音楽ストリーミング市場の今は?アジア各国での音楽ストリーミングの普及
- 公開日:2025/10/27
- 更新日:2025/10/27
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音楽や、映画・ドラマなどのコンテンツはオンデマンド形態でのサービスに一変しつつある。例えば、日本の音楽サービスを見ても、2015年~2016年にかけてAWAや、Line Music、Apple Music、そしてSpotifyなどの各種サービスが登場した。以前まで使っていたCDなどはオンデマンド形態へ替わりつつある。こうした環境は日本だけではなく、他国ではどうだろうか。この記事では音楽、特に音楽ストリーミングに関して、他国の浸透状況を考察していく。
音楽ストリーミングの定義:インターネットを介したオーディオコンテンツのデジタル配信(サブスクリプション型〈以下、サブスク型〉をここでは指すものとする)。
1.音楽ストリーミングサービスの市場規模推移
まず世界全体でのMusic Streaming市場の動向を見ていく。下記StatistaのデータはMusic Streaming の世界全体の推計市場規模を表している。データを見ると2017年~2024年にかけて市場規模は世界全体でも約3倍に拡大したことが分わかる。

図① 出典:<Statista Market Insights>(Statistaより引用)
次に世界の中でも各国の市場トレンドを見る。市場最大規模のアメリカだけでなく、中国、イギリス、日本、ドイツなど他国でも伸長傾向にある。また、上位10カ国を見ると10カ国中7カ国が欧米諸国(オーストラリアを含む)、3カ国がアジア国(中国、日本、韓国)となっている。世界での市場ランキングを見ると、これらのアジア3カ国では2017年と、2024年のランキング比較でも順位を上げており、音楽ストリーミング市場をけん引している ことがうかがえる。
では、他のアジア諸国の状況はどうか。先に次項パート(2.他アジア国での音楽の浸透状況)で取り上げる中・日・韓に次ぐアジア国のランキングも掲載する。

図② 出典:<Statista Market Insights>(Statistaより引用)
2.他アジア国での音楽の浸透状況
音楽ストリーミングの浸透を見ていく前に、そもそもアジアの国では音楽を聴くことが生活の中でどれだけ関わりがあるかを見ていきたい。インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2024年実施)」*では、「自由な時間をどのように過ごしているか」を聴取 したデータがある。ここでは台湾、インドネシア、タイ、ベトナムを取り上げる。データは主な自由時間の過ごし方を平日と、休日で表している。
平日では台湾、インドネシア、ベトナムで「音楽を聴く」が主な項目の中で3位以内にランクインしている(タイでは4位)。また、休日でも「音楽を聴く」が各国で5位以内にランクインしている。このことから、これらの国でも「音楽を聴く」ことが普段の生活で浸透している。

図③ 自由時間の過ごし方 (MA) : 平日 / 休日より抜粋
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
*Global Viewerとは
インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリーに関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。

3.音楽ストリーミングの浸透状況
音楽の聴き方でもサブスク型だけではなく、他の利用方法で楽しむこともできる。対象4カ国ではどのような音楽の聴き方が浸透しているのかを併わせて確認してみた。
直近1年間 のデジタル音楽の利用率は以下の通りだった。

図④ 過去1年利用デジタル音楽コンテンツサービス (MA)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
各国でのサブスク型の音楽ストリーミングの浸透状況は異なる。インドネシアでは、自由時間の過ごし方で「音楽を聴く」ことの浸透度はタイ・ベトナムと同レベルであったが、サブスク型の利用率は40%にとどまっており、今後の更なる浸透のポテンシャルを有している。
一方、台湾に関しては、無料のデジタル音楽コンテンツの利用率が高い。今後サブスク型の普及には、無料サービスにはない、サブスク型ならではのベネフィットを訴求することが今後の市場拡大に必要と思われる。
最後にベトナムに関しては、ダウンロード型のデジタル音楽コンテンツの利用率も高い。
冒頭の市場ランキング(図②)ではベトナムの2024年のランキングは2017年比較で下がっていた。ベトナムでの今後のサブスク型音楽ストリーミングの拡大という観点では、対ダウンロード音楽コンテンツを意識した戦略の検討が必要なのではないか。
4.まとめ
以上のように、音楽ストリーミングは、今回取り上げたアジア4カ国においてもポジショニングは異なるものの、更なる普及の可能性を秘めている。これらのような新興国における普及が、音楽ストリーミング市場の更なる拡大の大きなカギとなりそうだ。
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執筆者プロフィール
室井 裕次郎
2020年より現職にて、日用食品・飲料・雑貨メーカー様向けマーケティング活動の支援・サポートを担当。
趣味はお気に入りの音楽探し。出かけるとき、家でテレビを視るとき、日常の場面で気に入った曲があれば音楽アプリで検索に走る。よく使うアプリはShazam。 -

編集者プロフィール
高橋 謙一郎
株式会社インテージ グローバル事業本部 海外事業推進部 事業企画グループ
モビリティ業界のグローバルリサーチに数多く従事したのち、2023年より海外事業推進、グローバルリサーチサービスの整備、新ソリューション開発に取り組んでいる。
