記事詳細

Last updatedcalendar_month2026/10/29日本食品を「買いたい」人が多いタイ。実際に選ばれるための条件とは?

images


1.はじめに

「日本の商品だから売れる時代ではない。」
海外市場向けの商品を扱う中で、このような言葉を耳にすることが増えました。現地のニーズに合わせることの重要性は、既に多くの企業で認識されています。
一方、日系企業の進出が多く、日本製品を購入する市場がそれなりの規模を有するタイでは、インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2025年実施)」によると、日本の加工食品を「非常に買いたい」「買いたい」と回答した人が合計72.4%に上ります。アジア11カ国・地域で比較すると、フィリピン、香港に次ぐ3位です。日本の加工食品への購入意向は、アジアの中でも高い水準にあると言えます。

各国における日本加工食品の購入意向

図1:各国における日本加工食品の購入意向(ベース:18歳~64歳男女)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

海外生活者データで、意思決定をスマートに加速
Global Viewer

インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリーに関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。

images

では、日本の加工食品への購入意向が高ければ、店頭に並ぶ日本の商品も選ばれると考えて良いのでしょうか。本記事では、タイの食品選びと家庭の食卓に関するデータから、商品が選ばれるために確認すべき視点を考えます。

2.購入意向が高くても、それだけで商品が選ばれるとは限らない

食品を実際に購入するとき、タイの生活者は何を重視しているのでしょうか。
インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2025年実施)」の即席食品の購入時重視点を見ると、「味・風味が良い」が32.9%で最も高くなっています。続いて、「高品質」が26.0%、「調理が簡単」が24.5%、「普通のスーパーで買える」が24.4%、「低価格」が21.7%です。
一方、「生産国」を重視すると答えた人は2.8%にとどまります。このデータから、タイの生活者は即席食品を選ぶ際に、生産国よりも味や品質、調理の簡単さ、身近な店で購入できることを挙げた人が多いことが分かります。

食品カテゴリー別 購入時重視点:即席類

図2:食品カテゴリー別 購入時重視点:即席類(複数選択)(ベース:18歳~64歳男女)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

このように、日本の加工食品を買いたいと考える人が多い一方で、実際の商品選択では生産国だけではなく、食品としての具体的な特徴も判断材料になります。「日本の加工食品を買いたいか」と尋ねられたときには、日本の商品に対するイメージを基に回答できます。一方で、実際の購入場面では価格や味、調理方法、購入できる場所など、目の前の商品に関する具体的な条件を比較します。日本の加工食品への購入意向が高くても、商品を選ぶ場面では、より多くの判断材料が加わると考えられます。

そのため、日本の商品であることを訴求するだけではなく、商品として何が優れているのかを具体的に伝える必要があります。
例えば、「日本品質」という抽象的な表現だけではなく、どのような味を楽しめるのか、どの点で品質が高いのか、どの程度簡単に調理できるのかまで示すことが重要です。また、身近なスーパーで購入できる状態を作ることも、商品選択に影響する可能性があります。

3.日本食品をタイの食卓に登場させるためには?

次に、商品を選んでもらうことに加えて考えたい点は、「現地でどのように食べてもらうか」です。
タイで「家庭で自炊する料理」としてタイ料理を挙げた人は88.6%です。日本料理を挙げた人は6.5%でした。このデータからも分かるように、タイの家庭では自炊する料理としてタイ料理が広く挙げられています。日常の食卓を考えるうえで、タイ料理は無視できない存在です。

普段食べる料理の種類:家での自炊

図3:普段食べる料理の種類:家での自炊(複数選択)(ベース:18歳~64歳男女)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

では、日本食品を「日本料理を作るための商品」として提案するだけで、家庭での利用は広がるのでしょうか。タイ料理など、日常的な食事への取り入れ方を示すことも、利用場面を広げる一つの方法と考えられます。

さらに、現地の生活を見ることで、日本では十分に想定していなかった利用場面が見つかることもあります。生活者の食卓の写真を確認できるインテージが保有する海外生活者ビジュアルデータベース「Consumer Life Panorama(CLP)」でタイの朝食事例を見ると、麺に肉や野菜を組み合わせた料理が確認できました。

images

出典:インテージConsumer Life Panorama

Consumer Life Panoramaとは

世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。

本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

images

この事例から、即席食品では「朝食」もタイでの利用場面になり得るのではないか、という仮説が浮かびあがります。短時間で調理でき、肉や野菜を加えやすい商品であれば、朝食として提案できる可能性があるでしょう。

もちろん、この仮説を確かめるには、即席食品が実際に朝食として食べられているのか、朝食にどのような味や量が求められるのかを確認する必要があります。しかし、このように現地の食生活を具体的に見ることで、日本では想定していなかった利用場面を発見し、現地の料理に合うアレンジや、食べる時間帯、組み合わせる食材の提案を検討できるようになります。

4.まとめ:購入意向の高さだけで、商品の可能性を判断しない

ここまで紹介したように、日本の加工食品への購入意向が高いことは、タイ市場の可能性を考える一つの材料になります。しかし、日本の商品が選ばれ、日常的に食べられるかは、購入意向だけでは判断できません。
実際の購入場面では、味・品質・調理の簡単さ・入手しやすさなどが重視されます。また、家庭での利用を考えるには、日本料理だけではなく、タイの普段の食事にどう取り入れられるかを見る必要があるでしょう。

つまり、日本で販売している商品を大きく変えずに海外へ展開する場合でも、現地の商品選択基準や食生活を理解することが重要です。「日本の商品であること」は、一つの強みになり得ます。しかし、その強みを購入につなげるには、生活者が何を基準に商品を選び、日常の中でいつ、どのように食べているのかまで捉える必要があります。そのうえで、商品そのもの、伝え方、食べ方の提案のうち、何を現地に合わせるべきかを検討することが求められます。



  • Intage Inc

    海外ビジネスを検討する企業に向けて、生活者起点のマーケティングを支援するプログラムの開発・推進を担当。学生時代の韓国留学をきっかけに、国によって異なる食文化や日々の暮らしを観察することが好きになった。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。