【中国:地球の暮らし方】自宅に置かれている小物から見る中国人のライフスタイル
- 公開日:2021/02/02
- 更新日:2025/09/05
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お湯へのこだわり
たぶん世界中、中国人ほどお湯にこだわる民族はほかにいないと言っても過言ではないだろう。その裏には、中医の陰陽調和という理論がある。お湯を飲むと、「温陽」という効果があり、寒さを追い払い、体の中の「陰」の気を中和することで、病気を治す効果があると中国人はこのことについて昔から信じている。また、中国の水道水は日本のように直接飲める水ではないので、中国で常温の水を飲みたい場合は、一度水道水を沸かしてから、常温まで放置するという習慣がある。また、中国のレストランに行くと、ほとんどの場合、お客さんに出すのがお冷の代わりに、温かいお茶だということは気づくだろう。これも、この中医の理論と習慣による影響なのだ。 そのため、実際に中国人の家庭にはこの習慣を反映する小物がたくさん見られる。まず、中国の家庭をよく見ると、必ず湯沸かし器やケトルが一つは置かれている。お湯を沸かしたら次は保温だ。保温機能がついている湯沸かし器の場合は沸かした後そのまま置いていればいいのだが、ケトルの場合、保温でほかに必要なものがある。そのため、中国人は昔から魔法瓶や保温瓶を使う習慣がある。湯沸かし器(左)、ケトル(中)と魔法瓶(右)を設置する中国住宅
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。
多様な調理と狭いキッチンスペースという課題
一回目と三回目のコラムの際に、中国家庭のキッチンスペースが狭いため、よくキッチンに置けなくなるのが冷蔵庫だということについて紹介した。中華の調理方法は多い。そのために、利用する調理器具も相当ある。一方で、キッチンのスペースが限られている。そのため、調理器具をどこに収納、設置するかがかなり大きな課題となる。実際に、キッチンから追い出されたのは、冷蔵庫だけではない。特に1人当たり住居面積がとりわけ少ない上海では、この課題が顕著だ。例えば、炊飯器をリビング・ダイニングルームに置いたり、電子レンジなどを隙間空間に置いたりすることで、みんなこの課題解決のために、知恵を絞っている。-
執筆者プロフィール
ヤン イェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。日本に来ても、お湯を飲む習慣はまだ変わっていない。
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編集者プロフィール
辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。学生時代はキンキンに冷えたお茶ばかり飲んでいたが、中国出張をきっかけに常温のお茶を飲み始めて今も続いている。