
目次
1.はじめに
親日的で、日本企業の進出先としても注目度の高い台湾。しかし、マーケティング施策を具体化する段階で、「台湾人の平均的な生活スタイルや価値観」をどれだけ解像度を高く捉えられているでしょうか。感覚的なイメージに頼るのではなく、データに基づいた“平均像”を把握することは、ターゲティングやメッセージ設計の精度を高めるうえで不可欠です。
本記事では、インテージの海外生活者データ「Global Viewer」をはじめとする各種データをもとに、台湾消費者の基本となる「平均」と、そこから見えてくる最新トレンドを整理して解説します。
2.統計データから台湾の「平均」を把握(台湾人の基本プロフィール)
(1)人口:進む少子化
・人口構成:日本は40~70代がボリュームゾーンであるのに対し、台湾は30~60代が中心です。若年層ほど人口が少ない構造となっており、高齢化が進んでいます。

・出産・少子化:2017年の調査によると、合計特殊出生率は1.13と、アジアでは韓国の0.81(2021年調査)に次いで低い水準です。10年前の2007年は1.10でやや上昇しているものの、低い水準であることに変わりはありません。
また女性の平均出産年齢は31.9歳(2023年調査)で、日本の31.9歳と同じ数値でした。2016年調査では31.3歳というデータから、より晩産化が進んでいることがわかります。
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▶関連データ:性年代別人口・人口構成比(10歳刻み)_台湾
▶関連データ:国別合計特殊出生率_17ヵ国
▶関連データ:女性平均出産年齢_17ヵ国
(2)人種・宗教・言語の構成
・人種・言語:人口の90%以上を漢民族が占め、中国大陸からの移民以前より台湾に住む原住民は約2.3%です。言語は中心となる北京語(標準中国語)の話者が66.40%で、台湾語(31.66%)なども日常的に使用されています。

・宗教・移民:宗教面では仏教や道教への信仰が広く根付いています。移民数は2024年には113万人を超えているものの、人口全体における割合は約5%と、比較的低い水準にとどまっています。
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▶関連データ:人種・民族構成比_台湾
▶関連データ:言語別人口構成比_ 台湾
▶関連データ:宗教人口構成比_17カ国
▶関連データ:移民の数およびその割合 _16ヵ国
3.台湾人のライフスタイル:住まい・環境・家事・結婚
(1)高い持ち家率
・世帯と収入:1人世帯は約15%で比較的少なく、2~3人世帯が約56%と過半を占めるボリュームゾーンとなっています。中間層の世帯月収は75,000-100,000NTドル未満(約37万~50万円)とされています。

・住まい:持ち家率は約84%と、日本の61.2%と比べても非常に高く、過去10年間にわたり高水準を維持しています。持ち家率は地価の高い台北を含む北部エリアでも82.9%に達しています。
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▶関連データ:世帯規模(世帯人数)別構成比_16カ国
▶関連データ:世帯収入・SEC構成比_台湾(グレーター台北)
▶関連データ:持ち家率_16ヵ国
▶関連データ:持ち家率の推移_台湾(2010/2020)
(2)高温多湿な気候が生む「衛生・汗対策」
・気候:台湾の平均気温は約22度、平均最低気温は12~17度と温暖で、年間を通じて春のような気候が特徴です。一方で平均湿度は70~80%と高く、通年で汗をかきやすい環境です。
・汗対策と入浴:身体に関する悩みとして「汗の量が多い」と考える台湾人が多く、シートタイプの汗対策アイテムが人気です。自宅では、外出先でかいた汗を洗い流すため、約4割の人が“帰宅後すぐ“にシャワーを浴びています。台湾の多くの家庭ではバスタブを設置しておらず、シャワー中心の入浴スタイルが一般的です。

図1:入浴タイミング(複数選択)(ベース:台湾男女18~64歳)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
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・衛生観念:高湿度でカビが発生しやすいことから、「乾燥・換気・におい対策」へのニーズが強く、水回りをしっかり乾かすことが“清潔”と捉えられる傾向があります。
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▶関連データ:「台北」及び東京の最高最低気温・降水量・降水日数・湿度
▶関連記事:汗の悩みは万国共通?台湾の人々の汗への対処法とは
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(3)労働力率と男女平等な家事分担
・労働事情:男性の労働力率は30代前半で98.1%、女性は20代後半で90.5%とそれぞれピークに達し、その後は男女ともに60歳以上で低下する傾向があります。

・家事分担とタイパ家電:台湾では男女で家事を比較的平等に分担する傾向が見られます。中でも食器洗いとリビングの掃除は男性の7割以上が担っています。共働き世帯が多く忙しい生活を背景に、「手間をかけずに作業が完了する」ロボット掃除機など、タイパ(タイムパフォーマンス:時間効率)家電への関心・購入意向が高まっています。
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▶関連データ:男性の年齢別労働力率
▶関連データ:女性の年齢別労働力率_18カ国
▶関連データ:職業別雇用数分布
▶関連記事:男性が積極的に家事に参加している国はどこ?アジア各国での男女の家事分担とサポート家電の普及
(4)台湾人の結婚とお金事情
台湾では、急速な経済発展やIT化の進展を背景に、若年層の結婚観が大きく変化しています。
・晩婚化・未婚化の進行:初婚年齢は男性32.9歳、女性31.0歳と、アジアでも香港(男性32.6歳、女性31.0歳)と並ぶ高水準です。経済的不安や不動産価格の高騰を背景に、未婚率は過去最高水準に達しており、日本同様に結婚や出産を必須のライフイベントと捉えない若者が増えています。

・伝統文化の簡素化:台湾では、日本以上に親族同士の結びつきを大切にしています。その中で生まれた結納金(聘金・ピンジン)や嫁入り道具(嫁妝・ジャージュァン)といった従来の慣習は、形式的・簡略的なものへと変化しています。
・資産要件のハードル上昇:かつて理想とされた「車・住宅・十分な貯金」といった結婚条件は、台北の物価上昇や不動産価格の高騰(過去10年で約5割上昇)により、平均的な年収では満たすことが難しい状況となっています。
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▶関連記事:【各国結婚と資産事情】台湾編:結婚するときの準備
▶関連データ:性別初婚年齢
4.台湾人の食文化と健康・スポーツ意識
「食は台湾にあり」と称されるほど豊かな食文化を持つ台湾ですが、近年、そのあり方に変化が生じています。
(1)外食文化と高まる「食の安全・健康」意識
・外食中心の食生活:台湾では自炊率が低く、週4日以上自炊する人は2割未満にとどまります。伝統的に外食文化が根強く、戦後の経済成長とともに都市部で拡大した夜市をはじめとする多様な食のシーンが発展してきました。

写真1:台湾・既婚女性・3人家族・世帯月収TWD 130,000 - 169,999 (約650,000円~約850,000円)
のキッチン事情
出典:Consumer Life Panorama (TW_11)
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

・食の安全とオーガニック志向:過去の食の安全問題や健康意識の高まりを背景に、農薬残留への関心が高まり、オーガニックの油や無添加調味料を選ぶ家庭が増加しています。安全性を意識した対策が一般的に行われており、野菜を専用洗剤で丁寧に洗う習慣も見られるようになりました。
・ヘルシー志向の拡大:Z世代を中心に、低GI・低脂肪・高タンパクを打ち出した高単価の健康弁当「健康餐盒」が人気になっています。オンライン注文や環境配慮型パッケージも支持される要因です。また、スターバックスでの導入を契機に、環境配慮や栄養価の観点からオーツミルクの需要も急速に拡大し、ヘルシー志向ブームを牽引しています。
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(2)タイパ重視!進化する食のトレンド
・中食・内食の進化:共働き世帯の増加や物価高を背景に外食が割高と感じられる中、タイパの良い冷凍食品が人気を集め、年間450億食が消費される規模に拡大しました。コロナ禍で定着した“おうち時間”やインドア志向のライフスタイルが、冷凍食品人気を後押ししていると考えられます。また、Z世代を中心にクラフトビールやアルコール度数9.99%の高アルコール飲料を楽しむ「家飲み」スタイルも定着しています。
・伝統のモダナイズ:日本企業との共同開発で誕生した台湾のインスタントラーメンは、台湾風の味付けが加わったことで台湾人の生活に浸透しました。台風時の備えとしても重宝されており、ベジタリアン向け商品が登場するなどZ世代からも支持されています。さらに、伝統的な漢方スイーツ「粉粿(フングイ)」がカラフルにアレンジされSNSで話題となるなど、伝統食を現代的に楽しむ動きが広がっています。台湾・南投県の研究機関で約29年かけて開発された新品種茶「台茶25号」は、加工法によって色が変化するユニークさを持ち、新たなトレンド素材となることが期待されています。

写真2:ベジタリアン用のインスタントラーメン
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(3)コロナ禍で加速したスポーツブーム
長引くパンデミックを経て「運動をする」人は81.6%と前年より増加傾向です。コロナ禍を経て免疫力向上への関心が高まり、運動への意識が一層強まっています。大手企業がマラソン大会のスポンサーとなり、走行距離に応じて植樹を行うなど、「エコ×スポーツ」の取り組みも注目を集めています。
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5.台湾市場を牽引するZ世代とエンタメ・美容事情
(1)デジタルネイティブなZ世代の消費行動
・デジタルネイティブな生活:台湾の18歳以上のインターネット利用率は84.7%で、中でも幼少期からインターネットに親しむZ世代はネット利用率が非常に高く、平日・休日を問わず音楽ストリーミングが日常的な習慣として定着しています。

・トレンド創出の起点:Z世代の間では「ちいかわ」の大ヒットや、SNS「Threads」発のフードトレンドなど、デジタル発のコンテンツや情報が消費行動に大きな影響を与えています。
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(2)実用性重視のメンズ美容・身だしなみ
韓国や中国と比較すると、台湾男性のメイクアップアイテム使用率は控えめである一方、スキンケアでは洗顔料の使用率が3カ国の中で最も高い水準にあり、「清潔さ」を重視する文化が特徴的です。メイクアップによる見た目の演出よりも、機能性や実用性を重視する傾向がうかがえます。今後は保湿などスキンケア全般の拡大を経て、将来的にはメイクアップ市場へと発展する余地がありそうです。

図2:美容・身だしなみに関する意識【ベース:各国18~49歳男性】
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
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6.台湾を支える高い教育水準と半導体産業
台湾は、高い教育水準を背景に、世界をリードする半導体産業を築いています。最後に、教育と産業の連動が生み出す競争力の源泉を探ります。
・教育:15歳を対象としたPISA(学習到達度調査)では、台湾は数学などの分野で日本を2~3%上回る高い習熟度を示しています。
・産業:台湾では世界の半導体供給の約60%、最先端の半導体の約90%を生産しています。台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする半導体産業は台湾のGDPの15%を占めており、世界経済において不可欠な存在となっています。
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7.まとめ
本記事で紹介した、現代の台湾生活者を理解するうえで押さえておくべき主要キーワードは以下のとおりです。
・ライフスタイル:晩婚化・少子化の進行に加え、高い持ち家率、共働きの一般化と男女平等な家事分担が特徴。
・消費の価値観:時間創出を重視する「タイパ志向(家電・冷凍食品)」に加え、高温多湿な気候を背景とした衛生意識や汗対策ニーズが顕著。
・食と健康:外食文化を基盤としつつ、「食の安全・健康志向(オーガニック、健康弁当、オーツミルク)」が拡大。伝統食のモダナイズやスポーツブームも進行。
・Z世代・産業:デジタルネイティブによる消費行動、実用性を重視したメンズ美容の浸透に加え、世界を牽引する半導体産業と高い教育水準が社会基盤を形成。
マーケッターへのTakeaway(実践のヒント)
(1)「タイパ×健康」で付加価値を最大化
共働きが多く忙しい台湾生活者にとって、「タイパ(時間効率)」は強い購買動機となります。ただし「早い・手軽」だけでは差別化は難しく、「無添加・安全性・栄養」といった健康価値を掛け合わせることで、プレミアムかつ選ばれる理由を設計できます。
(2)気候・住環境起点のローカライズ設計
台湾の高温多湿な環境は、衛生意識や生活動線に大きく影響します。帰宅後すぐのシャワー習慣や水回りの乾燥ニーズなどを踏まえ、「汗・ニオイ・カビ対策」といった機能訴求や、現地の生活実態に即した商品・コミュニケーション設計が重要です。
(3)「伝統×モダナイズ」でZ世代を獲得
Z世代には、伝統を現代的にアップデートした“モダナイズ商品”が有効です。カラフルな粉粿や進化したクラフトビールなど、SNSでの拡散を前提に、視覚的インパクトや体験価値を設計することが鍵となります。デジタルネイティブの情報接触行動を踏まえ、SNS起点で話題化から購買へとつなげる導線設計が求められます。



