
1.はじめに:子ども部屋が映し出す、国ごとの子育ての違い
居住空間の使い方はそれぞれですが、中でも「子ども部屋」は、その姿は国や地域によって大きく異なります。
机と教材が整然と並ぶ部屋もあれば、遊び道具が中心の自由な空間もあります。
こうした違いは単なる好みではなく、子育てに対する価値観や実際の育児の担い方によって生まれている可能性があります。
本記事では、まずアジアアメリカ各国や地域の子育てに関する価値観を、コレスポンデンス分析を用いて整理し、そこから見える傾向をもとに子ども部屋の違いを読み解きます。
さらに、それらの価値観が実際の子育ての担い手と、どのように関係しているのかも併せて考察します。
2.コレスポンデンス分析から見える2つの方向性
今回、インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2025年実施)」の13歳以下の子どもを持つ親に対象を絞り、子育てに関する複数の価値観項目を用いて、コレスポンデンス分析を行いました。
その結果、主に「教育方針を明確にした、家庭内での子育て」という価値観を持つグループと、「外部リソースを活用し、人との関わり・生活の中での子育て」という価値観を持つグループと、2つの異なる方向性があることが見えてきました。

図1:各国の子育てに関する価値観(コレスポンデンス分析)
(ベース:各国13歳以下の子どものいる人)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)
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インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリーに関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。

【グループ1】: 教育方針を明確にした、家庭内での子育て
o 精神的・経済的に自立してほしい
o 高い学歴をつけてほしい
o 競争社会でかつスキルを身に着けてほしい
o 子どもの幸せのために親のガイドが必要
【グループ2】: 外部リソースを活用し、人との関わり・生活の中での子育て
o 有償サービスに子育てを任せている
o 家族・親族に子育てを頼んでいる
o 子どもの商品は知人友人の評価を参考にする
図1の各国の配置をみると、「教育方針を明確にした、家庭内で子育て(グループ1)」を重視する「インドネシア・韓国・シンガポール」と、「外部リソースを活用し、人との関わり・生活の中での子育て(グループ2)」を行う傾向がみられる「アメリカ・インド」 という対比が見えてきます。
本記事では、これらの国のうち「韓国・シンガポール」「アメリカ・インド」の4カ国に焦点を当てて各国の子育て事情や価値観を考察します。
3.子ども部屋に現れる価値観の違い
次の画像は「韓国・シンガポール」「アメリカ・インド」の実際のリビング・子ども部屋の様子を、インテージが保有する海外生活者ビジュアルデータベース「Consumer Life Panorama」で確認したものです。実際の住空間をみると、こうした2つの価値観の違いが具体的に現れています。
■【グループ1】韓国・シンガポール:自宅が学習空間として機能

写真左:韓国(KR_1) 写真右:シンガポール_(SG_4)
出典:インテージConsumer Life Panorama
■【グループ2】アメリカ:遊びと成長の自由空間

写真左:アメリカ(US_37) 写真右:アメリカ_2(US_60)
出典:インテージConsumer Life Panorama
「アメリカ」は「韓国・シンガポール」と比較すると、より広々とした空間に多数のおもちゃが置かれています。学習机などの学習設備はあまり見られず、遊びに特化している空間が特徴的です。
■【グループ2】インド:おもちゃは少なめ。日常生活の中で子育て

写真左:インド(IN_25) 写真右:インド_2(IN_192)
出典:インテージConsumer Life Panorama
「インド」は、子どもがいる家庭でもおもちゃの数は少なく、「遊び・学習」のための空間が確立されている家はあまり見られませんでした。空間よりも日常生活の中で子育てが行われていると考えられます。
以上のように、「家庭・個人主導で教育を重視」する韓国・シンガポールは、自宅が「学習空間」となっており、「外部や周囲に頼りながら、生活の中で子育てをする」アメリカでは、遊びに特化した自由な空間を設けているなど、子育ての価値観が住空間に反映されていることが分かります。
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

4.価値観と実態のズレ:子育ての担い手
しかし、ここで重要なのは価値観と実際の子育ての担い方は必ずしも一致しないという点です。次のデータは、インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2025年)」より、平日の昼間に末子の世話をする人が誰かを同上の4カ国で比較した結果です。

図2:平日の昼間に末子の世話をする人(ベース:6歳未満の子ども同居者)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)
先ほどの価値観とは一変します。平日の昼間は「韓国・シンガポール」のほうが、より保育園等を活用するなど、外部サービスを活用して子育てをしている様子がうかがえます。また、「アメリカ・インド」は自身や配偶者の割合が高く、「インド」では特に祖父母の関与が非常に高くなっています。
このデータからは、一見すると矛盾して見える結果ですが、「韓国」には日本と近しい公的な保育園のような制度があることや、「シンガポール」では共働き家庭が多いこと、「インド」の大家族による祖父母の育児への参加しやすさなど、文化や制度の背景が考えられます 。また、教育方針を重視する国だからこそ、保育園や幼稚園などに学習・スキル取得の効果を求めているとも考えられます。
子育てに対しての「想い・価値観」を自宅で体現しながら、実際には文化や制度を活用しながら最適な子育てをしているのでしょう。
5.まとめ
各国は、子育てに関する価値観を家庭内で体現しながらも、実際には制度や社会資源を活用して最適化している姿が見えてきました。
外からは見えにくい「子育ての本音」と「実態」の関係を理解することで、今後の子育て支援やサービス設計においても、より適応したアプローチが可能になるのではないでしょうか。




