【US・中国】出張の手配、どう予約する? ~両国の出張スタイルを比較~
- 公開日:2025/12/04
- 更新日:2025/12/04
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コロナ禍で世界的に大幅に減少したビジネス出張ですが、昨今では以前の規模を取り戻しつつあります。出張目的における航空券やホテルの選択・手配は、国によってどのような違いがあるのでしょうか。この記事では、ビジネス旅客市場を牽引するアメリカと中国に焦点を当て、航空会社の選択方法や手配方法の違いから、両国の出張スタイルの特徴を掘り下げます。
1.コロナ禍以降の出張頻度の傾向
2020年、新型コロナウイルス感染症により世界的に移動が制限され、一時は出張もオンライン会議に置き換わると考えられました。しかし、その後は対面での商談や関係構築の価値が再認識され、昨今では世界的に出張需要は回復しつつあります。
図①(Statistaより引用)から見て取れるように、ビジネス旅行者の支出をみると、2022年を機に回復傾向にあり、今後も最適な形を模索しながら需要が戻ってきていると考えられます。

図① ビジネス旅行者の支出トレンド
出典:<Statista Market Insights>(Statistaより引用)
2.アメリカと中国、出張頻度が多い国は?
アメリカと中国での出張頻度を見ていきます。インテージが保有する海外生活者データ「Global Viewer(2024年実施)」*によると、過去1年間に出張を経験した人はアメリカでは約4割、中国で約7割弱と中国の方が出張経験率が高いことが分かりました。内訳を見ていくと、中国で2回以上の出張頻度がある人は約5割である一方で、アメリカでは約3割に留まり、アメリカの方が相対的に出張頻度が低い結果となりました。

図② 中国・アメリカの過去1年のビジネス旅行の回数(SA)(ベース:各国18~64歳男女)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
*Global Viewerとは
インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリーに関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。

3.利用する航空会社の選択は?(FSCかLCCか)
では、中国とアメリカを比較しながら各国における航空会社選択の特徴を見ていきます。
1年間の利用航空会社を見ると、アメリカでは、フルサービスキャリア(FSC/American Airlines、Delta Air Lines、United Airlines)に加え、格安航空会社(LCC)のSouthwest Airlinesが続き、航空会社の選択肢が多様化していることが分かります。
一方で中国では、Air China、China Eastern Airlines、China Southern Airlinesの国有大手3社が圧倒的で、次に続く航空会社と20pt以上の差があります。
また出張頻度別にみると、アメリカにおいて違いが見られました。
TOTALで最も利用率の高いAmerican Airlinesと10pt以上差があるUnited Airlinesが、出張回数が多い層(6回以上)では、American Airlinesと同等の利用率であり、United Airlinesは出張高頻度層に支持されていることが分かります。

図③ 過去1年で航空券を予約した航空会社(MA)
(ベース:各国18~64歳男女、過去1年以内航空券予約者)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
では、アメリカ主要3航空の利用率を世帯年収別に確認していきます。
図④から見えてきたのは、出張高頻度層に支持されているUnited Airlinesは高所得者ほど利用割合が高いことです。このことからプレミアム需要の取り込みが進んでいる様子がうかがえます。

図④ アメリカ_世帯年収別、過去1年で航空券を予約した航空会社(MA)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
4.直接予約かアプリ利用か? 予約方法から見えてくる違い
出張時には航空券だけでなく、ホテルや現地移動手段の予約も必要になります。
そこで、オンラインでの航空券、宿泊施設、パッケージ予約サイト・アプリの利用状況を比較しました。
アメリカでは、航空・ホテルともに公式サイトから「直接予約」がTOP5にランクインしており、予約する際の中心であることが分かりました。ただし、出張頻度が4回以上と多い層では、航空券からホテルまでパッケージ予約できるOTA(オンライン旅行代理店)利用が増加する傾向があることが分かりました。
一方で中国では、CtripやFliggyなど中国専業OTAが圧倒的に利用されており、直接予約はランクインしていません。
出張においても、 航空券・ホテル・鉄道・アクティビティまで、一括手配できるスーパーアプリ型利用が一般的であることが見て取れます。

図⑤ 過去1年で利用した航空券、宿泊施設、パッケージ予約サイト・アプリ
(ベース:各国18~64歳男女、過去1年以内(航空券/宿泊施設/パッケージ旅行)
オンライン予約者)
出典:インテージGlobal Viewer(2024年)
5.まとめ
今回の比較から、アメリカ・中国の出張スタイルには次のような特徴が見られました。
<アメリカ>
・サイトやアプリを使い分けながら自分に合うブランドを比較・選択する傾向がある。
・直接予約が良いと判断する層が一定数いる。
・出張頻度の高い層(年4回)ではOTAの活用も多い。
<中国>
・アメリカよりも出張頻度が高く、航空券・宿泊先などを中国独自のOTAで一括手配するスタイルが主流。
このように各国の出張行動と予約行動を的確に捉えることが、航空業界・旅行業界のマーケティング戦略において重要となってくるでしょう。
日本においても、今後ビジネス旅客を強く取り込む航空ブランドが登場するのか注視していきたいと思います。
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執筆者プロフィール
松下 莉子
2023年インテージ入社。テーマパークなどリアルエンタメを中心にDCGS領域のマーケティングリサーチに携わる。
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編集者プロフィール
高浜 理沙
日系のFMCGメーカー(化粧品、ベビー用品、食品・飲料等)のアジア・欧米でのマーケティング・リサーチ支援に従事したのち、2019年より現職にて、日系企業の海外マーケティング・リサーチのためのソリューション開発や、セミナー等の対外発信を行う。
子どもが生まれてからは、家族と自身の心身の健康をいかに保つかが最大の関心事で、様々なグッズ・サービスを試している。
