【海外各国の国民性】ブラジル:多様性とレジリエンス(回復力)から生まれる、陽気でフレンドリーな国民性
- 公開日:2026/01/13
- 更新日:2026/01/13
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ブラジル人は一般的に、陽気でフレンドリー、綺麗好きで、独自の理想ボディーを思い描く傾向がある。
植民地時代、奴隷制時代、軍政時代など、経済的・社会的な困難に直面してきた歴史のなかで育まれた気質であり、それは心理的な防御としても機能してきた。カーニバルが、かつて黒人奴隷にとって年に一度のストレス発散の場であったことも、それを裏付けている。近年のボディポジティブ運動の高まりも、多くの人種が混合してきた排除と包摂の歴史と無関係ではない。つまり、ブラジル人の国民性は、多様性とレジリエンスがもたらした文化的特性といえる。

写真:Shutterstock より
目次
1.家族愛に生き、おしゃべりでパーティー好きな性格
ブラジル人は、人と人とのつながりに人生の基盤や支え合いを求め、団結を祝う傾向が強い。2025年8月に Globo/Quaest が実施した調査によると、ブラジル人の96%にとって家族は最も大切な存在だという。一方で「家族とは何か」という定義については、80%が必ずしも血縁関係に限らず、信頼できる人も含まれると回答している。そして、こうした連帯や相互信頼のネットワークを強化する役割を果たしているのが「会話」だ。
ブラジルの歴史においては、口承によるコミュニケーションが重要な役割を担ってきた。加えて、民族ルーツの混合によって、他者に対して開かれ、直接的かつ温かい方法で感情を表現する文化が育まれてきた。口頭でのコミュニケーションを通じた信頼関係の構築は、現在でも非常に重要である。形式的で官僚的なルールよりも優先されることも多く、友人作りや取引の成立、問題解決など、つながりを築き、維持するための主要な手段となっている。
会話の場となる「集い」は、互いに支え合う集団や家族への帰属意識をいっそう強める。会話を弾ませながら、おいしく食事をし、お酒を飲み、踊り、祝う。家族や友人が集まり、新しい友人を作る機会でもある、パーティーを意味する「フェスタ」だ。
それは、カーニバルのような街を挙げてのイベントから、結婚式、企業が主催する年末の忘年会、誕生日パーティー、日曜日のシュラスコ、自宅での友人とのディナーやクリスマスの集いまで、フォーマルなものからカジュアルなものまで多岐にわたる。

自宅での小規模な誕生日会
2.家族愛とフェスタ文化が生んだ「カーザ・ジ・フェスタ」
そんな中で生まれたユニークな施設が、「カーザ・ジ・フェスタ(フェスタの家)」だ。自宅に収まりきらない人数を招待する場合、多くのマンションでは共用施設にあるサロンを利用することが一般的である。テーブルや補助キッチン、シュラスコスペースが常設されており、外部スペースをレンタルする場合に比べ、費用を抑えられる点が魅力だ。
一方で、利用に費用がかかる「カーザ・ジ・フェスタ」を選ぶ人も少なくない。誕生日パーティーなどのフェスタ開催を目的に特別に設計された商業施設で、デコレーション、食事、エンターテインメントなどのサービスを自由に選択でき、終了後の清掃の心配も不要だ。場所のみを借りるケースもあれば、サービスを追加することもできる。
特に子どもが小さい時期に利用されることが多く、子ども向けの生演奏や人形劇といったサービスのほか、スリルを味わえるアトラクション遊具、さらには動物と触れ合える施設を備えた会場もある。費用は、場所やゲストの人数、含まれるサービス(装飾、ビュッフェ、エンターテインメントなど)によって大きく異なり、1,500レアル(約4万3千円)から45,000レアル(約130万円)と決して安価ではない。(https://hapy.com.br/blog/detalhe/quanto-custa-festa-infantil)
そして近年の子ども向けカーザ・ジ・フェスタのトレンドは、「没入型体験・デコレーション」と「持続可能性」だ。
没入型体験・デコレーションでは、料理や絵画、人形劇などのワークショップを提供したり、タブレットやビデオゲームを使ったインタラクティブなゲームを取り入れたりする例が増えている。「魔法の庭」「宇宙」といったテーマパーティーでは、照明や香りにまで工夫が凝らされる。
サンパウロの Casa das Ideiasは、新素材やリサイクル素材、伝統的な道具や機械を使い、車やボートなどのオブジェを制作するなど、創造力と交流を促すワークショップを売りとしている。
リオデジャネイロの Espaço Quebra Nozes では、「マーケット」「キッチン」「タトゥースタジオ」「更衣室」など、さまざまな環境を再現した専用スペースが用意され、子どもたちは多様な空想のシナリオの中で遊ぶことができる。
巨大なおもちゃ(ミニジェットコースターや海賊船)が目玉の Spasso Splash Festasでは、「海中」や「魔法の森」といった特定のテーマのパーティーにおいて、舞台照明やバニラ、フルーツなどの香りを放つスモークマシンを使用し、メインテーマエリアへの没入感を高めている。
Casa das Ideiasインスタより@casadasideias
Spasso Splash Festasインスタより@spassosplash
一方で、より自然で居心地の良い、オーガニックな雰囲気の空間も人気を集めている。従来の「カラフルなホール」から脱却し、コテージスタイルやボヘミアンシックスタイル(ヌードやテラコッタといったニュートラルでアースカラーを基調とした配色)を取り入れ、よりサステナブルな空間を求める親のニーズに応える動きだ。
リオデジャネイロの Casa Eco Buffetは、緑豊かなエリアに菜園を設け、自然と触れ合えるアクティビティ(木登り、ジップラインなど)を一体化した空間を提供している。装飾には天然素材を使用し、プラスチックや使い捨てアイテムを可能な限り避けるという理念を掲げている。また、ツリークライミングやジップラインなどを設置した「裏庭」を再現し、自然との直接的な触れ合いとシンプルな遊びを体験できる点も特徴だ。
Casa Eco Buffetインスタより@casaecobuffet
3.ブラジルで最も重要な祝祭「カーニバル」
そしてカーニバルは、間違いなく世界的に知られるブラジル最大、かつ最も象徴的なフェスタだ。社会的な障壁や階層構造を一時的に解消し、音楽、ダンス、パレードを通じて喜びを分かち合うことで、そこでもまた人と人とのつながりが生まれる。したがって、カーニバル期間中のマーケティングは、企業にとって「お祭りの喜び」や「高揚感」といったエネルギーを通じて、観客と感情的につながることができる、極めて重要なタイミングとなる。
パレードやストリートカーニバルのスポンサーになるだけでなく、ブランドイメージを「団結」「喜び」「祝賀」といったカーニバルのポジティブな感情と結びつけようと、さまざまな工夫がなされる。商品パッケージをカーニバル仕様にすることは既に一般化しており、マスクや羽根、鮮やかな色彩を取り入れたデザインの飲料缶などは定番だ。
ビールブランド Brahma は、2025年のカーニバル期間中、パレードを盛り上げる各カーニバルチームのカラーを取り入れたデザインに変更して販売。応援するチームの色を選んで購入する楽しみを SNS などで訴求し、同ブランドがスポンサーを務めるチームのメインダンサーを広告塔に起用している。
そして近年、特に顕著なのが、ビジュアルコンテンツ、インフルエンサーとの連携、街頭でのブランドアクション、限定キットや商品コレクションといった多面的な施策だ。
例えば2024年、化粧品市場最大手の Boticário グループは、パレード会場に VIP ルームを設置し、セレブリティやインフルエンサーを招待しただけではなく、カーニバルに欠かせないグリッターと環境問題を結びつけ、持続可能な「エコグリッター」のプロモーションを重点的に行った。
ソーシャルメディアを活用し、カーニバルメイクのチュートリアル動画を配信。特に、長時間続くカーニバルでも崩れにくい、鮮やかなメイクの作り方を伝える点に重点を置いた。また、メイクアップのタッチアップスペースの設置やサンプル配布など、イベントの真っ只中で消費者と直接つながる施策も展開している。
さらに、カーニバルをテーマにした特別パッケージとして、フィックスミスト、ボディグリッター、華やかな色合いのリップバームなど、カーニバルに欠かせないアイテムを組み込んだ限定コレクションを発表。この取り組みは、「美」がカーニバルの主役の一つであることを可視化し、商品への関心につなげると同時に、参加者にとって実用的かつトレンディなソリューションを提供することを目指している。
BoticárioのInstagramより
4.香りと身体美に表れる、ブラジル人の美意識
挨拶時のハグやキス、会話中のさりげない接触といった身体的な親密さは、社交性や個人的なつながり、愛情表現を重視するブラジルでは一般的なジェスチャーだ。そして、その際に気になるのが「匂い」である。
World Population Review の2025年の調査によると、ブラジル人の週平均シャワー回数は1日2回で、これは世界で最も多い。高温多湿の気候や先住民の生活習慣の影響が大きいとされるが、身体的な親密さも理由の一つだ。また、ブラジル個人衛生・香水・化粧品産業協会は、2025年にブラジル人の約78%が何らかの香水を使用していると発表している。
企業は、香りが感情や記憶を呼び起こし、消費者との感情的なつながりを生み出すことを念頭に、香りにアプローチした感覚マーケティングを戦略的に活用している。寝具やバス用品を扱う MMartan は、独自の香りを実店舗で使用し、香りによるブランド認識を広めている。柔らかくフレッシュで洗練されたフレグランスは、清潔感や快適さ、居心地の良さを想起させる。自動ディフューザーやホームスプレーを通じて空間に拡散され、ベッドリネンやテーブルウェア、バス用品にはフレグランスが同梱されたり、商品自体に香りが施されたりしている。
プラスチック製フットウェアブランドの Melissa は、幼少期や青春時代の記憶を呼び起こす香りをシューズに採用し、ブランドアイデンティティを構築している。風船ガムや子ども時代のノスタルジアを想起させる独特の香りを、靴の原料であるプラスチック樹脂に直接配合している点が特徴だ。香りは表面的なものではなく素材と一体化しているため、継続的な使用や洗濯、風雨にさらされた後でも長く持続する。
Melissaインスタより@ melissaoficial
香りのほかに筋肉美も、ブラジルにおける身体美の基準の中心的な要素である。男女ともに、筋肉の引き締まりや輪郭の強調が重視される。女性でいえば曲線美を備えたアスリートのような体型、男性でいえば一般的なアスリート以上に筋肉がついた体型が理想とされる。いずれにせよ、単なる筋肉質というよりも、よりボリューム感のある体型が好まれ、その誇張された例はカーニバルの女性ダンサーのボディーにも見て取れる。
一方で、世界肥満連合(WOF)は2025年、ブラジルの成人の約3/2(約68%)が過体重であると報告している。こうした現状と、世界的なボディポジティブ運動の広がり、さらにメディアや広告において「リアルな表現」を求める消費者意識の高まりを背景に、近年ではさまざまな体型に対するインクルージョンが進んでいる。
5.ブラジルの柔軟な時間感覚
ブラジルには、時間厳守に対して柔軟な社会的傾向がある。社会経済的な階層によって仕事における時間感覚や時間厳守への意識は異なり、一般的には、貧しい(労働者階層)の人ほど仕事の時間を守ることに対して厳格であるという印象がある。
一方、1980年に発表されたロバート・レヴィン(Robert Levine)の論文では、ブラジルは「ポリクロニック(多時点的)」な時間文化を持ち、時間厳守の基準が比較的広く、柔軟であることが指摘されている。
イベントは予定より遅れて始まることが多く、ホームパーティーに開始時刻ぴったりに到着することはほとんどない。電車やバスには一応の時刻表はあるものの、必ずしもその通りに運行されるわけではなく、リフォーム工事が予定通りに終了することもまれだ。銀行や診療所などで予約をしていても、待ち時間が発生するのはごく当たり前と受け止められている。イベントの場合、技術的な問題が生じたり、観客が十分に集まるのを待っていたりすることも理由として挙げられる。車両の故障や渋滞は遅刻の典型的な理由であり、放送権を持つテレビ局の他番組が延長することで、サッカーの試合開始が遅れることも珍しくない。
こうした不可抗力による遅延は広く理解され、「仕方がないもの」として受け止められることが多い。遅刻の理由が何であれ、重要なのはそれを受容する文化があるという点だ。この姿勢は、時間の厳格さよりも個人的な関係性や柔軟性を重視する傾向へとつながっている。
例えば、カジュアルなパーティーで開始時刻ちょうどに到着することは、主催者に準備を急がせる行為と捉えられ、失礼だとみなされる場合がある。形式的な時間厳守よりも、相手への心遣いやリラックスした関係性を優先する文化の表れといえる。
この柔軟な時間感覚は、企業のマーケティングにも反映されている。多くの企業が「遅延からの解放」や「柔軟な対応」を打ち出すキャンペーンを展開するのは、遅延が起こり得ることを前提としつつ、それでも問題を解決しようとする姿勢が共感を得るからだ。
「Pra quem é ligeiro(機転の利く人へ)」というコピーを掲げた配車サービス「99」のバイク便サービスは、都市部の渋滞回避という利便性を強く訴求している。車移動では遅延が発生しやすいという前提のもと、バイクという柔軟な選択肢を提示するSNS投稿を行っている。
一方で、時間を守ることが当たり前ではない社会だからこそ、企業の「時間を守る努力」は大きく評価される。例えば国内線の航空便では、出発がスムーズに行われた場合、「定刻通りに出発できた」ことがアナウンスされ、到着時刻が守られた場合には「弊社は時間を守る会社です」と強調されることがある。時間厳守は、顧客やパートナーからの信頼獲得や競争優位性の確立に直結する、重要な差別化要因となっている。
6.終わりに
「包摂」の姿勢を示し、明るくエネルギーに満ちたトーン、そして音楽やダンスを頻繁に用いる表現は、ブラジルの広告で繰り返し見られる特徴だ。家族が集まる食卓や、友人同士が集うパーティーの風景も、広告の中でよく描かれる。
そこには、社会経済的な困難を幾度となく乗り越えてきた歴史が重ね合わされ、「希望」「挑戦」「困難に負けない強さ」といったテーマが、ブラジル人の心に強く響いている。
ブラジルにおける広告戦略では、単なる機能的価値を訴求するだけでは十分ではない。消費者の文化的特性や感情に寄り添い、共感を生むストーリーを描くことが重要とされる。
このブランドは、自分たちの文化や価値観を理解し、尊重してくれている――そうした安心感や信頼感こそが、複雑で多様な社会において、競争優位性を生み出しているといえよう。
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執筆者プロフィール
TNCライフスタイル・リサーチャー
知れば知るほど分からなくブラジルに魅了されて25年。温かい大「家族」に支えられてレジリエンス能力を開発中。ブラジルだけなく南米もカバーしています。
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。




