インドZ世代の価値観とライフスタイル 第2回:インドZ世代のアニメ事情
- 公開日:2026/03/27
- 更新日:2026/03/27
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1.急成長するインドのアニメ市場
インドのアニメ市場は急速に成長しており、その規模は2024年で18億5,540万米ドル(約2,950億円)、2032年には50億3,600万米ドル(約8,000億円)に達すると予測されている。平均成長率(CAGR)は13.3%と見込まれており、成長の中心には日本のアニメがある。「日本=アニメ」というイメージは若年層を中心に定着しつつあり、ストリーミングプラットフォームの普及によって、アニメは「ニッチな趣味」から「面白くてかっこいい」エンターテインメントへと進化しているように感じられる。
本記事では、2026年1月にバンガロールで開催されたアニメイベントの来場者に対して実施した定量アンケートおよび定性的なヒアリングインタビューの結果をもとに、インドのボリューム層であるZ世代がどのようなアニメを視聴し、日本アニメに対してどのような意識を持っているのかを、具体的な事例を交えて紹介する。
なお、インドZ世代の価値観やライフスタイルの全体像については、「第1回:インドZ世代の価値観とは?」を参照されたい。
2.インドで人気のアニメ
まず、インドではどのようなアニメが人気なのだろうか。
本イベントに来場したZ世代に、好きな日本アニメを3つまで回答してもらった。その結果、『ONE PIECE』『進撃の巨人』が最も人気の日本アニメとなった。また、上位11タイトルのうち8作品がジャンプ系作品で占められている点も特徴的である。

図1:好きな日本アニメ
これらの人気は、アニメイベント来場者の服装やコスプレの様子からも見て取れる。会場では、先に挙げた作品のキャラクターをモチーフとした衣装やグッズを身につけた来場者が多く見られ、作品の浸透度の高さがうかがえる。また、コロナ禍以降、2022年公開の『劇場版 呪術廻戦0』の大ヒットを皮切りに、日本アニメ映画の公開が相次いでいる。中でも、2025年公開の『鬼滅の刃 無限城編』は、インドで公開された外国映画(ハリウッド作品を除く)の中で歴代1位の興行収入を記録した。こうしたことからも日本アニメはインドにおいて、若年層を中心に支持されるコンテンツとして定着しつつある可能性がある。

写真1:日本のアニメTシャツやコスプレを着用した来場者
3.日本アニメに対するイメージ
では、Z世代は日本アニメに対してどのようなイメージを抱いているのだろうか。
定量調査の結果、最も多かったのは「Exciting / Fun」というイメージである。その他にも「Thrilling」や「Funny」といった、刺激的で楽しい印象を持っていることが分かる。
また、半数以上の対象者が日本アニメに対して「Relaxing / Comforting」というイメージを持っていると回答した。定性インタビューに参加した対象者(26歳男性)は、『ONE PIECE』を「ExcitingでありながらRelaxingでもあるアニメ」と表現した。日中仕事をしている彼にとって、『ONE PIECE』を視聴する時間は、仕事を忘れて物語の世界に没頭できるリラックスタイムであるという。アニメのストーリーやキャラクターのセリフに癒されたり、勇気や活力を得たりすると語っていた。
他の対象者も、日本アニメを視聴することで心が落ち着いたり、心地よい気分になったりすると話しており、日本アニメは刺激的でありながらも共感や癒しを与えるストーリーによって、インドのZ世代の心を掴んでいるといえる。

図2:日本アニメに抱く印象
ただし、日本アニメと一口に言っても、インドでは2003年から『ポケットモンスター(以下、Pokémon)』、2005年から『ドラえもん』、2006年から『クレヨンしんちゃん』がテレビ放送されており、幼少期から馴染み深く人気がある。こうしたファミリー向けアニメと、『ONE PIECE』などのバトル系アニメでは、イメージに違いがあるのだろうか。
定性インタビューによると、『Pokémon』や『ドラえもん』は小学生くらいまでの子ども向けという印象が強い。一方で、『ONE PIECE』などは10代後半以上向けのアニメであり、『Pokémon』などとは異なるカテゴリーとして認識されている。こうした背景もあり、インドのZ世代の間では、日本アニメは「かっこいいもの」として捉えられており、視聴することや関連グッズを持つことに対しても、非常にポジティブで抵抗感はほとんどない。

4.日本アニメを視聴し始めたきっかけ
『ONE PIECE』などのアニメが「かっこいい」印象として定着しつつある背景には、視聴開始時期や認知経路も影響していると考えられる。
前述のとおり、2015年頃まではアニメ視聴といえばテレビが主流であり、『ドラえもん』『Pokémon』『クレヨンしんちゃん』などを幼少期に見ていた人が多い。その後、2016年頃からスマートフォンが徐々に普及し始め、2020年頃にはインド国内で広く一般に保有されるようになった。都市部を中心に通信インフラも整備され、多様な動画配信サービスが展開された。2020年頃のコロナ禍による外出制限(ステイホーム)があり、タイミングとしては日本アニメを容易に視聴できる環境が整っていた。この時期に高校生や大学生だったZ世代は、家族や友人の影響を受けて視聴を始めた人が多い。定性インタビューのZ世代対象者も、多くはコロナ禍のステイホーム期間にアニメを視聴し始めている。
現在では、Z世代の若者は新しい日本アニメやそのタイトルに関する情報をSNSを通じて得ている。インドの若者が日常的に接しているSNS投稿が、日本アニメの人気をさらに加速させていると考えられる。

幼少期から漫画文化が身近にあり、多様なアニメがテレビ放送されていた日本とは異なり、インドのZ世代は成長してから初めて多様なアニメに触れている。そのため、『Pokémon』『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』といった幼少期に視聴したアニメとは異なるイメージを、『ONE PIECE』などに抱くのは自然なことなのかもしれない。




5.おわりに
本記事では、2026年時点のインドのZ世代における日本アニメの人気やイメージ、その背景について考察した。内容は以下のようにまとめられる。
• 『ONE PIECE』『進撃の巨人』『NARUTO -ナルト-』といったバトル系アニメが人気。
• 日本アニメは「かっこいいもの」として認識されつつある。
• 日本アニメは、ワクワクするのと同時に、癒しや勇気、活力を与える存在でとして受容されている。
• 動画配信サービスやSNSが日本アニメの人気を加速させ、視聴者を定着させている。
このように、インドのZ世代は日本アニメに対して非常にポジティブなイメージや感情を抱いており、その人気は確かなものとなりつつある。本記事を通じて、日本アニメが「かっこいいもの」であり、ストーリーやキャラクターへの共感が重要な要素となっている点は、筆者にとっても大きな発見であった。今後は、アニメ視聴にとどまらず、その先のグッズ展開やコミュニティ形成もさらに活発になっていくことが期待される。
一方でいくつかの課題も存在する。インドには多様な言語が存在するため、英語字幕や英語吹き替えのみでは十分にニーズに対応しきれない。また、街中で販売されているアニメ関連グッズの多くは非正規品であり、正規品と非正規品に対する消費者意識も十分とはいえない。さらに、違法サイトでアニメを視聴している若者も少なくないといわれている。

写真2:街中で日本アニメがプリントされたTシャツを着用する人々
急速に拡大する日本アニメ人気の中で、インドにおける日本アニメの認知と存在感は着実に高まっている。今後は、こうした人気を持続的な市場成長へとつなげていくための取り組みが重要になるだろう。さらに、日本アニメは単なるコンテンツにとどまらず、IP(知的財産)としての活用可能性も広がっている。アニメ作品やキャラクターを活用した商品展開やブランドとのコラボレーション、イベントやコミュニティ施策など、多様な形でのビジネス展開が期待される。特に、Z世代が「かっこいい」と感じる世界観やキャラクターは、消費行動を誘発する要素となり得る。このように、日本アニメを起点としたIPビジネスは、今後のインド市場において新たな成長機会となる可能性を秘めている。
〈調査概要〉
本調査は、2026年1月にバンガロールで開催されたアニメフェスティバル「Ōta TOKYO」内でのアンケート調査及びヒアリングをもとに執筆している。この調査ではZ世代93人の内、日本アニメを認知している人は91人(男性67%、女性33%)にアンケート調査を実施し、5人のZ世代にヒアリングを実施した。
〈出典〉
Polaris, India Anime Market Size.https://www.polarismarketresearch.com/industry-analysis/india-anime-market
The Current, Anime fanfare accelerates in India, thanks to the proliferation of streaming. https://www.thecurrent.com/anime-india-streaming-gaming
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執筆者プロフィール
赤塩 健太
インド・バンガロール在住の日本人リサーチャー。7年間の小学校教諭からリサーチ業界へ転身。主に食品や飲料などのFMCG案件を担当。近年増加傾向にあるエンタメ関連の案件への理解を深めるため、バンガロールで開催されるアニメやゲームイベントには可能な限り足を運び、全参加を目指している。
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。



