
1.はじめに
過去記事でもご紹介したように、世界の植物性ミルク市場は近年急速に拡大しています。市場規模は2024年に253.3億USD(約3.9兆円)に達し、2030年には1.6倍に増加すると見込まれています。
その中でも存在感を増しているのがアーモンドミルクです。低カロリー、ビタミンEが豊富、乳糖を含まないといった特徴があります。こうした特徴は、健康や食のトレンドに敏感な若い世代との相性がいいと考えられます。また、新しい飲み物が広がっていくきっかけは、若い人たちの日常から生まれることも少なくありません。
そこで今回は、自主企画調査データを使って、7カ国の若年層(15〜29歳)に絞ってアーモンドミルクの飲用実態を見ていきます。対象国は、世界の植物性ミルク市場を牽引する中国とアメリカに加え、日系企業が注力することの多い韓国・台湾、タイ・ベトナムといった東アジア・東南アジアの国々、そして中央アジア最大の経済国であり新興市場として今後の成長が期待されるカザフスタンを選定しました。成熟市場・アジアの主要市場・新興市場という異なる段階にある国々を並べて見ることで、アーモンドミルクがそれぞれの市場でどのように受け入れられているのかを比較していきます。
本記事で紹介する自主企画調査データは、2025年12月に7カ国(アメリカ・中国・台湾・韓国・タイ・ベトナム・カザフスタン)で実施したオンライン調査によるものです。
各国の15〜79歳の男女を対象に、飲料に関する飲用実態や健康意識などを聴取しました。
各国の若年層の意識や行動を詳細に把握するために、若年層を厚めに回収設計しています。
※各国約200sのうち、約7割を15〜29歳の若年層で回収。
※本記事では、各国の15〜29歳の若年層に絞って分析しています。
2.アーモンドミルクの飲用実態
まず、7カ国の若年層(15〜29歳)における、アーモンドミルク・牛乳飲用率を比較してみます。
週に1日以上アーモンドミルクを飲んでいる若年層の割合は、ベトナム(41%)が最も高く、アメリカ(36%)、タイ(32%)が続きます。東南アジアの若年層では、日常的に取り入れている層が一定数いることがうかがえます。
中国は、週1日以上では2割程度(21%)にとどまりますが、月1日以上まで広げると約半数(46%)に達します。日常の定番というよりは、健康を意識したタイミングで取り入れる「準習慣」的な位置づけと言えるかもしれません。
一方、カザフスタン(17%)、韓国(14%)、台湾(13%)はまだ控えめな水準で、これからの広がりの余地がある市場と考えられます。
参考までに、アーモンドミルク飲用率が高い上位3カ国の牛乳の飲用率を見ると、週1日以上に飲む割合はベトナム(72%)、アメリカ(60%)、タイ(72%)と高い水準にあります。牛乳の習慣が残る中で、アーモンドミルクが新たな選択肢として加わっている様子がうかがえます。

図1:7カ国の15〜29歳における、アーモンドミルク・牛乳飲用率比較
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)
3.アーモンドミルク飲用者の健康意識
アーモンドミルクを飲んでいる若年層は普段、健康についてどのようなことを意識しているのでしょうか。飲用率の比較は週1日以上で行いましたが、ここからは飲用者の姿をより幅広く捉えるために、月に1日以上飲んでいる若年層(=飲用者)と、アーモンドミルクを飲んでいない若年層(=非飲用者)を比較していきます。各項目の該当率をもとに、飲用者と非飲用者の違いを国別にレーダーチャートで確認してみましょう。
まず、ベトナムやタイでは、「無添加のものを選ぶ」や「乳糖フリー」で飲用者が非飲用者を大きく上回っています。中でも無添加の差が大きく、原材料や添加物など食品の安全性への関心の高さがうかがえます。さらに、東南アジアでは乳糖不耐の割合が比較的高いといわれており、乳製品を体質的に摂りにくい人にもアーモンドミルクが受け入れられていると考えられます。

図2:アーモンドミルクを月1以上の飲用者と非飲用者の健康意識(ベトナム)
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)

図3:アーモンドミルクを月1以上の飲用者と非飲用者の健康意識(タイ)
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)
一方でアメリカは、各項目で飲用者が非飲用者をやや上回るものの、どれか一つの項目が突出して高い項目はなさそうです。特定の健康意識を持つ層に限らず、さまざまな人がアーモンドミルクを購入していることで、飲用者の特徴が特定の項目に集中していない可能性が考えられます。

図4:アーモンドミルクを月1以上の飲用者と非飲用者の健康意識(アメリカ)
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)
中国では「植物由来・プラントベースのものを選ぶ」で飲用者が非飲用者を大きく上回っています。他の項目と比較しても差が目立ち、飲用者においては植物性食品を意識した行動が相対的に多い様子がうかがえます。

図5:アーモンドミルクを月1以上の飲用者と非飲用者の健康意識(中国)
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)
台湾では、「美容によいものを選ぶ」と「乳糖フリーのものを選ぶ」で飲用者が非飲用者を上回っています。飲用者は日頃から体や見た目への配慮を意識した選択をしている人が相対的に多い傾向がみられます。

図6:アーモンドミルクを月1以上の飲用者と非飲用者の健康意識(台湾)
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)
韓国では、「無添加」に加えて「免疫力を高めるものを選ぶ」で飲用者が非飲用者を上回っています。近年、韓国ではインナーケアへの関心が高まっており、体に取り入れるものの質や機能を意識する傾向が強い様子がうかがえます。こうしたことから、体調管理やコンディションを意識する人の中で多く取り入れられていると考えられます。

図7:アーモンドミルクを月1以上の飲用者と非飲用者の健康意識(韓国)
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)
カザフスタンでは、全体的に飲用者と非飲用者の大きな違いは見られないものの、「美容によいものを選ぶ」で少し差が見られます。アーモンドミルクの飲用がまだ広く浸透していないこともあり、価値が十分に共有されていない中で、比較的分かりやすい「美容」といったイメージから取り入れられている可能性が考えられます。

図8:アーモンドミルクを月1以上の飲用者と非飲用者の健康意識(カザフスタン)
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)
ここまで国別にアーモンドミルク飲用者の健康意識を見てきましたが、各国それぞれ重視されるポイントには違いが見られ、国ごとに異なる特徴を持つことが確認できました。
4.アーモンドミルク市場の今後の見通し
こうした違いを背景に、各国でアーモンドミルクが今後どのように広がっていくのかを見ていきます。ここからは視点を変え、各国の若年層全体に「健康のために現在やっていること」と「今後やってみたいこと」を聞き、その差(今後 − 現在)から、市場の伸びしろを探っていきます。プラスに大きいほど、「関心はあるがまだ行動に移せていない人」が多い、つまり、市場としての余白が大きいと捉えられます。
「植物性ミルクを選ぶ」をこの視点で見ると、カザフスタン(+8pt)が最も高く、タイ(+6pt)、アメリカ(+4pt)、韓国(+2pt)と続きます。カザフスタンはアーモンドミルクの飲用率自体は17%(※図1より)とまだ低いものの、「今後取り入れたい」意向が大きく、新規ユーザーの獲得を軸とした市場拡大の余地があると見られます。また、タイやアメリカでも同様に、関心層の存在が確認されており、一定の普及余地があると考えられます。
また、「乳製品をとる」はカザフスタン(-5pt)、韓国(-2pt)とマイナスに振れており、植物性ミルクの伸びとあわせて、乳製品からのシフトの動きも見られます。
一方、ベトナムでは「今後取り入れたい」意向の伸びは見られません。これは、すでに飲用率が高く、日常的に取り入れている層が一定数存在しているためと考えられます。そのため今後は、新規ユーザーの獲得に加え、利用シーンの拡張や飲用頻度の向上といった「深耕」が成長のポイントになると考えられます。

図9:7カ国の15〜29歳における、植物性ミルク・乳製品をとることへの現在・今後の意識
出典:インテージ自主企画調査(2025年12月実施)
5.まとめ
今回の若年層分析から、大きく2つのポイントが見えてきました。
一つ目は、アーモンドミルク飲用者の人物像です。プラントベース志向(中国)や美容意識(台湾)、乳糖フリー・無添加志向(タイ・ベトナム)など、国ごとに特徴は異なるものの、いずれも飲用者のほうが特定の健康意識を相対的に強く持っている様子が確認されました。アーモンドミルクは、「なんとなく体に良さそうだから」ではなく、健康への関心や重視するポイントを持つ人に選ばれている飲み物と考えられます。
二つ目は、市場の広がり方の違いです。カザフスタンでは今後の取り入れ意向が高く、新規ユーザーの拡大余地が大きいと見られます。一方で、ベトナムのように既に飲用率が高い国では、新規獲得に加え、飲用シーンの拡張や頻度向上といった「深耕」が成長のポイントになると考えられます。
このように、同じアーモンドミルクでも、国によって「広げるフェーズ」と「深めるフェーズ」が異なります。各市場の段階に応じて、訴求内容やアプローチを変えていくことが重要といえるでしょう。
今回はアーモンドミルク×7カ国×若年層という切り口でしたが、カテゴリーや対象を変えた分析も対応可能です。「自社の商品ではどうなるのか」が気になった方は、お気軽にお問い合わせください。




