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Last updatedcalendar_month2026/06/05海外インタビュー調査は「聞く」だけで終わらせない。手元データで消費者理解を深める方法 ―海外消費者の「発言の背景」を見える化

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1.はじめに

日本にいながら海外消費者へのインタビュー調査を実施する機会は増えています。一方で、「対象者の発言は聞けたが、結局どんな生活者なのか掴みきれない」「商品コンセプトに落とし込めるほど理解が深まらない」と感じることも少なくないのではないでしょうか。
海外調査では、言葉として聞き取れる情報だけでは、対象者の暮らしや価値観、発言の背景まで十分に捉えきれないことがあります。特にオンラインや会場でのインタビューでは、対象者が普段どのような空間で生活し、どのような物に囲まれ、どのような行動をしているのかが見えづらくなります。

本記事では、海外定性インタビュー調査において、対象者の言葉だけではなく、事前に持っておくビジュアルデータから対象者の「暮らし」を把握し、さらに現地生活者全体を把握するための定量ストックデータを組み合わせることで、消費者理解を深め、調査予算の効果を最大化する考え方を紹介します。

2.そもそも、なぜマーケティングに定性調査が必要なのか

(1)定量データだけでは「ターゲットの姿」までは見えにくい
マーケティング活動では、まず市場データや定量アンケートデータをもとにターゲット像を定めることが多いと思います。たとえば、「25〜35歳女性」「有職」「既婚子あり」「都市部在住」「一定以上の世帯収入」といった条件から、狙うべき層を定義することはできます。
しかし、このような属性情報だけでは、その人がどのような生活を送り、何を大切にし、どのような課題を解決したいと思っているのかまでは見えにくいものです。「どうなりたいと思っているのか」「どんな1日を過ごしているのか」「自社商品・サービスにお金を払うのは、何を解決したいからなのか」といった具体的な姿を理解するには、生活者の言葉や行動をさらに深く掘り下げる必要があります。

(2)定性調査は、提供価値を考えるための調査
そこで有効なのが「定性調査」です。定性調査の一つである定性インタビュー調査では、対象者に直接話を聞くことで、ターゲット像をより具体的にイメージしやすくなります。また、自社がターゲットにどのような価値を提供すべきかを考えるうえでも役立ちます。
逆に、この理解が不足していると、商品・ブランドとして何を提供するのかが曖昧になり、社内関係者の間でターゲット像のイメージが揃わず、メッセージが統一できなくなります。定性調査は、単に消費者の声を集めるための手段ではなく、「提供価値を定める」ための重要なプロセスなのです。

3.海外の定性インタビュー調査で起こりがちな3つの課題

ただし、海外調査では定性インタビュー調査だけでも難しさがあります。具体的にどのような課題が起こりやすいのでしょうか。ここでは、代表的な3つの課題を整理します。

課題①:リクルート(募集)した対象者がターゲット像とずれる
1つ目は、インタビューを実施するための募集対象者が、想定していたターゲット像とずれてしまうことです。
たとえば、募集条件として「健康意識の高い人」を設定し、スクリーニング票(募集した対象者の情報が一覧になったもの)上では健康意識が高そうに見えても、実際にインタビューをしてみると、想定していたほどではないというケースがあります。特に海外では、意識項目への回答がポジティブに寄りやすいため、「健康を意識していますか」と聞いたときに「はい」と答える人が多くなりがちです。
そのため、回答だけで対象者を判断するのではなく、実際の行動、使用アイテム、生活環境といった実態も踏まえてリクルートすることが重要になります。

課題②:「表面的な日本との違い」の理解にとどまる
2つ目は、インタビューで得られる理解が、表面的な日本との違いにとどまりやすいことです。
海外調査では、日本の当たり前と異なる情報が多く出てきます。そのため、まずその違いを理解することに時間を使いがちです。しかし、定性調査の本来の目的は、対象者自身も言語化しきれていないインサイトを深掘りすることです。
日本との違いを把握する段階で止まってしまうと、ターゲット生活者に提供すべき価値をシャープにするところまでたどり着きにくくなります。だからこそ、事前に現地生活者への理解を深め、仮説を持ったうえでインタビューに臨むことが重要です。

課題③:発言の背景にある「生活感」が見えにくい
3つ目は、発言の背景にある生活感が見えにくいことです。
オンラインや会場でのインタビューでは、対象者の生活環境やライフスタイルが見えにくくなります。対象者が「家で運動している」「夕食は子どもと食べている」と話しても、それがどのような場所で、どのような空間の中で行われているのかまでは、言葉だけでは想像しづらいものです。
特に海外では、日本と異なる住環境や生活習慣の中で暮らしているため、国内調査のように感覚的に発言の背景を補うことが難しくなります。対象者の言葉だけでは、具体的な暮らしや発言の真意を理解しきれない可能性があるのです。

4.解決策:定性インタビュー調査にビジュアルデータを組み込む

こうした課題に対して有効なのが、定性インタビュー調査にビジュアルデータを組み込むことです。
たとえば、「Consumer Life Panorama」というインテージのサービスでは、海外12カ国+日本の生活者の住環境や所有アイテムを立体的に捉えることができるビジュアルデータを保有しています。こうしたビジュアルデータがあると、対象者の実際の暮らしを「見る」ことができます。
ビジュアルデータから対象者の住環境や持ち物を俯瞰的に捉えられるため、特定のカテゴリーに直接関係する情報だけではなく、その人の生活背景や暮らし全体のイメージまで広げて理解しやすくなります。たとえば、食品・飲料カテゴリーの調査であっても、キッチンや冷蔵庫だけではなく、リビング・寝室・運動器具・ペット・植物などを見ることで、食生活の背景にある価値観や生活リズムを考える手がかりが得られます。

ビジュアルデータの活用ポイントは、主に3点あります。

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1点目は、対象者選定に使うことです。スクリーニング票だけでなく、実際の暮らしの様子をビジュアルデータで見て、ターゲット像に近い人を選定します。これにより、インタビューしたところ想定と違ったという「ターゲット像との乖離(はずれ)」を引く確率を下げることができます。

2点目は、事前インプット・仮説構築に使うことです。住環境や持ち物を事前に観察し、「気づき」「疑問」「日本との違いや、想定と異なる点」を洗い出すことで、インタビューフローの精度を高めることができます。

3点目は、インタビュー中の解釈に使うことです。対象者の家の中や持ち物を見ながら話を聞くことで、発言の具体や背景を掴みやすくなります。言葉だけでは曖昧だった生活シーンが、場所やアイテムと結びつくことで、より立体的に理解できるようになります。

5.ケーススタディ:タイの女性にとって「健康」とは何か

ここからは、タイ市場向けに乳酸菌飲料の商品開発を行う初期段階を想定したケーススタディを通じて、従来の海外調査単独での限界と、そこに手元のビジュアルデータや定量データを加えることで何が見えてくるのかを紹介します。

(1)ケーススタディ調査の前提

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このケースでは、大まかなターゲット像や活用するアセットは定まっているものの、健康をどのような提供価値で訴求するかは、これから検討する段階でした。調査目的は、タイのターゲット生活者の行動や意識を探ることで、自社商品の提供価値を定めるためのインサイトを得ることです。
対象者募集に関しては、居住エリア、年齢、子供有無、乳酸菌飲料を含め健康飲料の摂取状況、運動頻度などの条件を事前に定めて、通常のインタビューと同じアンケート形式で該当者を探します。結果は以下のように「健康意識が高めであろう」対象者を選定するに至りました。

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聴取項目は、1日の流れ、飲食、運動、休養・睡眠、衛生といった習慣・行動・意識に加え、ライフスタイルや生活価値観、本人にとっての健康とはどのような状態かまで幅広く設定されています。

(2)言葉の情報から見えた健康観

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まず、インタビューから見えたのは、対象者にとっての健康が「病気にならないこと」と「見た目の美しさ」であるということです。過去に体調を崩した経験や、胃腸の不調、体型への悩みなどから、病気や不調のない状態であること、そして自分に自信を持てる見た目を維持することが重視されていました。

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食事面からの健康では、「砂糖・塩分・脂肪分を避ける」「炭水化物を摂りすぎない」「タンパク質を積極的に摂る」といったキーワードが出ています。これにより、「身体、特に胃腸の不調を避ける」「見た目・体型の美しさ」「避けたい/摂りたい栄養素」といった基本的な機能ベネフィットは見えてきます。

(3)しかし、商品コンセプトに落とすには、まだ足りない

しかし、これだけでは商品コンセプトに落とし込むにはまだ情報が足りません。機能ベネフィットは見えても、どんなシーンで喫食を訴求すべきか、どんな情緒ベネフィットを訴求すべきかを考えるには、ターゲット生活者の健康・生活価値観・ライフスタイルの具体的なイメージが必要です。つまり、食事面からの健康だけでなく、生活全体を理解する必要があります。

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6.ビジュアルデータで見えた「暮らし」と「価値観」

そこで、ビジュアルデータが役立ちます。手元にビジュアルデータがあると、対象者の言葉を聞く前から、その人がどのような空間で生活しているのか、どのような物に囲まれているのかを把握できます。さらに、その情報をもとに仮説を立て、インタビューで深掘りすることができます。
今度は同じケーススタディにビジュアルデータを組み込むとどう変化するかを見ていきます。

(1)対象者募集・選定:「ターゲット像との乖離(はずれ)」を引く確率  を大幅に減らす

■健康意識を「回答」ではなく「暮らし」から見る
まずはインタビューが始まる前に、誰をインタビューに呼ぶかの判断材料の解析度が大幅にあがります。
例えばビジュアルデータから1人目の31歳女性は、自宅のダイニングテーブル上にはサプリメント類が置かれており、2階にはフィットネスバイクも確認できました。こうした住環境や持ち物から、健康に関する行動を日常的に実践しているイメージが、ビジュアルデータを見る前よりも想像しやすくなったのではないでしょうか。

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2人目の38歳女性は、自宅に自転車・バドミントン・フィットネスバイクがあり、キッチンには調理器具や調味料も揃っていました。運動や食生活について深掘りできそうな対象者であることが、ビジュアルデータを通して事前に見えてきます。
このように、スクリーニング票の回答だけではなく、実際の暮らしの様子を見ることで、ターゲットイメージに近い対象者を選びやすくなります。健康意識を「回答」だけで判断するのではなく、「暮らし」から確認できることが、ビジュアルデータを使う大きな利点です。

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(2)事前仮説:限られた調査時間で最大限のファインディングを得る

■事前仮説の充実さにより、インタビューで分かる内容の深さが変わる
ビジュアルデータは、対象者の募集・選定だけではなく、インタビュー前の仮説構築にも役立ちます。限られたインタビュー時間でより深いファインディングを得るには、事前に何を確認すべきかを明確にしておくことが重要です。
例えば、38歳女性の自宅では、ベランダや玄関先に多くの植物があることから、植物がリラックスの一つになっているのではないかという仮説を立てました。インタビューでは、コロナ禍で始めた趣味が継続しており、サボテンの花が咲いたときに小さな喜びや達成感を感じていることが分かりました。

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さらに、リビングダイニングにフィットネスバイクが置かれていることから、家での運動が習慣化しているのではないかという仮説も立てました。実際に話を聞くと、フィットネスバイクだけでなく、フラフープやNintendo Switchなども使い、その日の気分に合わせて運動していること、子どもと一緒に運動することもあることが分かりました。

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一方、31歳女性の自宅には円卓のあるダイニングがありました。そこから、「家族で食事を囲む時間を重視しているのではないか」という仮説を立てることができます。しかし、実際にインタビューで深掘りすると、家族全員で毎日円卓を囲んでいるわけではなく、時間も食べるものも家族でバラバラであることが分かりました。親の代から住んでいる家の伝統的な空間と、実際の暮らし方にはギャップがあり、そこから個人を尊重する現代的なライフスタイルが見えてきます。

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また、この対象者の家にはキッチンが2つありました。事前にそのことが分かっていたため、インタビューでは2つのキッチンの使い分けを確認しました。その結果、普段はデリバリーが多く、簡単な準備や片付けはダイニングキッチンで済ませ、食材を買ってきて時間をかけて調理するときだけ奥のキッチンを使うことが分かりました。キッチンの使い方を聞くことで、自炊と中食をどのように使い分けているのかが、よりリアルに理解できます。

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■インタビュー中:発言の背景を「場所」と一緒に理解する

ビジュアルデータは、インタビュー中の理解にも役立ちます。対象者の発言を、実際の場所や物と結びつけて聞くことで、生活シーンが具体的にイメージしやすくなります。
たとえば、38歳女性に食事場所を見ながら話を聞くと、夕食はテレビ前の低いテーブルで娘と一緒に食べていることが分かりました。背後にはダイニングテーブルがありますが、テレビを見ながら食べるためにリビング側の低いテーブルを使っています。この場面を見ることで、「子どもに食べさせなきゃ」という義務的な食事時間というより、自分もテレビを見ながらリラックスして食べる時間であることが想像しやすくなります。

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また、31歳女性の睡眠に関する発言では、子どもが階段から落ちると危ないと親が言うため、子どもと自分は1階のリビングにベビーゲートやベッドを設置して寝ているという話がありました。言葉だけでは想像しづらい状況を、階段や1階の部屋の写真を見ることで、小さな子どもが上り下りするには不安な吹き抜け構造であること、ベビーゲートを付けづらいこと、1階の部屋が明るく睡眠に向きにくい環境であることが具体的に理解できます。

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このように、発言を場所と一緒に理解することで、対象者の暮らしや気持ちがより立体的に見えてきます。

7.ただし、ビジュアルデータだけでも全体像が掴めないことがある

ここまで見てきたように、ビジュアルデータを使うと、対象者一人ひとりの暮らしは非常に具体的に理解できるようになります。一方で、その生活スタイルや価値観が、現地市場全体の中でどの程度よく見られるものなのか、あるいは特定の対象者に限られるものなのかは、ビジュアルデータだけでは判断しづらいこともあります。
そこで有効なのが、定量ストックデータとの組み合わせです。
今回のケースでは、インテージの「Global Viewer」というアンケート定量ストックデータベースも事前インプットに活用しています。タイ生活者の食や健康に関する実態・意識を量的に把握し、日本との違いを理解したうえで、インタビューで深掘りすべきポイントを洗い出しました。

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Global Viewer 詳細はこちら

たとえば、タイでは日本よりも「親・祖父母」や「兄弟姉妹」との同居が多く、多世代世帯での暮らしも見られることが、定量ストックデータで示されています。これにより、親と同居している対象者をケースに含めることの意味づけがしやすくなります。

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また、Global Viewerのデータから、タイの子あり女性は日本より有職率が高く、自営業で働く人も多いことが示されています。そこから、「仕事・子育て・家事のバランスの取り方が、日本より自由度が高いのではないか」という仮説を立て、子どもの食事へのコミット具合を確認する質問を追加しました。

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健康意識についても、タイでは「手軽に必要な栄養素を摂れる」「体の内側からの健康ケア」など、体に良いものをプラスで摂取する意向が高く、「ストレスをためない」ことへの意識も高いことが示されています。そこから、リラックスやストレスをためない工夫を深掘りする設計につなげています。

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定量ストックデータは、個別の暮らしを市場全体の文脈に位置づけるための「地ならし」として機能します。ビジュアルデータで見えた生活シーンを、定量ストックデータで補助的に確認することで、より納得感のある仮説設計や示唆化が可能になります。

8.定性・ビジュアル・定量を組み合わせて見えた示唆

では、こうした定性インタビュー調査、ビジュアルデータ、定量ストックデータを組み合わせることで、どのような示唆が得られたのでしょうか。今回のケースでは、タイの子あり女性について、大きく2つのファインディングが見えてきました。

ファインディング①:タイの子あり女性は、家族の健康管理まで気負わない
1つ目は、タイの子あり女性が、家族全員の健康管理まで気負っているわけではないということです。

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仕事、子育て、両親の面倒など役割が多い現代のバンコクの子あり女性は、家族の好みまで考慮しながら食事の面倒を見るという考えを持っていない人も多くいます。家族それぞれが食べたいものを食べるスタイルであり、デリバリーのチョイスが豊富なことも影響している可能性があります。
たとえば、31歳女性は、両親とは食べる時間もメニューもバラバラで、自分は夫と食べたいものをデリバリーで注文していました。子どもの食事についても、同居の母やベビーシッターが関わっており、母親本人がすべてを担っているわけではありません。

38歳女性も、自分の夕食はClean foodを意識した野菜・タンパク質中心の食事を用意する一方で、子どもはそれを食べないため、子どもの好きなものをデリバリーで注文していました。夫も好きなものを買ってきたり作ったりしており、家族それぞれが食べたいものを食べるスタイルです。
これは、ビジュアルデータで見えた食事場所やキッチンの使い方だけでなく、タイでは外食・デリバリー・テイクアウトの利用頻度が高く、平日夕食の自炊頻度が日本より低いという定量ストックデータとも接続して理解できます。

ファインディング②:タイの子あり女性にとって、自分のための時間・空間は大切
2つ目は、タイの子あり女性にとって、自分のための時間・空間が大切であるということです。

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仕事や子育てで忙しい中でも、自分だけの時間や空間を作って休息・リラックスしていることが見えてきました。犬、月1回のマッサージ、家での運動、夫と分けた寝室などが、リラックスやエネルギーチャージの手段になっています。
31歳女性は、両親との同居によるストレスや、睡眠に向きにくい環境で寝ているという課題を抱えながらも、飼っている犬や月1回のマッサージをリラックス時間として確保していました。
38歳女性は、家で運動することがリラックス・リフレッシュの時間になっていました。夫がいるときはリビングでは運動しづらいため、2階の寝室で運動することもあり、寝室を自分だけの空間として使っていました。
この示唆も、タイの子あり女性では「ストレスをためない」ことへの意識が高いという定量データを踏まえることで、個別対象者のエピソードにとどまらず、より市場理解として位置づけやすくなります。

9.数百万円規模の海外調査予算を最大限に活かすために

海外インタビュー調査では、対象者に話を聞くだけでは不十分です。誰に聞くか、何を聞くか、発言をどう解釈するかによって、調査から得られる示唆の質は大きく変わります。
今回のケースでも、言葉の情報だけからは、「身体、特に胃腸の不調を避ける」「見た目・体型の美しさ」「避けたい/摂りたい栄養素」といった基本的な機能ベネフィットは見えてきました。しかし、それだけでは商品コンセプトとして、どのような喫食シーンや情緒ベネフィットを訴求すべきかまでは十分に見えてきません。
そこにビジュアルデータを組み合わせることで、対象者の価値観やライフスタイルまでが理解しやすくなります。今回のケースでは、喫食シーンとして「自分のためのリラックス時間に」、情緒ベネフィットとして「自分自身の健康のために」といった方向性が導かれました。子あり女性をターゲットにすると「家族みんなの健康のために」という訴求が出やすいかもしれませんが、実際の暮らしを見ると、彼女たちには「自分自身の健康のために」という訴求の方が響く可能性が見えてきます。
さらに、定量ストックデータを組み合わせることで、個別事例を市場全体の文脈に位置づけ、仮説の妥当性や深掘りすべき論点を整理できます。

定性インタビュー調査は、生活者の言葉や意識を深掘りするために有効です。
ビジュアルデータは、その言葉の背景にある暮らしや生活シーンを具体化します。
定量ストックデータは、個別の発見を市場全体の中でどう捉えるべきかを考える助けになります。

この3つを組み合わせることで、海外調査を「実施して終わり」にせず、商品コンセプトや提供価値の検討に活用しやすい示唆へとつなげることができます。数百万円規模の調査予算を投じるのであれば、単にインタビューを行うだけではなく、対象者の暮らしを見て、事前に仮説を立て、発言の背景まで解釈する設計が重要です。
「定性インタビュー調査で生活者の言葉を深掘りし、ビジュアルデータでその背景にある暮らしを具体的に捉え、定量ストックデータで市場全体の文脈を補う」。
この組み合わせによって、ターゲット生活者の価値観やライフスタイルまで理解しやすくなり、商品コンセプトや提供価値に落とし込める示唆を得やすくなります。結果として、海外調査予算の効果を最大限に高めることにつながるのです。



  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    高浜 理沙

    インテージ グローバル事業本部 グローバル事業推進部
    高浜 理沙

    2013年 株式会社インテージ入社。
    日系企業の海外マーケティング・リサーチプロジェクトの担当として、主にFMCGメーカー(化粧品、ベビー用品、食品・飲料等)のアジア・欧米でのマーケティング・リサーチ支援に従事。
    2019年より現職にて、日系企業の海外マーケティング・リサーチのためのソリューション開発や、セミナー等の対外発信を行う。

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