中国都市部の子育て世帯の「子どもの食」 外食・デリバリー活用と安全意識
- 公開日:2025/11/26
- 更新日:2025/11/26
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目次
1.健康意識と多忙のはざまで
中国では、都市部の共働き世帯も多く、日々の食事作りにかけられる時間が限られつつあります。忙しいなかでも、子どもの食は、多くの家庭にとって重要なテーマです。
インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer」(2024年実施)によると、0~13歳の子どもを育てるヤングファミリーの55.9%が、平日週4日以上、自炊をしています。自炊の理由としては「健康のため」が最も多く(出典2)、健康が家庭での食事において重視されていることがうかがえます。

図① 中国:平日・休日の自炊頻度
出典1:インテージGlobal Viewer(2024年)
*Global Viewerとは
インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリーに関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。

しかし、図①に見られるように、他の家族形態に比べてヤングファミリーの自炊頻度は低く、多忙ななかで調理に使える時間は不足しがちです。そのため「いかに効率的に健康的で安心な食事を用意するか」が重要となっています。
この記事では、中国都市部の子育て世帯を中心に、子どもの食事における外食やデリバリーの活用実態と、その課題について探ります。
2.デリバリー市場の拡大 ~時短と利便性を支える~
中国都市部では共働きが主流であることも背景にあり、外食・デリバリー市場は急成長しています。
都市部の家庭では、月平均で子どもの食費に500~1,000元(11,000~22,000円)を支出しており、中国の子ども向け飲食市場の規模は約500億元(約11兆円)で、今後も拡大が見込まれています。(出典3)
中国のデリバリー市場は、2024年時点で約81.9億米ドル(約1兆2000億円)に達し、2033年には197.9億米ドル(約3兆1000億円)に拡大すると予測されています。(出典4)
また、中国のデリバリーサービスは、価格帯が幅広く、比較的安価なメニューも豊富で、配送料も一般的に安いため、日常的にデリバリーを利用しやすい点も特徴的です。
インテージのGlobal Viewerのデータによると、ヤングファミリーの58.8%が週に2回以上デリバリーを利用しています。
また、図②のように、週に4回以上など、高頻度でデリバリーやテイクアウトを利用している家庭は、子どもと過ごす時間を多く取りたいという考えや、子どもが食べるものの生産地・添加物を気にする傾向が強く出ています。
時短と安心感の両立が、デリバリーの食事を子どもにも与える際に、重要な点だと考えられます。

図② 中国 子育てに関する考え方(5段階評価)×デリバリー・テイクアウト利用頻度
出典1:インテージGlobal Viewer(2024年)
3.外食市場の急成長 ~お子様メニューの需要~
中国では外食市場も活況で、レストランではファミリー層向けのサービス強化が進んでいます。例えば、「海底撈」などの中国の大手外食チェーンでは、子ども用の席やメニュー、遊び場などを積極的に設け、子連れファミリー層の確保に注力しています(出典5)。
子ども向けの外食市場が急成長を遂げている主な理由としては、若い親の多くが自宅で料理をすることを面倒に感じていることに加え、子どもに美味しくてしっかり食べられるものを与えたいと考える傾向が強い点が挙げられます。また、SNSに写真を投稿できるようにするために、「儿童餐」(お子様メニュー)を注文する人も少なくありません。(出典5)
さらに、お子様メニューのテイクアウト需要も高まっています。「美团外卖」のデータによると、2022年のお子様メニューの注文数は前年比300%増加し、2023年1月から4月にかけては前年比144%以上増加しました。(出典6)
4.お子様メニューの課題 ~食の安心・安全に対する意識~
一方で、お子様メニューには課題もあります。
例えば、栄養面での問題があり、カロリー基準は満たしているものの、脂肪分やナトリウム含有量が基準を超えていることが多く、子どもの成長に必要な栄養摂取基準を満たしていないと、一部の栄養士から指摘されています。
また、子ども向け食品のほとんどは、通常のミールキットに比べて単に量が少ないだけで、いわゆる「小份配餐」(小分け)と呼ばれており、原材料はほぼ同じです。
さらに、子ども向けの食品に関する統一された国家基準は存在せず、業界は子ども向けの食器やレストランのデザインに注力しており、中国国内では子どもの食に対して、課題感を持つ意見もあるようです。(出典3)
このような状況は、食の安心を重視する中国の子育て世代の意識を浮き彫りにしています。
5.子どもの食市場の可能性
中国都市部の子育て世帯は、外食やデリバリーを生活を支える選択肢の一つとして積極的に活用していることが明らかになりました。その背景には、「時短意識」や「安心感」といった価値観が影響していると考えられます。育児と仕事を両立する家庭において、子どもの食に関するサービスや商品の信頼性はますます重要な要素となっています。
このような状況は、日本企業にとっても、市場参入の方向性を探るためのヒントとなりそうです。産地情報の明確化、健康・栄養価値の訴求、品質保証など、中国の忙しい共働き家庭に向けて、日本企業の知見や強みを活かせる可能性も十分考えられます。
中国都市部の子育て世帯が抱える課題や価値観を理解することは、日本企業がいかに海外へ価値を届けていくべきかを検討するうえで、一つの手がかりとなるかもしれません。
■出典一覧
1: インテージGlobal Viewer(2024年実施)
2: Xin Ou, “Main reasons for cooking at home among consumers in China as of March 2025”, 2025
https://www.statista.com/statistics/1413561/china-leading-reasons-for-cooking-at-home/
3: 黄仕强, “儿童餐市场如何才能“长大””, 人民周刊, 2019
https://paper.people.com.cn/rmzk/html/2019-07/17/content_1936687.htm
4: IMARC, “China Online Food Delivery Market Report by Platform Type (Mobile Applications, Websites), Business Model (Order Focussed Food Delivery System, Logistics Based Food Delivery System, Full Service Food Delivery System), Payment Method (Online, Cash on Delivery), and Region 2025-2033”, 2024
https://www.imarcgroup.com/china-online-food-delivery-market
5: 吴文武, “海底捞要和西贝争抢中产宝妈”, 2025
https://www.cbndata.com/information/294578
6: 李燕京, “亲子消费激发经济“花样”活力”, 中国消费者报・中国消费网, 2024
https://www.ccn.com.cn/Content/2024/05-31/1507505934.html
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執筆者プロフィール
水落 星音
2022年に社会学研究科修士課程を修了後、現職にてマーケティング支援に従事。
文化人類学・社会人類学を専門とし、フィールドワークや参与観察の経験で培った視点を、生活者理解に活かせるように、日々模索中。
ドイツ留学中にビールの美味しさに目覚めて以来、旅行先ではご当地のクラフトビールをつい手に取ってしまう。 -

編集者プロフィール
高浜 理沙
日系のFMCGメーカー(化粧品、ベビー用品、食品・飲料等)のアジア・欧米でのマーケティング・リサーチ支援に従事したのち、2019年より現職にて、日系企業の海外マーケティング・リサーチのためのソリューション開発や、セミナー等の対外発信を行う。
子どもが生まれてからは、家族と自身の心身の健康をいかに保つかが最大の関心事で、様々なグッズ・サービスを試している。
