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【中国:地球の暮らし方】給湯器の普及と使用実態

冬が近づく。日に日に寒くなってくる中で、水道から出る温かいお湯は欠かせないものだ。そのため、今の中国家庭では給湯器は必要不可欠となってきている。そんな給湯器は、中国市場においてこれまでかなり進化してきて、種類も多様になってきている。今回はその給湯器の普及の経緯を振り返り、インテージが提供する海外生活者データベースConsumer Life Panoramaに登録されている生活者の給湯器の使用実態についてご紹介していきたい。

進化する中国家庭の給湯器

水道から温かいお湯が出るのは、今はごく当たり前なことだが、筆者が子供の頃(約30年前)を振り返ってみると、もともとはなかった。お湯で体を洗う時は、その都度お湯を沸かすか、魔法瓶に保存しておくかしか方法がなかった。それから少し時が経ち筆者が大きくなると、太陽熱温水器が中国全土で流行っていた時期があり、筆者の家もそれを導入した。

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 昔の魔法瓶(左)と湯沸し器(右)(CN(D)_30)
 出典:Consumer Life Panorama

Consumer Life Panoramaとは

世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。

本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

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太陽熱温水器のメリットは主に2つある。①設置がしやすい(屋上に設置し、そこからホースを屋内にひけば、そこに蓄積された温めた水を使えるようになる)ことと、②光熱費の節約(曇りや雨の日でなければ、太陽光で水を温めてくれるので、電気代やガス代がかからない)である。一方で、デメリットも顕著だ。例えば、日が当たる日であれば何の問題もないが、日が当たらない日はお湯が出なかったり、出たとしても温かくなかったりといった問題がある。また、一回使える量が限られるので、大量にお湯を使いたいときには足りないことも時々ある。それ以外に、経年劣化の問題や、お湯の温度調節が難しいといった問題もある。
それが原因で、近年は太陽熱温水器を使う家庭が減り、その代わりに、電気給湯器かガス給湯器を使われるようになってきている。日本ではLPガスや都市ガスがすでに普及しているため基本的にガス給湯器が多いが、中国では多くの家庭は電気給湯器を選ぶ。

その原因の一つはインフラの整備にあると考えられる。電気は以前から導入されていたが、ガスは昔、ガスタンクを設置するしかなく、多くの家庭では1つしか設置できなかった。そのためその一つのタンクは調理用ガスコンロに使われることが多く、給湯器はガスを利用できなかった。その結果、ガス給湯器より電気給湯器がより一般的に使われているとされている。また、電気給湯器の中でも、速熱式とタンク式の2種類があるが、中国の家庭に使われているのはタンク式が多い。
タンク式の電気給湯器は、太陽熱温水器と同じように水を貯める必要があるので、容量が十分にないと、大人数で使ったりする場合にはお湯が足りないという問題が発生する。それに対して、近年ガスが普及するにつれて、使うときにすぐに加熱してくれるガス給湯器がだんだん普及してきている。

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 タンク式電気給湯器(右)とガス給湯器(CN_94, CN_25)
 出典:Consumer Life Panorama

給湯器の設置と使用事情

給湯器の設置場所は用途に応じて異なる。タンク電気給湯器はまずシャワーのためのお湯供給なので、基本は浴室の天井に設置する。また、タンクはサイズが大きいので、空間の狭いキッチンには置くにはスペースが足りないというのも一つの理由として考えられる。一方、ガス給湯器は、シャワーにも使われるが、キッチンの調理用にも使用するので、キッチンに設置されることが多い。また、ガス給湯器自体はサイズが小さいので、キッチンにも置ける。さらに、浴室よりもより風通しのいいキッチンに置いたほうがガス漏れの心配がない。

給湯器の使用タイミングに関しては、一番多いのはやはりシャワーの時。日本は毎日湯舟につかる習慣があるが、中国ではシャワーのみであることが多い。また、南北の違いもある。南中国は冬でも夏でも毎日1回、夜にシャワーする家庭が多いが、北中国では数日に一回シャワーして、全身をきれいにしたいときには銭湯に行くという習慣がある。また、特に寒い日には、調理のシーンに、特に食器洗いにもお湯が使われている。

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 浴室に設置される電気給湯器(左)とキッチンに設置されるガス給湯器(CN_92, CN_99)
 出典:Consumer Life Panorama



  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン・イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。洗顔はお湯じゃないときれいに洗っていないと信じる。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    高浜 理沙

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。水切れがよくなるので、食器洗いにもお湯は必須だと感じている。

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