【タイ】事業者間の競争が激化するフードデリバリー。新たな戦略の可能性
2020年前半のフードデリバリーは 注文件数が前年同期比150%
タイ・カシコン銀行リサーチセンターによると、COVID-19によるレストランの閉鎖の影響で、2020年前半のフードデリバリーサービスの注文件数は前年同期に比べて約150%増加、2020年全体では80%前後の増加となると見込まれている。タイでは2015年ほどからフードデリバリーサービスが定着し始め、現在では「LINEMAN」「Grab Food」などが主な事業者となっている。
COVID-19によるロックダウンで利用が急増すると、事業者間の競争も激化。プロモーション対象商品が1セット注文すると、もう1セットおまけでついてくるキャンペーンや、50%以上の割引や送料無料になる商品も多く、フードデリバリーの方が外食するよりも安価で手軽に済む場合も多い。フードデリバリーサービス事業者の中には、より効率的なデリバリーに向けて「クラウドキッチン」をオープンするところも出てきた。複数の食品業者を1か所に集めて、セントラルキッチンを利用して調理。利用者側からすると複数の店舗から注文しても送料が1か所分で済み、お得感がある。
外食・中食文化のタイとフードデリバリーの相性は良い
タイは従来より外食・中食文化である。夫婦共稼ぎの家庭が多く、渋滞を避けて早朝や夕方遅くに車で通勤・通学するため、都市に住む人は、朝食から夕食までを外食・中食で済ませる家庭がほとんどだ。フードデリバリーサービスは、タイ人のライフスタイルにマッチし、徐々に生活に浸透してきていた。事業者間の競争で、選択肢が広がり、利用者は各社のサービスを比較しながら、よりお得な商品を選ぶことができる。また、高校生など若い世代でも気軽にタピオカミルクティーやファーストフードのデリバリーを注文するようになっている。
カシコン銀行の上記調査によると、2020年後半以降は外食も可能になりデリバリーサービスの増加傾向は落ち着いてくるものとみられている。今後は、クラウドキッチンのように新たな戦術を用いて、より効率的なサービス提供手法が模索されていくものと思われる。
本記事はTNCライフスタイル・リサーチャー(http://lifestyle.tenace.co.jp/ )とインテージのグローバル・リサーチャーの共同執筆記事です。
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執筆者プロフィール
TNCアジアトレンドラボ
株式会社TNCが運営する、アジアのトレンドを研究・発信する情報機関。現地の生活者の暮らしや生活習慣に根ざしたトレンドからインサイトを見出し、企業のマーケティング活動の支援を行っています。
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インテージ
- 2021/03/03
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