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東南アジア生活者の日本への期待とEC購買環境 ― 訪日意向とオンライン購買行動から見る消費者像

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前回の記事では、東南アジア(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)が「次の成長市場」として語られる一方で、現地ECではすでに競争環境が高度化しており、日本企業にとっては戦略や価値の届け方そのものを再考する局面にあることを整理しました。

では、そうした市場環境の中で、生活者側は何に関心を持ち、どのような関心や購買行動が見られるのでしょうか。

この記事では、13カ国の生活者を対象に実施した調査結果をもとに、「東南アジア生活者の訪日意向」「日本で購入したい商品カテゴリー」「オンライン購入の積極性」「口コミ・レビューの重視度」という4つの観点から、生活者の関心と購買行動を整理します。
生活者が持つ関心や購買意向を並べて捉えることで、東南アジア市場における消費者像の一端を示します。


1.東南アジアにおける訪日意向

インテージが保有する海外生活者データGlobal Viewer(2025年実施)によると、東南アジアの生活者の「今後1年以内に旅行で行きたい国・地域」は、6カ国(シンガポール・マレーシア・フィリピン・インドネシア・タイ・ベトナム)全てにおいて日本は1位となっており、日本への関心の高さがうかがえます。

今後1年以内に旅行で行きたい国・地域 (ベース:各国18~64歳男女)

表1:今後1年以内に旅行で行きたい国・地域 (ベース:各国18~64歳男女)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

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では、東南アジアの生活者が日本で購入したい商品カテゴリーは何でしょうか。国によって違いはあるのでしょうか。

訪日時に購入したいカテゴリー(ベース:各国18~64歳男女かつ今後1年訪日意向者)

図1:訪日時に購入したいカテゴリー(ベース:各国18~64歳男女かつ今後1年訪日意向者)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)

各国内の順位で見ると、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイでは「食品」が1位、「医薬品・日用品」が2位に位置しており、日本製の生活必需品への関心の高さが共通して見られます。
一方、ベトナムでは「靴・かばん・革製品」が1位、「食品」は2位に位置しており、日本製の服飾雑貨への関心が相対的に強い点が特徴的です。
こうした順位構造から、日本に対して「安心して消費できるもの」だけでなく、作りの良さや耐久性が評価される商品カテゴリーにも期待が向けられていることが読み取れます。

また「たばこ」は、シンガポール、タイ、ベトナムで3位に位置しており、高い関心が示されています。嗜好品である「たばこ」が上位に挙がる点は、日本の商品に対する品質の安定性や、訪日時に正規品を購入できるという認識が背景にある可能性も考えられます。

全体として、東南アジアの生活者が日本に期待する商品カテゴリーは国によって多少異なるものの、「品質への信頼」を軸に、食品・日用品から耐久消費財、嗜好品まで、幅広い関心が並存していることが確認できます。

2.東南アジア生活者におけるオンライン購入の利用状況と購買判断の前提

(この記事では、市場や産業構造を指す場合には「EC」、生活者の行動や意識を表す場合には「オンライン購入」という表現を用いています。)

東南アジア生活者の日常生活におけるオンライン購入のあり方は、どのようなものなのでしょうか。

東南アジア6カ国では、タイを除く5カ国でオンライン購入を積極的に利用している層が6割を超え、タイでも5割弱と高い水準にあります。一方で、日本は36.4%でした。

オンライン購入を積極的に活用 TOP2※の割合(ベース:各国18~64歳男女)※TOP2(%) = 非常にあてはまる or あてはまる と回答した割合

図2:オンライン購入を積極的に活用 TOP2※の割合(ベース:各国18~64歳男女)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)
※TOP2(%) = 非常にあてはまる or あてはまる と回答した割合

この結果から、東南アジアの生活者にとってオンライン購入は、特別な手段ではなく、日常的な購買ルートとして定着していることがうかがえます。
この背景には、スーパーマーケットなどのモダントレードが全国的に整備されるよりも前に  、近年スマートフォンとECの普及が一気に進んだことに加え、価格比較、品揃え、利便性といった観点からも、オンライン購入は合理的な選択肢となっている点が挙げられます。

日本と東南アジアの差は、ECの成熟度の違いというよりも、生活における購買チャネルの位置づけの違いを示していると言えるでしょう。

では、こうしたEC環境の中で、生活者は何を手がかりに購入判断を行っているのでしょうか。

東南アジア6カ国では、身の回りのモノを購入する際に、口コミやレビューの評価の高さを「非常に重視する」と回答した層は、ベトナムが最も高く(32.6%)、続いてフィリピン(28.6%)、マレーシア(22.0%)となりました。タイ(17.8%)、インドネシア(14.9%)およびシンガポール(14.2%)でも一定の割合が確認されています。

身の回りのモノを購入する際、口コミ・レビューの高さを重視 TOP1※の割合(ベース:各国18~64歳男女)※TOP1(%) = 非常にあてはまる と回答した割合

図3:身の回りのモノを購入する際、口コミ・レビューの高さを重視 TOP1※の割合
(ベース:各国18~64歳男女)
出典:インテージGlobal Viewer(2025年)
※TOP1(%) = 非常にあてはまる と回答した割合

日本と比較すると、東南アジアでは、購入判断において口コミやレビューが果たす役割が相対的に大きく、重要な手がかりとなっていると言えるでしょう。

これらの結果から、購買の「場」と「判断材料」が、オンラインを中心に組み立てられている生活者が一定数、存在していることがうかがえます。

3.日本企業は、東南アジア市場とどう向き合うべきか

ここまで見てきた調査結果から、東南アジアの生活者が日本の商品に対して一定の関心を持ちつつ、購買行動そのものはオンラインを前提とした環境の中で行われていることが確認できます。また、その意思決定においては、口コミやレビューといった第三者の評価が、重要な判断材料として位置づけられています。

これらの結果は、日本企業が東南アジア市場に向き合う際、「日本の商品であること」や「訪日需要があること」だけを前提に戦略を組み立てることの難しさを示唆しています。
生活者の関心は存在する一方で、その関心がどのチャネルで、どのような情報をもとに具体的な購買行動へとつながるのかは、市場や国ごとに異なる前提条件のもとで形成されています。
とりわけECが日常的な購買ルートとして定着している市場では、売り場のあり方や情報の見せ方、レビューや評価の蓄積状況が、生活者の判断に影響を与える要素となります。

こうした前提を踏まえると、東南アジア市場においては、単に商品を展開するだけでなく、生活者がどのような環境で商品を比較し、判断しているのかを理解した上で、マーケティング施策や販売戦略を検討する視点が重要になると言えるでしょう。

東南アジアECが「成長市場」として語られ続ける中で、日本企業にとって重要なのは、市場の規模や成長率だけではなく、生活者が置かれている購買環境や前提条件を踏まえて市場を読むことです。
この記事が、そうした視点から東南アジア市場を捉え直す一助となれば幸いです。



  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    小山 麻由美

    2012年から11年間、日系および外資系FMCGメーカーの日本国内マーケティング活動を支援。2023年より現職にて、海外パネルデータ、特に中国・東南アジアECパネルデータの調達・展開を担い、主に海外EC領域のデータ活用を支援している。
    多言語学習や文化観察を日々の習慣とし、言葉から世界を読み解くことがライフワーク。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    高浜 理沙

    日系のFMCGメーカー(化粧品、ベビー用品、食品・飲料等)のアジア・欧米でのマーケティング・リサーチ支援に従事したのち、2019年より現職にて、日系企業の海外マーケティング・リサーチのためのソリューション開発や、セミナー等の対外発信を行う。
    子どもが生まれてからは、家族と自身の心身の健康をいかに保つかが最大の関心事で、様々なグッズ・サービスを試している。

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    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
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