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Last updatedcalendar_month2026/04/24【日本・中国】消費者からみるコーヒーの飲み方 ―生活文脈の違いから読み解くマーケティングのヒント―

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1.はじめに

コーヒーは世界中で親しまれている飲料ですが、その飲み方や意味づけは国によって大きく異なります。同じコーヒーであっても、国によって消費者が手に取る背景や期待する価値には明確な違いが見えてきます。
本記事では、インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer」から、飲用の頻度、場所、タイミング、目的、という4つの観点から日本と中国の消費者のコーヒートレンドを捉え、そこから企業のマーケティング活動への可能性やヒントを考察します。

2.日本と中国:コーヒーの飲み方(飲用頻度、場所、タイミング、目的)

(1)飲用頻度

まず飲用頻度をインテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer」から見ると、日本は習慣性の高さが明確になります。
日本では週に5〜7回、つまりほぼ毎日コーヒーを飲む人が最も多いのに対し、中国では週3〜4回や、週2回がボリュームゾーンとなっています。これは、日本市場がすでに成熟し、コーヒーが生活に深く根付いている一方で、中国はまだ成長の余地があり 、飲用シーンや役割の拡張によって頻度が高まる可能性を示唆しています。筆者の身の回りでの見聞では、中国都市部のオフィスワーカー、とくに若年層ではコーヒーを飲む習慣が比較的浸透している一方で、コーヒーの代わりにミルクティーやフルーツティーを選ぶ人も多く、カフェイン摂取は必ずしもコーヒーではない状況が見られます。こうした層に対して、今後コーヒーがより日常に入り込む余地は大きいと考えられます。

コーヒー(豆、インスタント、RTD含む)飲用頻度(ベース:日本・中国男女18-64歳)

図1:コーヒー(豆、インスタント、RTD含む)飲用頻度(ベース:日本・中国男女18-64歳)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

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(2)飲用場所

飲用場所の違いも、両国の生活スタイルを色濃く反映しています。
日本では自宅(89.8%)での飲用が圧倒的であり、職場(38.6%)に次いで車の中(22.2%)で飲むという回答が一定数見られます。限られた時間や空間を効率的に使う日常生活の中で、コーヒーがパーソナルな飲料として消費されている様子がうかがえます。
一方で中国は、自宅(68.3%)での飲用が最も多いものの、職場(52.7%)やカフェ(37.9%)で飲む人の割合も高いです。これは、コーヒーが外出先や社交の場、自己表現 の一環としても消費されていることを意味します。特にカフェなどでコーヒーを飲む行為は、洗練されたライフスタイルや都会的でモダンなイメージと結びつきやすく、「おしゃれ」や「上品」といった価値観をアピールする手段として機能している面もあります。こうした場面では、コーヒーそのものの味や効果だけでなく、店のデザインやブランドイメージなども重要な意味を持っていると考えられます。

コーヒー(豆、インスタント、RTD含む)飲用場所(ベース:日本・中国男女18-64歳)

図2:コーヒー(豆、インスタント、RTD含む)飲用場所(ベース:日本・中国男女18-64歳)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

(3)飲用タイミング

飲用タイミングに注目すると、日本では食後に飲む人が最も多く(44.4%)、仕事中(32.1%)や食事中(25.4%)での飲用も比較的多いことが分かりました。ここから、日本では食事や休憩といった生活リズムの中に自然に組み込まれた存在であり、日常の延長線上にある嗜好品・習慣飲料として定着している様子がうかがえます。
一方で中国は、コーヒーが「仕事」と極めて強く結びついていることが分かります。最も多いのは仕事中の飲用(44.7%)で、次いで食後(20.4%)、仕事の前(16.2%)が続きます。コーヒーは仕事の合間や開始前の気持ちを切り替え、また効率やパフォーマンス向上のための「機能飲料」としての位置づけが強いといえるでしょう。

コーヒー(豆、インスタント、RTD含む)飲用タイミング(ベース:日本・中国男女18-64歳)

図3:コーヒー(豆、インスタント、RTD含む)飲用タイミング(ベース:日本・中国男女18-64歳)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

(4)飲用目的

飲用目的の違いも、データから日本と中国の違いが見て取れます。日本では「リラックスしたい時」(51.4%)と「リフレッシュしたい時」(51.1%)がほぼ同水準で高く、さらに「喉が渇いた時」(26.9%)という日常的な理由も一定の割合を占めます。コーヒーが特別なスイッチというよりは、気軽に手に取ることができる飲み物になっている様子が浮かび上がります。
対照的に中国では、「リフレッシュしたい時」(46.4%)が最も高く、次いで「リラックスしたい時」(32.4%)「集中したい時」(28.9%)が続きます。特に集中したいときや気分転換といった目的が上位に来ている点は、忙しい都市生活や成果重視の労働環境を背景に、コーヒーは「気持ちを切り替えるためのスイッチ」として選ばれていると考えられます。

コーヒー(豆、インスタント、RTD含む)飲用目的(ベース:日本・中国男女18-64歳)

図4:コーヒー(豆、インスタント、RTD含む)飲用目的(ベース:日本・中国男女18-64歳)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

3.生活の違いから読み解くマーケティングのヒント

このように日本と中国のコーヒー消費のデータからは、商品に求める役割の違いがあることを示しています。
日本ではコーヒーは生活に深く根づいた存在であり、食後や休憩、移動の合間など、日常のリズムの中で自然に飲まれています。飲用目的も「リラックス」「リフレッシュ」が中心で、効率や成果よりも、癒しや安心感が求められていると言えるでしょう。味や香り、ブランドの信頼感やストーリーといった情緒的価値を丁寧に伝えることが、選ばれ続ける理由につながるでしょう。さらに、自宅での飲用が圧倒的に多い日本では、大容量やストック型、手軽に飲めるドリップやペットボトルといった家庭内消費を支える設計が、重要なポイントとなるでしょう。

一方で中国では、コーヒーは仕事や自己管理と結びついた飲料として受け止められています。仕事中や仕事前に飲まれる割合が高く、「集中したい」「気持ちを切り替えたい」といった目的が目立つことから、マーケティングにおいては機能的価値や成果を明確に打ち出すことが効果的でしょう  。「集中力」「仕事効率」「スイッチ」といったメッセージは、消費者の実感に直結しやすいと考えられます。ただ、飲用頻度が低めの現状を踏まえれば、集中力や効率効果を単独で訴求するのではなく、「午後のリフレッシュ」「自分への小さなご褒美」といったシーンごとの価値提案を行い、飲用習慣を広げていく余地もあると考えられます。また、職場だけでなくカフェや外出先でも飲まれている点を踏まえると、オフィスとカフェの両方で映えるパッケージや、SNSで共有されやすいブランド体験の設計も重要になります。

4.おわりに

同じコーヒーでも、日本では「生活に寄り添う一杯」、中国では「自分を高めるための一杯」として機能しています。この違いを踏まえた価値設計こそが、日本と中国それぞれの市場でマーケティングを成功させる鍵と言えるでしょう。



  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    徐佳逸

    中国出身。2024年よりインテージにてFMCGメーカー様向けマーケティング活動の支援・サポートを担当。

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    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。

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