
1.はじめに
近年、日本企業による東南アジア進出は加速しており、なかでも美容業界における新規参入や市場拡大への注目が高まっています。著しい経済成長と人口規模の大きさを背景に、高い市場ポテンシャルを有する東南アジア市場では、生活者が化粧品や美容関連商品を購入する際に、どのような情報を参考にしているのかを理解することが、市場参入や販路拡大を検討するうえで重要なポイントとなっています。
本記事では、東南アジア5カ国(マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム)を対象に、インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2025年実施)」をもとに、東南アジア生活者の美容情報の収集行動について考察していきます。
2.各国の美容情報の収集感度
まず、生活者がどの程度積極的に美容情報を集めているのかを見ていきます。
東アジア・東南アジア各国の美容価値観を比較したところ、「美容に関する情報を集めるのが好きだ」という項目で国ごとに大きな差異がみられました。
特に東南アジア5カ国では、日本・中国・韓国と比較して、「美容情報収集が好き」と回答する割合が高い傾向が確認されています。
背景として、東南アジア市場は日本・韓国などと比較すると、現在も美容市場の拡大フェーズにあることも影響していると考えられます。新ブランドの立ち上げや海外ブランドの流入が活発であり、生活者側でも美容情報を積極的に収集するだけでなく、「自分に合った化粧品を探し、使い分ける」「気に入った商品情報を周囲やSNSで共有する」といった行動傾向も比較的強くみられます。
一方、日本や韓国では美容市場が成熟していることから、既に自分に合うブランドや購買習慣が定着しており、美容情報の収集行動が日常化・ルーティン化している側面もあると考えられます。

図1:各国の美容価値観(複数選択)「美容に関する情報を集めるのが好きだ」項目を抜粋
(ベース:各国女性18~29歳)
出典:インテージGlobal Viewer (2025年)
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3.東南アジアの美容情報の収集手段
それでは、東南アジアの10・20代女性消費者は、具体的にどのような情報源を利用して美容情報を収集しているのでしょうか。

図2:各国の美容情報収集手段TOP5(ベース:各国女性18~29歳)
出典:インテージGlobal Viewer (2025年)
「東南アジア各国の美容情報収集手段」(図2)のデータを見ると、「テレビ(番組・CM)」は多くの国で主要な情報源として利用されています。テレビCMや番組タイアップは依然として有効な手段の一つと考えられます。
そのほかの情報源を見ると、東南アジアの10・20代女性は、主に「口コミ」「店頭」「オンライン」の3方向から美容情報を収集していることが分かります。
例えば、「友人・知人からの口コミ」や「インターネット通販サイトの口コミ」といった実際の使用者による口コミ情報、「店頭の商品パッケージ」「店頭の販売員(美容部員)」「店頭でもらうテスター」など店頭で直接得られる情報、さらに「インフルエンサーのSNS・動画・ライブ配信」や「メーカー/ブランド公式SNS・動画・ライブ配信」などオンライン上で発信される情報です。
特に10・20代女性では、SNSや動画プラットフォームを日常的に利用していることから、単なる広告よりも、レビュー動画や使用体験など「リアルな情報」への関心が高い傾向がみられます。一方で、店頭テスターや口コミなどオフライン接点も依然重視されており、複数チャネルを横断しながら美容情報を収集している様子がうかがえます。
4.東南アジアでは、どのようなオンラインプラットフォームが利用されているのか
店頭系・口コミ系の情報源については各国共通点も多く見られますが、オンラインプラットフォームの利用状況については、国・地域によって違いがあります。
まず、ECプラットフォームでは、Shopeeの利用率が非常に高いことが特徴です。
Shopeeは2015年にシンガポールで設立されたECプラットフォームで、現在では東南アジア全域を中心に展開しています。モバイルファースト設計、頻繁なセール施策、ライブコマース機能、レビュー投稿文化などが特徴であり、若年層を中心に高い利用率を誇っています。特にヘルス・ビューティーカテゴリーはShopee内でも主要カテゴリーの一つとなっています。
(SEA: e-commerce GMV by platform 2024| Statista)
(SEA: Shopee categories GMV by country 2025| Statista)
上:Shopee Vietnam「12.12」大型セール広告
下:Shopee Thailandのキャンペーン広告
また近年では、TikTok ShopやYouTube Shoppingなど、SNS・動画視聴とECが融合した「コンテンツコマース」も拡大しています。レビュー動画やライブ配信を視聴し、そのまま購入に至る行動も一般化しつつあります。
SNSについては、Instagram、Facebook、TikTok、YouTubeなどが広く利用されています。そのほか、日本でも利用者が増えているLemon8も東南アジアで一定の存在感を持っています。
Lemon8グローバル版
Lemon8はTiktokと同様にByteDanceの傘下で、美容専用アプリではなくライフスタイル系SNSで、美容・スキンケア関連投稿が多く、ビジュアル重視の情報収集プラットフォームとして利用されています。中国の「小紅書(RED)」に近い位置づけとして利用されている側面もあると考えられます。
5.まとめ
今回のインテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer」を用いた分析から、東南アジアの10・20代女性は、アジアの中でも美容情報収集への関心が比較的高いことが確認されました。
具体的な情報源としては、テレビや店頭接点に加え、口コミ、SNS、ECサイトなどオンラインチャネルの利用も目立っており、複数の情報源を横断しながら美容情報を収集している様子がうかがえます。特にSNS上では、インフルエンサーによるレビュー動画やライブ配信など、実際の使用感が分かるコンテンツへの接触も多いと考えられます。
こうした結果から、東南アジア市場における美容マーケティングでは、テレビ・店頭・SNS・ECなど複数チャネルを組み合わせた情報発信が、消費者の認知形成や興味喚起において重要になると考えられます。
また、単なる広告配信だけではなく、インフルエンサーを活用したPRや、「SNSで共有したくなる体験価値」を含めたコミュニケーション設計も、今後さらに重要性を増していくでしょう。






