インドZ世代の価値観とライフスタイル 第1回:インドZ世代の価値観とは?
- 公開日:2026/03/13
- 更新日:2026/03/13
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1.はじめに
世界的なトレンドの最先端にいるのはZ世代であり、インドもその例外ではない。今回は、2026年1月にバンガロールで開催されたアニメイベントの来場者に対するアンケートやヒアリングをもとに、インドのZ世代はどのようなライフスタイル、価値観を持っているのかを考察してみたいと思う。
2.世代に関して
今回はZ世代に着目するが、そもそも世代とはどのような概念だろうか。一般的に世代とは、同じ時期に生まれた人は同じまとまりとして捉える考え方であり、社会・経済・文化・技術発展などさまざまな要因から定義づけられている。しかしながら、世代の区分については公式な定義が存在せず、研究機関・調査機関によって異なっているのが現状である。本記事ではPew Research Centerの定義を参照したいと思うが、それによると世代の区分は以下の通りとなる。

表1:世代の定義*1
ベビーブーマーは、日本でいう「団塊世代」に当たる。第2次世界大戦後の高度経済成長期に、世界各国で急激な出生数が増加した時代に生まれた世代である。日本でもこの時期の出生数は高く、同世代の人口の多さから、受験や就職などで激しい競争を経験している。
X世代は、アナログからデジタルへの移行期に成人期を迎えた世代である。さらにミレニアル世代は携帯電話やインターネットの普及が進んだ時期に育って、デジタル技術が日常生活に浸透していく過程を体験してきた。
そして、Z世代は、2007年のiPhone発売以降、スマートフォンとインターネットが日常にある環境の中で育った世代である。現在20代後半の人でも10代前半からスマートフォンに触れてきた世代であり、「デジタルネイティブ」と呼ばれることも多い。FacebookやInstagramなどのSNSを通じたオンラインコミュニケーションが当たり前の環境で成長してきた点が特徴と言える。
さらにその次のアルファ世代は、ミレニアル世代の子供たちにあたり、生まれた時からスマートフォンやAIが身近にある環境で育ち、幼少期のころからデジタルでのコミュニケーションに非常に慣れている。この世代は、Robloxといったオンラインゲーム、SNSはすでに生活には欠かせないものとなっている。
本記事の主題であるZ世代について、その特徴をもう少し詳しくまとめたいと思う。Facebook、Instagram、X(Twitter)などのSNSが普及し始めたのは2010年代であり、Z世代は10代前半からインターネットに触れ、デジタル環境に適応してきた世代である。彼らにとってオンラインでのコミュニケーションは、対面と同様に重要な社会的手段である。
またZ世代は、多様性への意識が高い世代としても知られている。幼少期から多様性、LGBTQなどに寛容であり、このような多様性コミュニティへの参加率も理解や関心が高いことで知られている*2。背景には、小さいころからMDGs(ミレニアム開発目標*3)、SDGs(持続可能な開発目標*4)などが教育現場で広く取り入れられてきたことに加え、SNSを通じて多様な価値観に触れる機会が増えたことで、多様性への関心を一層高めたと考えられる。
一方で、Z世代の間では、メンタルヘルスが深刻な問題として取り上げられている。アメリカでは将来に対する悲観的な見方が強いとされ、欧州では自尊心の低下が問題視されている*5。日本においても、政治、社会に悲観的な態度を持つZ世代も多く、日頃から自分の将来について考える機会が多い世代とも言われている。
*1出典:Pew Research. https://www.pewresearch.org/short-reads/2019/01/17/where-millennials-end-and-generation-z-begins/
*2 NIQ. https://nielseniq.com/global/jp/news-center/2024/1031-cmi/
*3 2000〜2015年に国連が掲げた、貧困削減・教育・健康の国際目標。
*4 2016〜2030年の国連目標。気候変動・ジェンダー平等など17分野。
*5 McKinsey.
https://www.mckinsey.com/jp/~/media/mckinsey/locations/asia/japan/our%20insights/jn_what-is-Z世代.pdf
3.インドのZ世代
インドは2024年に中国を抜いて、人口が世界一位となった。現在も若年人口が多く、平均年齢は約28歳である。図1は、世代別の人口を示している。インドで最も人口の多い世代はZ世代で、その数は約3億7,700万人とされている。つまり、日本の総人口の約3倍に相当する規模である。このように非常に大きな人口規模を持つインドのZ世代は、これからのインド社会・経済を担っていく中心的な存在であるといえるだろう。
また、インドのZ世代は図2が示すように、消費支出も全体の43%を占めており、消費マインドは活発で、インドの支出を牽引する世代であると考えられる。

図1:インドの世代別人口*6

図2:インドにおける総消費支出(Z世代が占める割合)*7
*6 BCG.
https://web-assets.bcg.com/87/51/a23cce4443c0bf65422c724a9b73/the-2-trillion-opportunity-how-gen-z-is-shaping-the-new-india.pdf
*7 BCG.
https://web-assets.bcg.com/87/51/a23cce4443c0bf65422c724a9b73/the-2-trillion-opportunity-how-gen-z-is-shaping-the-new-india.pdf
4.Z世代の持つ価値観とは
今後、インドの社会・経済の中心を担っていくと考えられるZ世代は仕事、人生についてどのような価値観を持っているのだろうか。そのヒントを得るため、バンガロールで開催されたアニメイベントでZ世代を中心にアンケートとヒアリング調査を行った。
「あなたの人生にとって最も重要だと思うもの」についてのアンケート結果(図3)を見ると、Z世代・ミレニアル世代ともに「楽しい時間を過ごすこと」を重視する人が多いことが分かる。日々の生活での充実を大切にしたいという価値観は、両世代に共通しているようだ。
一方で、両者の間には興味深い違いも見られる。Z世代では、ミレニアル世代と比べて「成功すること」を重要だと考える人の割合がやや高い。Z世代は、楽しさを重視しながらも、同時に成功を志向する側面を持っている可能性がある。ただし、ここで言う「成功」は、従来イメージされてきた社会的地位や経済的な達成を指すとは限らない。むしろ、「自分が望むことを実現できている状態」そのものを成功と捉えている可能性も考えられる。
こうした価値観をより立体的に理解するため、本調査では量的データの分析に加え、Z世代へのヒアリングも実施した。その結果、人生観について次のような声が聞かれた。
「人生で最も重要なことは」
対象者A:家族と仕事が大事。
対象者B:すべてのことから自由(インデペンデント)になること。
対象者C:パーソナルライフ、ワークライフバランスが大事。
「達成したいことは」
対象者A:スキルを高めて、金銭的な自由を手に入れたい。
対象者C:長期的に仕事をすることは、自分に向いていない。だから、お金を稼いで自分の人生を豊かにしたい。
「夢の仕事は」
対象者A:今の仕事が好きだから、今の仕事を続けたい。
対象者B:人を助けるような仕事がしたい。
対象者C:自分が楽しめることなら、なんでも。お金目的では決してないよ。
経済的な自立を目指す姿勢は持ちながらも、Z世代には「社会に意味のある仕事」や「自分が楽しめること」を重視する傾向が見られた。給与水準そのものよりも、仕事に対する納得感や自己実現といった内面的な満足を重視する価値観がうかがえる。
さらに図4を見ると、「充実して満たされている」と感じる経験・活動として、Z世代では「自由に過ごせる時間がある時」と回答した割合が、ミレニアル世代よりも高いことが分かる。誰かから評価されることよりも、自分のペースや価値観に基づいて時間を使えることに満足を感じやすい傾向があるようだ。
これらの結果を踏まえると、Z世代にとって重要なのは、単なる経済的成功だけではない。むしろ「自由であること」や「自分らしくいられること」、すなわち自立性やパーソナルライフを実現できるかどうかが、人生の満足度を左右する重要な要素になっていると考えられる。

図3:あなたの人生にとって最も重要だと思うもの

図4:「充実して満たされている」と感じる経験・活動
図5は、「今後どのようなアクティビティにより多くの時間を使いたいか」を示している。Z世代では、趣味や美容など、Me timeを満たす活動に時間を使いたいと考える傾向が見られた。特に美容に関しては、インドの若い女性を中心に関心が高まっており、美容市場自体も拡大を続けている。さらに近年は女性だけではなく男性の美容意識も高まりつつあり、スキンケアなどに関心を持つ男性も増えている。
一方で、図6は「今後、より時間を減らしたい活動」を示している。ミレニアル世代では、Z世代に比べてオンラインでのコミュニケーションを減らしたいと考える割合がやや高い。また、一人で過ごす時間を減らしたいと考える傾向も見られることから、ミレニアル世代の方が対面でのコミュニケーションを重視する側面がある可能性がある。
これに対してZ世代は、オンラインコミュニケーションが日常的な環境の中で育ってきた世代である。彼らにとってコミュニケーションは対面だけに限らず、オンライン空間も含めて自然に成立するものと捉えられているようだ。
また、衣類やコスメのショッピングに関しては、Z世代では時間を減らしたいと考える人は比較的少ない。さらに美容ケアに時間をかけたいと考える人も多く、SNSの影響なども背景に、外見やセルフケアへの関心が高まっている様子がうかがえる。

図5:より多くの時間を使いたい活動

図6:より時間を減らしたい活動
5.終わりに
今回の調査から、Z世代には「成功したい」と考える人が多いことが分かった。ただし、その「成功」の捉え方は、ミレニアル世代やそれ以前の世代とはやや異なる可能性がある。Z世代にとっての成功は、社会的地位や経済的達成といった従来型の成功よりも、「自分が望むことを実現できているかどうか」に重きが置かれているようだ。実際に対象者Cは「自分が楽しめることならなんでも。お金目的では決してないよ。」と語っており、彼らにとっての充足感は、規模の大小にかかわらず自己実現にあることがうかがえる。物質的な豊かさ以上に、自分自身が納得できる生き方が重視されていると言えるだろう。
一方で、Z世代は衣類やコスメなどに多くのお金や時間を費やしたいという意向も見られた。この背景には、自己表現の欲求に加え、デジタル環境の影響もあると考えられる。SNSが日常的なコミュニケーションの場となっている現在、彼らは常に「見られる」環境の中で生活している。そのため、インフルエンサーなどの存在が身近なロールモデルとなり、「自分もあの人のようになりたい」という憧れが、外見や身なりへの投資を後押ししている可能性がある。こうした点を踏まえると、Z世代は自己実現や自分らしさを重視する一方で、その表現手段として外見やライフスタイルにも積極的に投資する世代であると言えるだろう。
また、日本のZ世代とインドのZ世代を比較すると、価値観の面でいくつかの共通点が見られる。日本でも「自分が望むことを実現できるか」という価値観はZ世代の間で広く共有されており、美容や外見への投資も両国に共通する特徴の一つである。筆者自身もZ世代の一人として、「自分らしさ」や「納得できる生き方」を重視する価値観には共感するところが多く、日本の同世代と共通する感覚を覚えた。このような価値観の共通化の背景には、ソーシャルメディアを通じたコンテンツ消費のグローバル化が影響している可能性がある。現在では、SNSやOTTプラットフォーム(インターネットを通じて動画・音楽コンテンツを配信するサービス)を通じて国や地域を超えて同様のコンテンツに触れることができる。その結果、Z世代が思い描く「なりたい姿」やライフスタイルの理想像も、国境を越えて共通化しつつあるのかもしれない。
調査概要
本調査は、2026年1月にバンガロールで開催されたアニメフェスティバル「Ōta TOKYO」内でのアンケート調査及びヒアリングをもとに執筆している。この調査では、Z世代は93人(男性66.7%、女性33.3%)、ミレニアム26人(男性69.2%、女性30.8%)にアンケート調査を実施し、3人のZ世代にヒアリングを実施した。
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執筆者プロフィール
小林 倫太朗
バンガロール在住3年目のZ世代リサーチャー。モビリティ業界を中心に担当し、なかでもインドの電気自動車業界については日々チェックしている。趣味は、インド産のコーヒーを開拓すること。現地での生活を通じて得た視点を活かし、Z世代の目線からインドのZ世代の価値観やライフスタイルについても発信していきたい。
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編集者プロフィール
チュウ フォンタット
日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。




