【海外各国の国民性】韓国:せっかちな国民性から生まれたスピード重視の「パルリパルリ文化」
- 公開日:2026/02/18
- 更新日:2026/02/18
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韓国人は情が深く、家族や仲間をとても大切にする。初対面では距離を保っているように見えても、関係が築かれると一気に心理的距離が縮まり、相手の面倒をよく見たり、感情的なつながりを強く持つようになる。
一方、せっかちな性格の人が多いという一面もあり、何ごとにも速さを重視する傾向がある。韓国人のこのような国民性は 「パルリパルリ(빨리빨리)文化」と呼ばれ、現在では経済や社会のシステムにも大きく影響を与えている。「パルリパルリ」とは韓国語で「早く、早く」という意味で、感情表現がストレートである韓国人が、物事がスムーズに行かない場合や待つことに強いストレスを感じた際などに、よくこのフレーズを口にする。
1.現金決済は時間の無駄⁉ パルリパルリ文化から世界有数のキャッシュレス大国へ
韓国人のパルリパルリという価値観は、単なる性格的な短気さだけでなく、物事を迅速に判断・実行し、結果を早く出すことを価値とする社会的な思考様式でもあり、「遅い」ことは不親切や能力不足と捉えられてしまうこともある。
パルリパルリ文化が定着した背景には、朝鮮戦争で壊滅状態となり貧困国となった韓国が1960年代後半以降、短期間で成し遂げた「漢江の奇跡」と呼ばれる急速な復興と経済成長の影響が大きい。他国に例を見ない速度で高度経済成長を遂げた韓国の歩みは、国際的にも注目を集め、その過程において迅速な行動や即断即決によって早期に成果を上げることが高く評価される社会的潮流が形成されていった。
現代の韓国社会では、待つことや手続きを重ねることは非効率と考えられており、速さを追求した製品やシステムは、日常生活からビジネス、行政、 ITサービスに至るまで、あらゆる場面に深く浸透している。韓国が世界でもトップクラスのキャッシュレス決済大国である理由の1つには、「現金決済=遅い、面倒」という感覚が国民全体に定着しているからで、現金を出してお釣りをもらい、財布に入れてから商品を受け取るという一連の作業を多くの人が無駄だと感じている。
キャッシャレス決済を促進する代表的なシステムに「キオスク」がある。キオスクは注文や支払い、受付などを無人で完結できるタッチパネル式の端末で、飲食店のほか、映画館、病院、薬局、公共施設などにも設置されている。キオスク自体は日本でもよく見かけるが、韓国のキオスクの普及率の高さは別次元で、キオスクという言葉自体が日常語として完全に定着しているほど、今では生活に欠かせないシステムとなっている。ほとんどがキャッシュレス決済専用となっており、飲食店に関しては口頭で注文し現金で支払いをする店を探す方が難しい。

もう1つ日本と大きく異なる点は、韓国のキオスクのほとんどが注文と同時に決済まで行えることだ。そうすることで、商品を受け取ったり、食事後にいちいち会計をする手間が省けスムーズに退店できる。
テーブル設置型のキオスクもかなり普及している。注文時にテーブルに着いたまま注文・決済をするため、食べ終わるとそのまま店を出ることができる。会社員の昼休みなど、限られた時間で食事を済ませたい時には非常にスマートで効率的だ。

2.スピードを求める国民性が、配達の常識を変えた
スピードを求める国民性は、配送の常識も変えた。
韓国最大のECプラットホーム「Coupang(クーパン)」は独自の物流ネットワークを駆使した翌日・即日配送サービス「ロケット配送」を2014年より実施している。深夜12時までに注文すれば、翌朝7時までには自宅玄関前まで商品が届くという超高速配送サービスのロケット配送は、忙しい会社員や子育て世代、共働きの主婦、早く商品を受け取りたい消費者などのニーズと合致。そして何よりも速さは価値だと考える多くの国民に支持され、Coupangは瞬く間に国内最大のECサイトとなった。その後、Market Kurlyなど他のECサイトでも同じような配送サービスを開始。早朝受取り配送が日常化した。

それ以外にもパルリパルリ文化は公共交通や高速道路でも見ることができる。
都市部では路線バスのバス停に時刻表が設置されておらず、その代わりにリアルタイムで到着情報が確認できる電光掲示板が設置されている。電光掲示板には、路線番号ごとにGPSと交通管制システム、そして実際の走行状況を反映した「〇分後にこのバス停に到着」という到着予測情報が表示されており、利用者は「あとどれくらいでバスが来るか」を把握することができるようになっている。

このシステムはNAVER MapやKakao Mapといった地図アプリのほか、Kakao Busなどのバス専用アプリとも連動している。自宅や現在位置からもバスの到着時間を確認することができるため、待ち時間を最小化し、行動の効率化を図ることができる。時刻表があるバス運行システムでは交通渋滞などで遅れが生じた場合、どのくらい待たなくてはならないのかが不明でストレスとなるが、到着までの残り時間が明示されていれば、利用者は別の交通手段を検討したり、その場で待つ判断を下したりすることができる。
時刻表がないため、バスを運転する側も時間を調節して運行する必要がない。時には同じ番号のバスが立て続けに来ることもあるが、このようなバス運行システムは待つことが嫌いで「時刻表に合わせる余裕があるなら1分でも早く来て欲しい」と考える韓国人の国民性に合ったシステムと言える。

また、高速道路でもスムーズな通行を促進するため、遮断バーが無いHi-pass(日本でいうETC)レーンが通常となっている。韓国では都市部を中心に高速道路でも渋滞が起こりやすい。特に料金所付近では激しい渋滞となることが多いため、Hi-passレーンに設置されていた遮断バーを撤去し、これまで以上にスムーズに通過できるようにした。
遮断バーがあった時は速度を30~40kmに減速しなくてはならなかったが、バーが無くなってからはどの車も80~100kmという高速で通過している。一応ゲートには「制限速度30km」の表示はあるが、パルリパルリ気質が染みついている運転者たちには全く見えていないようだ。

2026年1月に開通した永宗島と青羅国際都市を結ぶ青羅ハヌル大橋は、有料道路でありながら現金支払いのレーンが存在しない完全なスマート通行方式となっている。運転していても一体いつ料金が課金されたのか気付かないほどスムーズに走行できるため、出退勤時間でも渋滞しにくい。
今後、渋滞しやすい料金所は順次この方式に変わって行くのかも知れない。

3.競争意識から生まれた「平均以上」を求める価値観
パルリパルリ文化のほかにも、韓国人は「競争意識の高さ」や「負けず嫌い」という一面も持っている。
しかし、これもパルリパルリ文化が基本にあるのではないかと考える。「他者より早く、より多くの成果を出す」ためには競争意識は自ずと高まっていく。
この競争意識は、特に教育の場面で顕著に表れている。韓国社会は学歴が社会的評価や就職、将来の収入に強く影響を与えるため、就学前から当たり前に私教育が行われる。小学校の終業時間になると、学校の横に何台もの黄色いバスが横付けされている光景を目にするが、これはさまざまな塾が生徒の送迎のために準備したもので、小学生たちはこのバスに乗って学校から塾へ直行する。また、中・高校生になると塾をいくつも掛け持ちするのが常識となり、帰宅するのは夜10時を過ぎることも珍しくない。

※上記画像は、AI生成したイメージ画像です。
幼少期から成績や順位による比較が日常的に行われ、職場でも学歴やキャリアが重視される社会の中で、人々の心の中には「平均以上に見られなくてはならない」「平均以下には見られたくない」という意識が次第に強まっていく。このような背景からだろうか、韓国の人たちは「他人と違う」ことを好まない人が多い。
自分が「平均以上」であることを最も簡単に表すことができるのが見た目や持ち物である。 特にファッションに関しては特定のスタイルやアイテムに人気が集中し、同じような装いが街に溢れる傾向が強い。皆、同じファッションに身を包むことで、見た目で優劣をつけられることがなく、また身に着けている本人は劣等感を抱かずに済むからだ。
韓国では数年前から冬の定番アイテムとして、男女ともに黒いペディング(ダウンコート)が大流行している。最初はロングコートが主流だったが、2024年頃からは若い世代を中心にショート丈のものが増えている。
一般的に「流行している」といわれる場合、実際にはどのくらいの人が着用しているのを想像するだろうか。
冬の韓国では実に半数以上の人が黒いペディングを着用しているといっても過言ではなく、近くに学校がある繁華街などでは、その割合は7~8割まで上昇する。

この黒いペディングがなぜ「平均以上」を表しているかというと、見た目の地味さとは裏腹に決して安いとは言えない価格であるからだ。黒いペディングなら何でもいいというわけではない。「THE NORTH FACE」「K2」「Discovery」「EIDER」などの人気ブランドを着用してこそ「自分は平均以上である」と満足する。これらのブランドで販売されているペディングの平均価格は約30~50万ウォン(約3~5万円)となっており、小学生や中学生であってもこのようなブランドを着用している。
しかし、ここまで揃いも揃って黒いペディングを着るのには、他にもいくつか理由がある。まず、黒という無難なカラーはどんな服にも合うということが挙げられる。汚れも目立たず、体型も隠してくれる。
また、皆が着ている定番のファッションであり、中の服にも気を使わなくていい。つまり何を着るか悩む必要が無いため、「パルリパルリ(早く)準備が完了する」点が韓国の人たちに受け入れられたのではないかと思う。
4.終わりに
韓国人はとにかく待たされることと時間がかかることが嫌いで、何ごとにもスピードと簡単さ、早い結果を求める。そのため商品やサービスは価値や使い方が一目で理解でき、利用開始までに時間や手間がかからないことが強く求められる。また、対応の遅さは関心の低さや信頼不足と受け取られやすいため、問い合わせやアフターサービスにおいても迅速な対応も必要不可欠だ。
韓国では非常に早いスピードで流行が拡散される一方、次の流行に移り変わるサイクルも早いため、初期段階における話題性や評価、プロモーションがカギとなりそうだ。
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執筆者プロフィール
TNCライフスタイル・リサーチャー
韓国在住15年目の主婦。韓国人の夫とともに海に囲まれた仁川・永宗島で暮らしている。趣味はカフェ巡りと日本旅行。
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。




