
海外市場では、同じ商品やサービスでも国によって評価ポイントが大きく異なります。
韓国では「速さ」が重視され、中国では「結果までの最短距離」が求められます。一方で、インドネシアでは「みんなで分ける文化」、オーストラリアでは「自然との共存」が消費行動にも影響しています。
本記事では、「Global Market Surfer」で紹介した12カ国の国民性を比較しながら、その特徴とマーケティングのヒントを整理します。
現地に暮らすリサーチャーだからこそ気づける生活者の価値観や、実際に現地で生活していなければ見えてこない消費行動の背景にも注目しながら解説します。
目次
1.一覧で比較!世界12カ国の国民性マップ
はじめに、各国の国民性は、統計データだけでは見えてこない生活者の価値観や日常行動にも表れています。以下の表は、現地在住リサーチャーが実際の暮らしのなかで感じた生活者の特徴をもとに整理したものです。

2.各国の国民性から見えてくる4タイプ
本項で12カ国の国民性を詳しく見ていきます。多様な価値観が存在するなかでも、それぞれの国民性を見ていくと、以下のとおり大きく4つのタイプに分けることが出来ます。
この4つのタイプごとに、12カ国の国民性の詳細とともにマーケティングのヒントを紹介します。
●スピード・成長志向型
●関係性・コミュニティ重視型
●自己表現・ライフスタイル重視型
●実用・問題解決型
(1)スピード・成長志向型:韓国、中国、台湾、ベトナム
【韓国:「パルリパルリ」が生むスピード社会】
<ポイント>
• スピード重視の価値観
• キャッシュレス社会
• 超高速配送
• 効率を追求するサービス
• 高い競争意識
<解説>
韓国では「パルリパルリ(早く、早く)」という言葉が日常的に使われています。単なるせっかちな性格を表す言葉ではなく、「早く結果を出すこと」に価値を置く社会全体の価値観を象徴する言葉です。朝鮮戦争後の急速な経済成長の過程で形成されたこの文化は、現在の生活様式や消費行動にも大きな影響を与えています。
その象徴が、キャッシュレス決済やキオスクの普及です。韓国では現金で支払うこと自体が非効率と考えられる場面も多く、注文・決済・受け取りまでを最短化するシステムが定着しています。また、Coupang(クーパン)の「ロケット配送」に代表される翌朝配送も生活インフラの一部になっています。さらに、強い競争意識から「平均以上でありたい」という心理も見られ、ファッションや持ち物にも流行が集中する傾向があります。
<マーケティングのヒント>
韓国では「すぐ使える」「すぐ届く」「すぐ理解できる」が大きな価値になります。商品そのものだけではなく、購入体験全体のスピード設計が重要です。

キオスク社会やロケット配送の普及、そして韓国人の競争意識がファッションや消費行動に与える影響については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/韓国:せっかちな国民性から生まれたスピード重視の「パルリパルリ文化」
【中国:結果までの距離を縮める社会】
<ポイント>
• 結果最短化志向
• スピード重視の生活
• 即時配送文化
• 電動バイク社会
• 自動化・省力化ニーズ
<解説>
中国の都市部では、「効率化」よりさらに一歩進んだ「結果最短化」という価値観が広がっています。重要なのはプロセスではなく、どれだけ早く目的を達成できるかです。その背景には激しい競争環境があり、時間そのものが重要な資源として扱われています。
例えば、デリバリーサービスでは遅延補償や優先配送が一般化しています。また、都市部では電動バイクが日常の足として浸透し、移動時間の短縮に貢献しています。さらに家電市場では、自動調理家電やAI搭載家電など、人が考える時間や待つ時間を削減する商品が人気を集めています。中国では「便利」よりも、「どれだけ早く結果が得られるか」が評価される傾向があります。
<マーケティングのヒント>
中国市場では機能説明よりも、「時間をどれだけ短縮できるか」を具体的に伝える方が響きやすい傾向があります。

電動バイクが社会インフラになった背景や、超高速デリバリー、自動化家電が支持される理由については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/中国:「結果最短化」がつくる社会と消費行動
【台湾:穏やかさと効率性を両立する人々】
<ポイント>
• 親切で穏やかな気質
• 「阿莎力(アッサーリー)」による即断即決
• 多機能商品への支持
• 時短ニーズの高さ
• 効率と満足感の両立
<解説>
台湾は「慢慢來(マンマンライ:ゆっくりでいいよ)」や「沒關係(メイグァンシー:大丈夫)」という言葉が日常に根付く穏やかな社会です。しかしその一方で、「阿莎力(アッサーリー:効率よく、素早く進めること)」という言葉に象徴されるように、効率的かつ素早い意思決定を好む一面も持っています。
その価値観は生活用品にも反映されています。台湾の家庭で長年愛されている大同電鍋は、炊飯だけではなく蒸す・煮る・温めるといった複数の調理を一台でこなせる家電です。また、台湾名物の手搖飲(ショウヤオイン:ドリンクスタンド)では、タピオカや餅などを加えた「咀嚼系ドリンク」が人気を集めています。飲むことと食べることを一度に満たし、短時間で満足感を得られることが評価されているのです。
<マーケティングのヒント>
台湾では、単なる時短ではなく「時短しながら満足感も得られる」ことが重要です。一台多役や複数価値の提供が支持されやすい市場です。
※動画のため、再生時の音量にご注意ください。
大同電鍋がロングセラーであり続ける理由や、手搖飲文化を支える“咀嚼系ドリンク”の進化については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/台湾:穏やかさの裏にある“速さ”「阿莎力(アッサーリー)」が支える効率消費のかたち
【ベトナム:不屈の戦勝国マインドが生む上昇志向】
<ポイント>
• 不屈の戦勝国マインド
• 高い自己肯定感
• 新しいものへの適応力
• 体験価値重視
• 外来文化と伝統文化の融合
<解説>
ベトナムを理解する上で欠かせないのが「戦勝国マインド」です。これは単なる愛国心ではなく、自分たちなら発展できるという強い自己肯定感と楽観主義につながっています。この価値観は日常生活や消費行動にも表れており、新しいものへの適応が非常に速いことが特徴です。ホーチミン市メトロの開業や自動車・バイクのEV化の流れも、利便性が理解されると短期間で受け入れられていきました。
また、ベトナムでは単に品質が高いだけでは差別化が難しくなっています。高所得層や若者層を中心に、「どんな体験ができるか」が重視されるようになり、レストランやファッションでもストーリー性や特別感が求められています。さらに韓国カルチャーの影響を取り込みながら、伝統衣装アオザイを現代的に進化させるなど、自国文化を再解釈する柔軟性も見られます。
<マーケティングのヒント>
ベトナムでは商品そのものではなく、「どんな新しい体験ができるか」「どんな自分になれるか」を含めた価値提案が重要になります。

ベトナム人の不屈のプライドや、韓国トレンドを取り込みながら進化する若者文化、アオザイの変化については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/ベトナム:戦勝国マインドが加速させる、ポジティブな上昇志向
(2)関係性・コミュニティ重視型:インドネシア、フィリピン、ブラジル
【インドネシア:シェア文化が支える暮らし】
<ポイント>
• 調和を重んじる価値観
• Gotong Royong(ゴトン・ロヨン:助け合い、支え合い)
• 家族・コミュニティ重視
• シェア前提の消費
• 関係性重視の意思決定
<解説>
インドネシアには「Gotong Royong(助け合い・支え合い)」という考え方があります。多民族・多宗教国家であるインドネシアでは、人との調和を重視しながら暮らしてきた歴史があります。そのため、消費行動も個人単位ではなく、家族やコミュニティを前提としていることが特徴です。
日常の食事でも、大皿料理をみんなで取り分けて食べる文化が一般的です。パダン料理のレストランでは、多数の料理が並び、その中から好きなものをシェアしながら食べるスタイルが定着しています。また、職場や学校でも食べ物を分け合う習慣が根付いており、「良いものはみんなで共有する」という価値観が日常に溶け込んでいます。
<マーケティングのヒント>
インドネシアでは個人向けの商品よりも、「家族で使う」「みんなで楽しむ」といった文脈が共感を得やすい傾向があります。

出典:記事執筆者が撮影
パダン料理に象徴されるシェア文化や、食卓から住まいまで広がるGotong Royongの価値観については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/インドネシア:「みんなで分ける」が前提。“シェア文化”がつくる人との距離感
【フィリピン:柔軟さが日常を支える】
<ポイント>
• Bahala na(バハラ・ナ:なるようになる)精神
• 変化への柔軟な適応
• 助け合い文化
• SUKIによる信頼関係
• 利便性を求める生活習慣
<解説>
フィリピン人の柔軟さを象徴する言葉が「Bahala na(なるようになる)」です。これは単なる楽観主義ではなく、不確実な環境の中でも生活を成立させるための現実的な姿勢でもあります。政治や経済、災害などさまざまな変化を経験してきた歴史の中で育まれてきた価値観です。
また、フィリピンでは「SUKI」と呼ばれる信頼関係も重要です。なじみの店やドライバーとの関係を大切にし、互いに融通を利かせながら生活しています。近年は配車アプリやデリバリーサービスが普及していますが、その背景には「信頼できる相手を確保したい」という従来からの価値観が存在しています。さらに、マッサージや美容サービスを自宅に呼ぶホームサービス文化も広がっています。
<マーケティングのヒント>
フィリピンでは利便性だけではなく、「信頼できそうか」という安心感も消費者の意思決定に大きく影響します。

写真:信号のない大きな幹線道路。
台の上に手信号で、高速道路や下道から入ってくる車を捌いているトラフィックインフォーサー。
軽快なダンスで楽しませてくれる時もある。
SUKI文化やホームサービスが発達した背景、フィリピン人の柔軟な消費スタイルについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/フィリピン:“なんとかなる”で回る社会、柔軟さが支える生活と消費
【ブラジル:人とのつながりを祝うフェスタ文化】
<ポイント>
• 強い家族愛
• フレンドリーな気質
• 会話を重視
• フェスタ文化
• 多様性とレジリエンス(回復力)
<解説>
ブラジルでは、人とのつながりが生活の中心にあります。家族や友人との会話、集まり、パーティーは単なる娯楽ではなく、人々の関係性を深める重要な時間です。血縁だけでなく、信頼できる仲間も「家族」として捉える考え方が広く浸透しています。
こうした価値観は「フェスタ文化」として表れており、誕生日会から企業イベント、そしてカーニバルまで、さまざまな集まりが生活の中に存在します。企業のマーケティング活動も、この高揚感や一体感と強く結びついています。近年では没入型の体験やサステナブルな演出を取り入れたイベントも注目を集めています。
<マーケティングのヒント>
ブラジルでは機能訴求だけでは不十分です。「楽しさ」「一体感」「喜び」といった感情価値をどう届けるかが重要になります。

自宅での小規模な誕生日会
カーニバルを活用したマーケティング事例や、ブラジル人の家族観、フェスタ文化の背景については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/ブラジル:多様性とレジリエンス(回復力)から生まれる、陽気でフレンドリーな国民性
(3)自己表現・ライフスタイル重視型:タイ、アメリカ、オーストラリア
【タイ:おおらかさの裏にある「見られ方」への意識】
<ポイント>
• 「マイペンライ(大丈夫、気にしなくていいよ)」に象徴される寛容さ
• 外見や持ち物を重視
• 高見え商品の人気
• LGBTQ+への高い受容性
<解説>
タイ人は「マイペンライ(大丈夫、気にしなくていいよ)」という言葉に象徴されるように、おおらかで寛容な国民性を持つことで知られています。その一方で、現地で生活していると、周囲からどう見られるかを意識する一面も見えてきます。タイでは持ち物や服装が社会的地位を表すものとして認識されることがあり、高級車やブランドバッグに関心を持つ人も少なくありません。特に若年層や中間層の間では、本物のラグジュアリーブランドではなくても「高見え」する商品や、入手困難で話題性のある商品が人気を集めています。
また、タイはLGBTQ+への受容度が高い国としても知られています。BL・GLドラマの俳優やインフルエンサーは若者に大きな影響力を持ち、化粧品や飲料、通信サービスなど幅広い広告に起用されています。トレンドやビジュアル訴求の強さは、タイ市場を理解する上で欠かせないポイントです。
<マーケティングのヒント>
タイでは機能や品質だけでなく、「自分をどう見せるか」「SNSでどう共有されるか」という自己表現価値が購買行動に大きく影響します。

タイ人がブランドバッグやファッションアイテムに関心を持つ理由や、LGBTQ+インフルエンサーが若年層の消費行動に与える影響については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/タイ:おおらかで寛容な性格のタイ人の意外な一面
【アメリカ:Visible Wellnessがつくる消費文化】
<ポイント>
• 健康の可視化
• 自己選択の尊重
• ウェルネス志向
• ライフスタイル消費
• 自分らしさの表現
<解説>
アメリカ・ロサンゼルスでは「Visible Wellness(見える健康)」という価値観が浸透しています。これは健康そのものではなく、「健康的なライフスタイルを送っていることが見える状態」に価値を見出す考え方です。
高級オーガニックスーパーのErewhonや、コールドプレスジュース、アスレジャーファッションの人気はその象徴です。重要なのは商品ではなく、その商品を選ぶことでどのようなライフスタイルを表現できるかです。また、多様な価値観が共存する社会であるため、自分に合った選択を尊重する文化も根付いています。
<マーケティングのヒント>
アメリカ・ロサンゼルスでは商品の機能説明だけでなく、「その商品を選ぶことで、どんな自分になれるか」を提示することが重要です。

In-N-Out
出典: IN-N-OUT公式サイト
Erewhonの人気の背景や、アスレジャー文化、Clean Eatingが日常に浸透している理由については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/アメリカ: “見える健康”が映し出す、LA流ライフスタイル消費のリアル
【オーストラリア:仲間意識が根付く共存社会】
<ポイント>
• 仲間意識(Mateship:マイトシップ)
• 人と自然の共存
• 環境配慮意識
• コミュニティ志向
• サステナブル消費
<解説>
オーストラリアの国民性を語る上で欠かせないのが「Mateship(マイトシップ)」です。仲間意識を意味する言葉ですが、単なる友情ではなく、人や自然との共存を前提とした価値観として浸透しています。
この考え方は環境意識にも表れています。サーフィンやダイビングを楽しむ人々は、同時に海を守ることも重視しています。そのため、リーフフレンドリーの日焼け止めや環境配慮型洗剤が生活に浸透しています。消費者は商品そのものだけでなく、「その商品が、自然や地域社会にどのような影響を与えるのか」にも関心を持っています。
<マーケティングのヒント>
オーストラリアでは、「誰かのため」「自然のため」という視点が共感を生みやすく、企業姿勢そのものも重要な評価対象になります。

画像:記事筆者の知人撮影
リーフフレンドリー商品の背景にある価値観や、環境配慮型消費が根付く理由については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/オーストラリア:マイトシップ(mateship)に根ざした国民性と共存型ライフスタイル
(4)実用・問題解決型:インド、マレーシア
【インド:ジュガードという問題解決力】
<ポイント>
• 「何とかする」発想
• 限られた環境への適応
• 人脈の活用
• 実用性重視
• 現実解を求める消費
<解説>
インドを理解するうえで欠かせないキーワードが「ジュガード」です。これは「工夫して何とかする」という意味を持つ言葉で、不完全な環境でも前に進むための思考法を指します。単なる節約術ではなく、インド社会全体に根付いた価値観です。
その発想は製品開発から日常生活まで幅広く見られます。例えば、世界一安い自動車として話題になったTata Nanoや、電気を使わない冷蔵庫などは、「理想」ではなく「現実的な課題解決」を優先した例です。また、人脈を活用して問題を解決する場面も多く、人と人とのつながりそのものが、問題解決の手段として機能しています。
<マーケティングのヒント>
インドでは高機能や高級感よりも、「実際に役立つか」「現実の課題を解決できるか」が重要な評価基準になります。

ジュガードの精神がどのように商品開発やデジタルサービスに反映されているのかについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/インド:“何とかする力”「ジュガード」が生む適応型社会
【マレーシア:新しいものを受け入れながら伝統も大切にする】
<ポイント>
• 進取の気質
• 多民族社会
• 一年に4回訪れる「お正月」
• 行事を楽しむ文化
<解説>
マレーシアは多民族・多宗教国家であり、価値観の多様性が社会の大きな特徴です。その一方で、新しいサービスやビジネスを受け入れる柔軟さも持っています。AirAsiaやGrabの創業者を生み出した土壌にも、その進取性を見ることができます。消費者も新しいサービスへの関心が高く、良いと思ったものを積極的に受け入れる傾向があります。
しかし、単なる新しさだけが重視されるわけではありません。中国正月やヒンドゥー教の祝日(ディーパヴァリ)、ハリラヤ(断食明け大祭)、クリスマスなど多様な文化や宗教行事が年間を通じて行われており、人々はそれらを楽しみながら受け継いでいます。ショッピングモールの装飾やイベントは季節ごとに大きく変化し、多くの来場者を集めています。こうした行事は単なるお祭りではなく、人々の帰属意識や関係性を確認する重要な機会でもあります。
<マーケティングのヒント>
マレーシアでは、新しさへの期待と伝統文化への敬意を両立させることが重要です。季節行事や宗教イベントは大きな需要創出の機会になります。

写真:一大帰省シーズンのハリラヤの装飾は「ふるさと」のイメージ
中国正月やハリラヤなどが消費行動に与える影響、多民族国家ならではの季節イベント文化については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事/マレーシア:進取の気質と、楽しみつつ伝統を受け継ぐバランス感覚
3.まとめ:4タイプの考察
これまで紹介したように、12カ国それぞれに国民性がありました。その背景には、各国の歴史や環境が影響していることもあり、国民性を一言で表すことは難しく、また同じ国の中にも多様な価値観が存在します。
しかし、現地で生活するリサーチャーの視点から見えてくる共通点を整理すると、各国の生活者は大きく4つのタイプに分類できることが見えてきました。
最後に、4タイプそれぞれの共通点を掘り下げます。そこから見えてくる共通項や購買行動も、製品開発やマーケティングの一助になれば幸いです。
(1) スピード・成長志向型:韓国、中国、台湾、ベトナム
この4カ国を比較すると、「時間を節約したい」「早く結果を得たい」という共通点が見えてきます。韓国にはパルリパルリ文化、中国には結果最短化、台湾には阿莎力、ベトナムには変化を前向きに受け入れる上昇志向があります。
興味深いのは、これらの国や地域がいずれも近年まで急速な経済成長や社会変化を経験してきたことです。
韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる高度成長を経験し、中国も改革開放以降に急成長しました。台湾は輸出産業とIT産業の発展を通じて成長し、ベトナムも現在まさに経済発展の途上にあります。社会全体が短期間で大きく変化してきた経験が、「速く動き、変化に適応することは良いことだ」という価値観につながっているのかもしれません。
一方で、日本も同じ東アジアに位置しますが、今回の分類に入れていません。
日本は高度成長をすでに経験した成熟社会であり、「速さ」よりも「品質」「正確性」「失敗しないこと」に強みを持っています。韓国・中国・台湾・ベトナムが「まず動いて改善する」傾向があるとすれば、日本は「十分に準備してから動く」傾向が比較的強いと言えるでしょう。
(2)関係性・コミュニティ重視型:インドネシア、フィリピン、ブラジル
この3カ国は、人とのつながりが消費行動の中心にあります。
インドネシアには「Gotong Royong(助け合い)」、フィリピンには「SUKI文化」、ブラジルには「フェスタ文化」があります。名前は違いますが、いずれも「信頼できる人との関係性」を大切にする社会です。
3カ国に共通しているのは、「家族との結びつきが強い」「人との直接的なコミュニケーションを重視する」「食事やイベントを共有する文化がある」という点です。
また、これらの国々は気候的に屋外活動や人との交流が活発で、多世代同居も比較的多く見られます。欧米や東アジアに比べると、「個人」より「コミュニティ」の影響力が大きい社会と言えるかもしれません。
そのため、商品スペックだけでなく、「誰が薦めているか」「誰と一緒に使うか」「共感できるか」が購買行動に大きな影響を与えています。
(3)自己表現・ライフスタイル重視型:タイ、アメリカ、オーストラリア
この3カ国は一見すると共通点が少ないように感じられますが、「商品を通じて自分らしさを表現する」という点では非常によく似ています。タイではファッションや持ち物が自己表現の手段になり、アメリカ・ロサンゼルスではVisible Wellnessという考え方が存在します。オーストラリアでは環境配慮や自然との共存がライフスタイルの一部として重視されています。
この3カ国に共通するのは、「機能」よりも「価値観」を買う、という傾向です。
例えば、同じバッグでもタイでは「どう見られるか」が重要になり、アメリカ・ロサンゼルスでは「どんなライフスタイルを表現するか」が重視されます。オーストラリアでは「その商品が社会や自然にどう貢献するか」が評価の対象になります。
経済的にある程度選択肢がある社会ほど、「何を買うか」から「なぜそれを選ぶか」へと消費行動が移行していく傾向があります。このグループはその特徴が特に表れていると言えそうです。
(4)実用・問題解決型:インド、マレーシア
この2カ国は、一見すると共通点が少ないように見えますが、「現実の課題に柔軟に対応する」という点で似ています。インドでは「ジュガード」という考え方が社会に浸透しており、限られた条件の中で最適解を見つけることが重視されています。一方のマレーシアも、多民族・多宗教社会の中で異なる価値観を調整しながら共存してきました。
さまざまな文化や習慣が混在する環境では、「理想論」よりも「実際に機能する方法」が重視されやすくなります。
興味深いのは、両国とも「多様性」が社会の前提になっていることです。
価値観や生活様式が一つではない社会では、正解が一つではありません。そのため、「柔軟な対応」「実用性」「コストパフォーマンス」「問題解決力」が高く評価される傾向があります。
消費者も「理想的かどうか」より、「自分の課題を解決してくれるか」を重視しやすい市場と言えるでしょう。





