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Last updatedcalendar_month2026/04/16日本は「探索」、韓国は「購買への接続」、中国は「即時購買」― 日中韓の化粧品購買におけるSNSの役割構造

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SNSの普及により、化粧品に関する情報はこれまで以上に多様なチャネルを通じて取得されるようになっています。特にインフルエンサーの発信は、消費者の購買行動にも影響を与えているといわれています。しかし、その影響の現れ方は国によって同じなのでしょうか。本記事では、インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2025年)」およびStatistaのデータをもとに、日本・中国・韓国の3カ国における化粧品購買時の情報取得とインフルエンサーの影響について比較し、その違いを見ていきます。


1.SNSはどこまで影響しているのか

近年、SNSは消費者が商品情報を参考にする重要なチャネルとして定着しています。
特に化粧品のような消費財においては、SNSやインフルエンサーを通じて商品を知ることが自然な流れとなっています。
では、こうしたSNSの影響は実際の購買行動にもつながっているのでしょうか。
インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2025年実施)」によると、化粧品に関する情報を得る際にSNSを参考情報として接触する度合いには、国ごとの差が見られます。20~40代の男女全体では、中国が最も高く、日本がそれに続き、韓国は相対的に低い水準となっています。

日本・韓国・中国のSNS参考チャンネルの選択率(参考情報)

図1:日本・韓国・中国のSNS参考チャンネルの選択率(参考情報)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

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一方で、20代女性に限って見ると、日本の水準が最も高く、中国、韓国の順となっています。化粧品に関する情報収集において、重要なチャネルとして機能している様子がうかがえます。この結果は一見すると日本のSNS利用が活発であるようにも見えますが、その背景には利用の仕方の違いがある可能性があります。
日本ではSNSを情報探索の手段として幅広く活用し、複数の情報源を比較する傾向があると考えられます。一方で、韓国や中国ではSNSが購買に直結する場面も多く、特定の情報源に集中する傾向が見られます。そのため、結果として「参考するチャネル数」は日本の方が高く表れている可能性が示唆されます。

20代女性のSNS参考チャネルの選択率(参考情報)

図2:20代女性のSNS参考チャネルの選択率(参考情報)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

2.インフルエンサーは「参考情報」か「購買チャネル」か

さらに、インフルエンサーの役割に着目すると、その違いはより明確に見えてきます。
なお、各国のデータは設問の内容が異なるため単純な比較はできませんが、インフルエンサーの影響の現れ方には共通して差が見られます。

まず日本では「インフルエンサー広告が購買に影響を与えた」と回答した割合は約20%にとどまっています。ブランド広告や他の消費者レビューと比べても低い水準であり、インフルエンサーは購買を直接促す存在というよりは、参考情報の一つとして位置付けられていると考えられます。

日本におけるSNS広告の購買影響(2023年)

図3:日本におけるSNS広告の購買影響(2023年)
出典:<Most impactful types of social media advertisements in Japan as of July 2023>
(Statistaより引用)

これに対して韓国では、「インフルエンサーが紹介した商品を実際に購入した経験がある」と回答した割合が約45%に達しています。各国でデータの設問は異なるため単純な比較はできませんが、インフルエンサーの影響が購買につながるケースも少なくありません。  特にSNS上での共同購入のように、インフルエンサーを起点として購買が一気に進むケースも見られます。

韓国におけるインフルエンサー推薦商品の購入経験(2023年)

図4:韓国におけるインフルエンサー推薦商品の購入経験(2023年)
出典:<Share of people who have purchased a product endorsed by an influencer in
South Korea as of May 2023>(Statistaより引用)

さらに中国では、この傾向がより顕著に見られます。「インフルエンサーが購買意思決定に影響を与えた」と回答した割合は80%を超えており、3カ国の中で最も高い水準となっています。いわゆる「王紅(ワンホン)」によるライブ配信では、商品紹介と同時に購入が行われることも一般的であり、その場で購買が完結する仕組みが確立されています。

中国におけるインフルエンサーの購買影響(2023年)

図5:中国におけるインフルエンサーの購買影響(2023年)
出典:<Impact of social media influencers on purchasing in China as of May 2023>
(Statistaより引用)

3.同じSNSでも異なる役割構造

このように3カ国を比較すると、違いは単なる「影響力の大きさ」ではありません。
インフルエンサーが購買プロセスの中で担う役割そのものに違いがあると考えられます。
日本では、インフルエンサーは購買前の参考情報として機能する傾向があります。
一方で韓国では、共同購入などを通じて購買を後押しする存在として位置付けられています。さらに中国では、ライブコマースの中で実際に購買が行われる「販売チャネル」の一部として機能しています。つまり、同じSNSというプラットフォームであっても役割は異なります。日本は「情報探索」、韓国は「購買への接続」、中国は「即時購買」といった流れが形成されていると言えます。

4.結論:SNSではなく「購買のあり方」が異なる

以上のようにSNSは3カ国、全てにおいて重要な情報チャネルである点は共通しています。一方で、その上で展開される購買行動には明確な違いが見られます。日本では比較・検討のための情報源として機能しています。韓国では購買を後押しするきっかけとなっています。そして中国では、購買そのものが行われる場として機能しています。この違いは、単なるSNS利用度の差ではありません。消費者がどの情報を信頼し、どのようなプロセスで購買に至るのか、その構造の違いによるものと考えられます。



  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    イ ソンヨン

    日本在住7年目韓国人。2025年インテージ入社。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。

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