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食材の買い足しから片付けまで:アジア8カ国の家庭料理事情 ~食文化から見える3つのトレンド~

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1.はじめに

グローバル市場への展開や現地向けの商品・サービス開発において、現地の生活者の「当たり前」を深く理解することは不可欠です。特に「食」と「家事」の領域には、その国の文化、家族構成、インフラ事情が色濃く反映されます。
本記事では、ベトナム、カンボジア、タイ、フィリピン、インド、インドネシア、中国・上海、サウジアラビアの「料理をするときの行動」について、各国のリアルな食卓の風景、食材の調達方法から家での食生活までをご紹介します。
さらに本記事の後半では、これら8カ国の生活事情を俯瞰することで見えてくる、グローバルマーケティングに役立つ「3つのトレンド(食材の買い出し・保存習慣、台所の主役の変化、多様化する食卓のタイムマネジメント)」についても紐解いていきます。

2.ベトナム編:家族の絆と屋台文化の活用

ベトナムの食卓では、米によく合う塩気があるものや濃い目の味付けの料理が好まれます。ヌックマム(ベトナム魚醤)で味付けした煮魚「カーコートー」や揚げ春巻き「チャーヨー」、空心菜のニンニク炒めなどが定番です。食べる際には、各自がヌックマムや大豆醤油、チリソースなどを使って自分好みに味をカスタマイズするのが特徴です。

食事は、サラダや肉・魚料理、たっぷりと炊いた白米が大皿で提供され、各自が自由に取って食べるスタイルが一般的です。テーブルを使わず、床にお皿を置いて家族団らんで食事を楽しむ家庭も多く見られます。

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川魚の煮つけ(左)、揚げ春巻き(中)、空心菜のニンニク炒め(右)

子どもの学費捻出のために共働き家庭が増加する中、2世帯同居で時間のある義母が料理を担うケースがよく見られます。自炊は1日1〜2回程度にとどめ、街中にあふれる屋台を時間帯を問わず活用し、外食で済ませるなどライフスタイルに合わせて柔軟な食生活を送っています。

食材の調達も、早朝から新鮮なものが並ぶ市場と、仕事帰りなどに便利なスーパーマーケットを上手に使い分けています。
食後の片付けは女性が担当することが多く、一般的なベトナムの家庭には給湯器がないため、大きなたらいに水と洗剤を入れて食器をまとめて洗います。

ベトナムの家庭でよく使われる便利な飾り切り用の「なみなみ包丁」など、本記事では紹介しきれなかった現地のリアルな事情はこちらで詳しく紹介しています。

3.カンボジア編:家族団らんとローカル市場の支え

カンボジアでは「ご飯食べた?」が挨拶になるほど食事が重視されています。残業がない社会文化のため、19時には家族全員が揃って大皿のおかずを囲むのが日課です。各自の白米を盛ったお皿におかずを乗せて食べます。
家庭で食べられているのは「クメール料理」と呼ばれる地元料理です。日本人が驚くほど塩辛い味付けですが、タイ料理のような唐辛子の辛さは少なめです。その他にも、ハーブ類をペースト状にした調味料「クルン」が味の決め手となる酸味のあるスープ「ソムロームチュークルン」などが代表的で、クルンを作るためのすり鉢はカンボジア家庭に欠かせない調理道具の一つです。

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キッチンとすり鉢

子育て世代は共働きが多く、炊事は同居する母親が担うことが一般的です。朝食は屋台で済ませることが多く、昼食や夕食の食材は、冷蔵庫での保存に頼らず、生活圏内にある市場でその日に必要な新鮮な野菜や肉、魚を調達します。
食後の片付けは、母親に任せきりにするのではなく、父親や子どもたちなど手の空いている家族が協力して行います。また、給湯器がないため、食器は水と洗剤で手洗いするのが基本です。

カンボジアの伝統的な高床式の家や、都市部の住宅(ショップハウス)における台所事情など、さらに詳しい現地の様子はこちらの記事で紹介しています。

4.タイ編:大皿をシェアする食卓と料理上手なタイ男性

タイの食卓では、各自の平皿に盛られたご飯の上に、食卓中央の大皿から好きなおかずをのせて一緒に食べます。手食はあまりなくスプーンやフォークで、魚の骨やエビの尾なども器用に外して食べます。
料理は「ガパオライス」や「トムヤムクン」など辛い味付けが多く、唐辛子で辛さを調整します。子どもたちは小学生くらいから少しずつ辛い味に慣れ、大人になる頃には激辛レベルに到達します。また、タイ風豚バラの角煮「カイパロー」など、パクチーの根とニンニク、白コショウを潰したペーストで風味を決める料理も人気です。

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「カイパロー」の豚足バージョン

興味深いのは、タイ人男性の料理頻度の高さです。アジア他国に比べて既婚男性の料理頻度が高く、朝食の準備や、週に3〜4回の夕食の自炊を男性が積極的に行っています(残りの日は屋台や食堂を利用)。油はねの掃除が大変な揚げ物を自宅で手軽に作るため、「エアフライヤー」を活用して豚バラ肉の塊をカリカリに揚げる「ムーグロープ」などを楽しむ家庭も増えています。

また、食後の食器洗いは、夫婦のどちらか手が空いている方が担当するなど、家事の分担が自然に行われています。

市場とスーパーの使い分けに関するタイ人女性のこだわりや、男性が休日に凝った料理にのめり込む様子など、タイのリアルな台所事情はこちらの記事で詳しく紹介しています。

5.フィリピン編:みんなとワイワイ楽しむ食卓

フィリピンの人々は、自宅でも会社でも、誰かと一緒に食事をすることを楽しむコミュニケーション重視の文化を持っています。朝昼晩の3食に加え、「ミリエンダ」と呼ばれる午前と午後のおやつタイムがあるほど食べることが好きです。
食事は白いご飯と肉・魚が基本です。ぱらつく白米を美味しく食べるために、シニガンスープ(具なし)をかけてしっとりさせます。また、「野菜は貧しい人の食べ物」という意識があり、食事において野菜はあまり重要視されていません。食べ方は、右手にスプーン、左手にフォークを持ち、スプーンの横で肉や野菜を切って混ぜて食べる一石二鳥のスタイルです。

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お惣菜屋:揚げ物と汁物が多い。手前右がシャケを使ったシニガンスープ。

食材の調達は、月に2回ほどの給料日にスーパーマーケットで大量にまとめ買いをするのが中間層の特徴です。生鮮食品だけでなく、常温保存の缶詰なども買い置きします。また、中間層の共働き家庭ではメイドを雇うことが多く、料理はメイドが担当するケースが一般的です。また、フィリピンの住宅には、家族が使う一般的なキッチンのほかに、屋外やメイド部屋にある下ごしらえ用の「ダーティーキッチン」が設けられていることがよくあります。

給料日のスーパーマーケットの熱気や、1日に2回あるおやつタイム「ミリエンダ」の文化など、フィリピンの食を楽しむ様子はこちらの記事で詳しく紹介しています。

6.インド編:家族の食事風景とお米への意識

インドは宗教や民族が多様であり、食文化も家庭によって大きく異なります。ヒンドゥー教、イスラム教、ジャイナ教など宗教によって食べるものが変わり、地域によって米中心かどうかも異なります。
北インドでは「米は体を冷やす・太る・消化に悪い」と信じられており、夜は米を避ける傾向があります。米を炊く際は、多めのお湯で茹でてからお湯を捨てる調理法をとります。
また、新鮮な食材が好まれるため、食材の調達はナイトバザールやリヤカー販売を通じて毎日必要な分を購入する家庭が多いのも特徴です。作り置きを嫌い、毎回できたてを調理するのが一般的です。
都市部の核家族ではダイニングテーブルで一緒に食事をしますが、主食の「チャパティ」は出来立てを1枚ずつ提供するため、料理をする母親が最後に食事をとる習慣があります。
料理は、豆カレーや野菜カレー、サラダ、アチャールなどに、たっぷりのスパイスを使います。調理する際には圧力鍋(クッカー)や鉄鍋(カライ)など専用器具を用い、食器は丈夫で清潔なステンレスが定番です。

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豊富な豆類とアチャール

また、手食文化が残る一方で、スプーンやフォークを好む若者も増えています。そして、中間層以上では調理専門のメイドを雇う家庭も多く見られます。

卵を食べる「エッグタリアン」の増加や、宗教儀式における食器の使い分けなど、インドの多様な食文化の背景はこちらの記事で詳しく紹介しています。

7.インドネシア編:自由な食事のタイミングと変化する食べ方

インドネシアでは、時間を決めて一斉に食べる習慣が薄く、各自が好きなタイミングで食事をとるスタイルが一般的です。三食の量は少ないものの間食を好むため、常に何かを食べたり飲んだりしています。普段は早朝に大量に料理を作ってテーブルに並べておき、家族がそれぞれ自分のタイミングで食べます。
料理は、ご飯に魚や肉、炒め物を盛り付けたワンプレートや、スープを添えるスタイルが定番です。その他、調理に必要な道具として特徴として石臼「Cobek」があります。このCobekを使って香辛料をブレンドし、手作りの「Sambal(サンバル)」を添えるなどして、独自の味わいを楽しみます。食べ方も、かつての右手のみを使う手食から、現在はスプーン(右手)とフォーク(左手)、さらには麺類を食べる際の箸など、カトラリーを使い分けるスタイルへ移行しています。

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Cobekという石臼ですりつぶして香辛料をブレンドする

また、食材の買い出しは多様化しており、ローカル市場で1〜3日分の生鮮食品をこまめに買う人もいれば、スーパーマーケットや送料無料のオンラインサービスを利用して1週間〜10日分をまとめ買いする人も増えています。食後の片付けは、お手伝いさんがいる家庭ではお手伝いさんが、いない場合は母親が行うことが多いようです。

インドネシアでのオンラインスーパーやデリバリーアプリの普及状況、高級マンションにおけるお手伝いさん専用キッチンの事情など、さらに詳しい情報はこちらの記事で紹介しています。

8.中国・上海編:おかず中心の食卓と新鮮な食材へのこだわり

中国・上海の家庭料理は、母親ではなく父親が作る「親父の味」であることが多く、父親が家族の好みを把握して腕を振います。食卓は「おかず中心」で、白ご飯は言わないと出てこないことが多く、豊富なおかずでお腹を満たし、足りなければご飯を食べるスタイルです。
味付けは、醤油、黒酢、砂糖、ニンニク、ショウガ、青ネギといったシンプルな調味料で深い味わいを出します。一般的な中華スパイス(八角や唐辛子など)はあまり使わず、こってり甘口の「紅焼肉」などに代表される上海料理が中心です。なお最近は、伝統料理に加え、パスタやステーキなども食卓に並びます。

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上海料理の代表格・紅焼肉。こってり甘口

また、多くの家庭では「作り置き」をせず、その日に買った新鮮な食材をその日のうちに調理することを徹底しています。食材調達は、市場やスーパーマーケットに加え、「盒馬生鮮」などの便利なデリバリーサービスを併用しています。食事の時間は家族が一斉に揃うとは限らず、食べたい人が食べたい時に食べるという自由なスタイルですが、温かいコミュニケーションの場となっているのも特徴の一つです。なお、後片付けも父親が担当することが多いようです。

玄関近くに配置されるキッチンの間取り事情や、中華鍋・四角い包丁などの調理器具の活用法など、上海の台所の様子はこちらの記事で詳しく紹介しています。

9.サウジアラビア編:スーパーでのまとめ買いと家族が集う夕食

サウジアラビアは2世帯・3世帯などの大家族が多く、食材調達は大型スーパーマーケットでパスタや卵などの保存がきく食材を月に数回、まとめ買いをするのが主流です。

1日の食事リズムは明確に分かれています。朝食はパンや豆料理などで手早く済ませ、昼食は家族が揃わないため個々で食べることが多いです。しかし、夕食は家庭料理の中心であり、家族全員が集まる時間として、スパイスや油をたっぷり使用した豊富な大皿料理が手作りされます。家庭料理の一つとして、肉とスパイスの炊き込みご飯「カプサ」などが定番です。

また、家庭料理は大皿でシェアするスタイルが基本で、家族や親族との絆、おもてなしを重視する文化が根付いています。手やスプーンで大皿から料理を取り合いながら交流を深めます。特に金曜日はイスラムの習慣で親戚が集まるため、多めに料理を用意することが美徳とされています。なお、食後の片付けは女性家族が協力して行うか家政婦が担当する傾向がありますが、最近では食洗機の利用も増加しています。

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都市にお住まいの南部のナジュラーンという地方の部族のご家族の食卓。
郷土料理(ラクシュ)と注文で届いたバーベキュー料理(カプサ以外の大皿料理例)。
(都市部には多くの地方出身者が住んでいる。サウジアラビア人は自分の出自をとても大切にしている。)

大家族向けの広々としたキッチン設備や、強力な換気扇・ガスボンベ事情など、サウジアラビアならではの住環境はこちらの記事で詳しく紹介しています。

10.【まとめ】8カ国から見えてくる3つのトレンド

これまで紹介した8カ国の家庭料理事情を俯瞰すると、国ごとの表面的なメニューの違いだけでなく、現地のライフスタイルや価値観に基づいた、いくつかの共通の傾向が見えてきます。ここでは、グローバルマーケティングにおいて意識すべき3つのインサイトにまとめました。

(1)買い出し頻度と保存習慣によるターゲティング(「毎日・鮮度派」vs「まとめ買い・ストック派」)
食材の買い出し行動は、大きく2つのグループに分かれます。カンボジア、インド、中国・上海、ベトナムの一部に見られる「毎日・鮮度派」は、冷蔵庫の有無に関わらず、市場やデリバリーを通じてその日に必要な新鮮なものを調達し、作り置きを嫌う傾向があります。このエリアでは、毎日の接点(タッチポイント)を持つことや、小分けのパッケージ、鮮度をアピールする訴求が効果的です。 一方、サウジアラビア、フィリピン、インドネシアの一部に見られる「まとめ買い・ストック派」は、大家族や給料日の習慣、オンラインスーパーの普及により、缶詰やパスタなど常温保存が可能なものを中心に大量購入する層です。大容量パッケージや、保存性に優れた商品、まとめ買いでお得になるプロモーションと相性が良いといえます。

(2)変容する「台所の主役」と調理アプローチ(男性・シニア・家政婦の存在)
「料理は母親がするもの」という固定概念は、グローバルでは通用しません。タイでは男性の料理頻度が高く、上海では「親父の味」が定番になるなど、男性がメインの料理担当であるケースが少なくありません。また、中間層以上では家政婦(メイド)が料理や片付けを担うことが多く、フィリピンのようにメイド専用の下ごしらえ場「ダーティーキッチン」が存在する国もあります。ベトナムやカンボジアのように同居する母親(義母)が担うケースも多々あります。これらの踏まえ、調理家電や食品をプロモーションする際は、実際に誰が使うのか(メイドなのか、男性なのか、シニア世代なのか)を解像度高く想定する必要があります。

(3)「共食」の形と食卓のタイムマネジメント(「絶対集合」vs「個食・自由」)
食卓のコミュニケーションのあり方も、国によって大きく異なります。カンボジアの19時やサウジアラビアの夕食など、決まった時間に家族が揃うことを重んじる「絶対集合・大皿シェア」型の国では、パーティーサイズやシェアしやすい形状の食品が好まれます。 一方で、インドネシアや中国・上海のように、作られた料理がテーブルに並べられ、食べたい人が食べたい時に食べる「個食・自由なタイミング」型の国もあります。この場合、1食分のポーション(個包装)や、保温機能・電子レンジでの温めやすさなどが商品価値になり得ます。

このように、各国の「味覚」をローカライズするだけでなく、「誰が、いつ、どのように買い、作り、食べるのか」というプロセスの違いを捉えることが、海外展開における成功の鍵となります。



  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。

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    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
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