【各国結婚と資産事情】ラオス編:結婚するときの準備
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ラオスは東南アジアの中では比較的貧富の差が小さい国ではあるが、近年都市部と農村部の発展の格差が大きくなってきており、人口の約10%が住む首都ビエンチャン及び特別に市に指定されているルアンパバン県ルアンパバン市、チャンパサック県パクセー市、サワンナケート県カイソンポンヴィハン市と、それ以外の郡や村とでは結婚式の様式や結婚後の生活についても大きく違ってきている。 また、ラオスは公的な信用できるデータがあまり充実していないため、今回は主に首都ビエンチャンと主要3都市の状況について、これまでの経験と現地生活者から聞いた内容などをもとに紹介する。
結納金は現金や金が主流
ラオスでは、結婚式の際にいわゆる「結納金」として男性側が女性側に現金や金を送るのが主流だ。金額や内容は事前に両家の話合いで決められる。ラオスは伝統的に婿入り婚が一般的で、男性が女性の家に入る。結納金の金額なども女性側の家族の意向が強い傾向がある。実際に女性側の家族が提示した結納金を男性側が支払うことが出来ずに結婚を諦めた、という話もなくはない。
結納金の金額としては、中流層では6,000~12,000ドル程度(約80~160万円)が主流となっている。ラオスの1人当たりGDPは2,551ドル(世界銀行、2021年)で、最低賃金が月額120万KIP(約80ドル、2022年8月現在)であることを考えると非常に高額だと言える。
ただし、ラオスの人口の約1割が居住する首都ビエンチャンやその他の主要都市など都市部エリアの人口は全体の35.6%(UNData、2021)で、残りの7割弱は農村部や山間部に居住しているため、都市部に居住する人口の所得は、世銀の出している1人当たりGDPに比べれば高額で、年収10,000ドル以上(約133万円)であることも珍しくはない。とはいえ、年収と同額程度の結納金というのはかなりの出費で、家族にとっても本人にとっても人生の一大事であることには違いない。
ラオスは通貨のKIPへの信用度が比較的低く、銀行にお金を預けること自体まだ歴史が浅いこともあり金への信用度が高く、現金で保有するよりは金や車などで保有することを好む傾向にある。金は基本的に重さで簡単に現金に交換することができ、またネックレスや指輪などの形で金を販売する宝飾店で簡単に売買ができるため、現金とほぼ同じ価値と見なされている。そのため結納金として金を送ることは一般的である。
しかし、最近の若者 は金で保有するよりも、現金を銀行に預けたり車などの形で保有したりする方を好む傾向にあるため、結納金は現金のみということも多い。
これは、金の指輪やネックレスを好まなくなったことや、車やバイク、電化製品など金以外の購買対象が増えたことがある。
また結納金とは別に、双方もしくは片方の両親や家族が、結婚する夫妻に対して現金や何かしらの財産を与えることも多い。都市部の中でも特に富裕層の場合は、土地や車、結婚する夫妻が住む住居を与えることもある。
結婚式の儀式と披露宴について
ラオスの結婚式は、基本的に結婚式の儀式と披露宴に分けられる。結婚式の儀式は伝統的に婿を受け入れる妻側の家で行われるのが一般的で、小規模な場合は家族や親戚が飲食物を用意することもあるが、最近はケータリングを利用することもある。結婚式当日は、午前中結婚の儀式とバーシーと呼ばれる伝統的な儀式 を行い、その後そのまま妻側の家で食事をする。
バーシーとは、結婚式だけではなく、出産や快気祝いなどお祝い事の際に必ず行われる儀式で、招待客は主役の人物の幸運を祈る言葉を言いながらその人の手首に白い糸を巻くというものだ。
結婚式自体には男女双方の家族や親戚、比較的近しい友人のみが参加するが、通常5~60人程度、多くても100名程度となっている。この時の食事も基本的には妻側の家族がメインで準備するが、庭にテントやテーブルをセッティングすることが多く、設備はレンタルをする。ラオスでは結婚式に限らず、新年のパーティ、葬儀、法要など、自宅で大勢集まる場合にテントやテーブル、イス、音響機材などを貸し出しているサービスを利用することが一般的となっている。
結婚式と同じ日の夜に披露宴が開かれる。伝統的には結婚式が行われた妻側の家で開かれるもので、現在でも農村部では基本的に妻側の家で開くことが多いが、都市部ではホテルや結婚式場で開かれることの方が一般的になってきている。中流層の一般的なケースでは結婚式場で開催し、4~500人の招待客が参加するスタイルが多いが、富裕層になると高級ホテルで1,000人規模のこともある。総合して、中流層の披露宴にかかる費用は結婚式場やホテルでのパーティの場合約15,000~20,000ドル(約200~266万円)、家での場合は約5,000~10,000ドル(約66~133万円)が相場となっている。
結婚後は妻側の家族と同居が一般的
インテージのネットリサーチによる自主調査データ
調査地域:日本、中国、香港、タイ、インドネシア、ベトナム、インド、アメリカ、スウェーデン
対象者条件:
・男女20歳~49歳、(人口構成比に合わせてウェイトバックあり)
・主要都市在住(以下参照 ) ・SEC 中間層以上
標本抽出方法:オンラインアンケート調査
標本サイズ:n=328(日本)n=407(中国)n=329(香港)n=323(タイ)n=341(ベトナム)n=339(インドネシア)n=344(インド)n=324(アメリカ)n=327(スウェーデン)
調査実施時期: 2022年2月16日~3月16日
詳細はこちらから >>https://www.global-market-surfer.com/report/detail/152/
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執筆者プロフィール
TNCライフスタイル・リサーチャー
株式会社TNCが運営する、世界70ヵ国100地域600名に住む日本人女性のネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」が、数字では見えてこないトレンドや、生活者の生声を切り出します。その生情報を元に、企業の課題解決のための提案や商品企画を行っています。 https://www.tenace.co.jp/
担当者プロフィール:ラオス・パクセー在住7年。1999年に初めてラオスに来て以来、ラオスの発展・変化を見続けてきました。まさか自分がラオス人と結婚する日が来ようとは想像もしていませんでしたが、これからも変化し続けるラオスをウォッチしていきたいと思います。 -
編集者プロフィール
チュウ フォンタット
マレーシア人リサーチャーです。15年前から来日し、今も東京を拠点とし、東南アジアをはじめ海外のインサイトについて発信しています。
- 2023/02/20
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