。
2026年現在、Z世代のファッションシーンを牽引しているのは、間違いなく韓国の影響を色濃く受けた「K-Style」だ。
10年前のホーチミンを振り返れば、街ゆく人々の装いはいたってシンプルだった。Tシャツに短パン、足元はぺたんこのサンダル。そんなラフで飾り気のないスタイルこそが、南部の日常風景だった。
しかし、K-POPが音楽の枠を超えてライフスタイル全般に浸透した現在、その光景は過去のものとなりつつある。街中では、きれいめで洗練された韓国風スタイルや、ストリート要素を取り入れたコーディネートを楽しむ若者の姿が当たり前になった。
ここで興味深いのは、日本で好まれがちな「ワンピースに代表される、ふんわりとした可愛いファッション」が、今のベトナムの若者にはあまり響いていない点だ。
彼女たちが求めているのは、甘さよりも「綺麗」「かっこいい」「ストリート」といった、自立した強さを感じさせるスタイルである。
サイゴンの最旬ファッションビル「11 Garmentory」に集まる若者たちの洗練された着こなしを見れば、その美意識の劇的なアップデートは一目瞭然だ。
※リール動画ですので、再生時の音量にご注意ください。
しかし、彼らは単に外来の文化を模倣しているわけではない。その象徴が、ベトナムの誇りである伝統衣装「アオザイ」の変容にある。
近年、アオザイは「儀式のときに着るもの」という固定観念を脱ぎ捨て、自由なバリエーションを見せるようになった。ローカルブランドが次々と発表する新作は、シルエットを大胆にアレンジしたり、モダンな素材を組み合わせたりと、日常のファッションとして楽しめるデザインへと進化している。
伝統的な気品を保ちつつも、Z世代が自分らしく「かっこよく」着こなせる一着へとアップデートされているのだ。
かつての「ラフな日常」を、自らの手で「洗練されたスタイル」へと塗り替えていく。
外来のトレンドを柔軟に吸収しながら、自国のアイデンティティをも進化させていく彼らの感性は、まさに現在のベトナムが持つパワフルな上昇志向そのものといえる。
5.変化を加速させる「不屈のプライド」の正体

ここまで見てきたインフラの激変、食の体験価値への移行、そしてファッションの洗練。
これら全ての根底に流れているのは、ベトナム人特有の「不屈のプライド」と「しなやかな適応力」である。
彼らの国民性は、ビジネスの現場において、主に次の3つの特性として現れている。
① 変化を厭わない実利主義
良いと判断すれば、過去の習慣を即座に捨てる。メトロの利用やEVへの移行に見られるように、「便利」「得」と感じた瞬間の切り替えは驚くほど速い。
② 自己演出への強いこだわり
豊かさを象徴する「体験」や「スタイル」を通じて、自身のプライドを満たしたいという欲求が強い。飲食やファッションにおいても、「何を消費するか」以上に、「どのように見られるか」「どう語れるか」が重要な意味を持つ。
③ 自国アイデンティティの進化
外来文化を単に模倣するのではなく、アオザイの変容に見られるように、自国の文化として再解釈し、アップデートし続ける姿勢がある。受け入れるだけで終わらず、「自分たちのもの」に作り変える点に、強い自尊心が表れている。

日本企業がベトナム進出で苦戦する最大の要因の一つは、日本側の「良いものを作れば伝わる」という職人気質な価値観が、ベトナム人の「もっと洗練された自分になりたい」という強烈な上昇マインドと、必ずしも噛み合っていない点にあると考えられる。
もはや彼らにとって、日本製品や日本食は「珍しいから」という理由だけでは選ばれない。
そのサービスや空間を通じて、いかに自己肯定感を満たし、「新しい自分」に出会えるストーリーを提供できるかが問われている。
2026年、驚異的なスピードでアップデートを続けるベトナム市場。
この勢いに乗るためには、彼らの「不屈のプライド」を正しく理解し、その上昇志向に寄り添う「徹底した現地視点」での体験設計こそが、成功への最短距離となる。
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執筆者プロフィール
TNCライフスタイル・リサーチャー
半年だけ住むつもりが、ベトナム魅力にはまって現在は在住15年になりました。ハノイの風情ある町並み、ホーチミンの急激に発展しつづける成長ぶりもどちらも大好きです。
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。



