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【アジア各国のZ世代】Z世代の未来観:10カ国比較で見えた「希望」と「現状維持」

Gen Z in developed and developing countries

Z世代とは、1996年から2010年に生まれた世代を指しており、2025年時点の年齢は15〜29歳です。その多くは学生や若手社会人で、中にはすでに家庭を持ち、子育てをしている人もいます。Z世代は、これからの社会を担う中核層となっていく存在です。 日本では、増税や年金減額などを背景に将来への不安や希望の持ちにくさが語られることも少なくありませんが、海外のZ世代は自分たちの将来をどのように見ているのでしょうか。

この記事では、インテージが保有する海外生活者データベースGlobal Viewerのデータを使い、10カ国のZ世代男女(18歳~29歳)にフォーカスし、その特徴を詳しく分析しご紹介します。今回は、「1年後の個人経済状況」「健康」「ほしい資産」「子育て論」という4つの視点から、Z世代が抱く未来像を分析しました。調査では、先進国のZ世代は「今の生活を維持したい」と考える傾向が強く、一方で、発展途上国のZ世代は「今より良くなっていく」という前向きな意識が強いという対照的な姿が浮かび上がりました。

1年後の個人の経済状況

まずは、Z世代が個人的な経済状況についてどのように考えているかを調査しました。

各国Z世代にとって1年後自身の経済状況

発展途上国の若者の多くは、1年後には「自分の経済状況は良くなっている」と前向きに捉えていることが分かりました。これは、自国の経済成長に対する期待感が背景にあると考えられます。
一方、先進国のZ世代は経済の好転について特に楽観的ではないものの、全体として経済の悪化を強く懸念する傾向も見られませんでした。いずれの国でも、Z世代は将来の経済状況に対して比較的安定した見通しを持っていると言えそうです。

健康に関する考え方

次に、自分の寿命に直結する健康についてどのように考えているかを調べました。

各国Z世代の健康に関する考え方

先進国では、食生活や運動といった健康的な習慣を意識している人の割合が全体的に低いことが明らかになっています。これは、多忙なライフスタイルや生活環境・医療体制の充実により、特別な努力をしなくても一定の健康維持や長寿が期待できるという安心感が影響していると考えられます。
一方で発展途上国では健康意識が高く、食生活の管理や内面からのケアなど、日常的に健康を意識した行動を取る人が多いようです。これは、医療アクセスや環境要因から、自らの意識と努力で健康を維持しようとする姿勢が強く表れていると言えるでしょう。

今後保有したい資産

仕事へのモチベーションと関係が深い設問として、今後持ちたい・増やしたいと考える資産について聞きました。ここでは、国の経済発展段階によって傾向に大きな違いが見られました。

各国Z世代が今後増やしたい資産

先進国では、株式や投資信託などの金融資産が注目を集めています。大型耐久財である車はあまり人気が高くなく、これは公共交通機関が整備されていることから自家用車の保有意向が低いこととも関係していると考えられます。
発展途上国では、金・金塊、高級ジュエリー、高級腕時計といった実物資産への関心が高い傾向が見られました。さらに、自動車やバイクの保有意向も高く、これは先進国とは異なり、交通インフラの未整備が背景にあると考えられます。

子育てに対する考え方

最後に、子どもを持つZ世代に子育てについて聞きました。今後の自国の発展予測や環境の変化に合わせて子どもをどのように育てるか、その考えを分析しています。

各国Z世代の子育てに関する考え方

先進国では、競争社会で勝つためのスキルや高学歴を強く求める親が少なく、教育にお金をかける意欲も比較的低い傾向が見られました。これは、親自身が現状にある程度の満足感があり、今の暮らしを大きく変える必要性やモチベーションがあまり高くないことが背景にあると考えられます。
対照的に、準先進国・発展途上国では教育や芸術・スポーツにお金をかけて子どものスキルを伸ばしたいと考える親が多く、高い学歴にも意義を見出しているようです。また子どもの幸せのためには親のサポートが必要だと考えています。

まとめ・考察

先進国のZ世代は、全体的に「現状維持志向」が強い傾向にあります。自身の今後の経済状況について大きくは変わらないと考えており、また健康への意識も比較的低く、食生活や運動といった習慣を積極的に取り入れている人は少なめです。子育てにおいても、子どもに競争力や高学歴を求める傾向は弱く、「親が積極的に導くべき」と考える割合も低いのが特徴です。

対照的に発展途上国のZ世代は、将来的に自身の経済状況が良くなると信じている人が多く、前向きな姿勢がうかがえます。健康にも比較的高い関心を持ち、運動や食生活に気を配る人の割合が高めです。また、子どもに対しては競争力を身につけさせたいという意識が強く、教育や成長に対する投資意欲も高い傾向があります。

準先進国のZ世代は、両者の中間的な価値観を持っています。経済状況に対する見通しは楽観的でも悲観的でもなく、健康面ではストレスや心のケアなど内面的な健康への関心が比較的高いことが特徴です。

最後に

これまでご紹介してきたように、Z世代が重視する価値観や行動には国の発展段階に応じて大きな違いがあります。データだけを見れば、先進国ほど現状維持志向が強く、競争心が薄れているようにも感じられます。しかし、それは裏を返せば、激しい競争をしなくても満足のいく生活が送れるだけの生活基盤が整っている証拠ともいえるでしょう。

それが良いことかどうかは一概には言えませんが、「環境が整っているのであれば、楽ができる道を自然と選ぶ」、そんな人間らしい選択がZ世代の価値観に表れているのかもしれません。


  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。

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