ColumnColumn

ベトナム人の平均を知ろう 「若さ」と「実利」が共存する急成長市場:データで読み解くベトナム消費者の「基本のキ」


1.はじめに

なぜ今、ベトナムを理解する必要があるのでしょうか。それは、この国の人口構造と成長フェーズが、成熟市場である日本と大きく異なる点にあります。
ベトナムでは10代以下から30代までの若年層が人口のボリュームゾーンを形成しており、40~70代が厚い日本のような少子高齢型の構造とは対照的です。

性年代別人口・人口構成比(10歳刻み)_ベトナム

さらに、少子化が課題とされる日本の合計特殊出生率が1.3前後で推移するのに対して、ベトナムは2.04と比較的高い水準を維持しています。平均年齢の若さと出生率の高さが同時に存在するこの人口動態こそが、消費拡大の余地を大きく残す「伸びしろのある市場」として、ベトナムが注目される理由です。

国別合計特殊出生率_17ヵ国

ベトナムの人口と出生率については、こちらデータをご覧ください。

さらに注目すべきは、市場に漂う「成長の熱気」です。ベトナムでは、一人当たり支出額が2,891,524VND(約17,000円)に達しており、物価上昇率を上回るペースで増加し続けています。これは単なるインフレの影響ではなく、実質的な購買力の拡大と消費意欲の高まりが同時進行していることを示しています。生活水準の向上に合わせて「より良いものにお金を使う」段階へと移行していると考えられます。

1人当たり月間支出額_ベトナム

支出額については、こちらのデータをご覧ください。

2.「人口動態」から理解するベトナム人

まず押さえておきたいのが、ライフステージの進行の早さです。ベトナムでは初婚年齢が男性26.9歳、女性22.8歳と比較的若く、結婚・出産といったライフイベント需要が早期に発生する点が大きな特徴です。これは、住宅、家電、日用品、教育関連など、ファミリー形成に紐づく消費が20代の段階から一気に立ち上がることを意味します。
国際比較で見てもその早さは際立っています。男性の初婚年齢26.9歳は、インド、アラブ首長国連邦に次いで3番目の低さです。女性の22.8歳も、インド、タイ、インドネシアに次ぐ4番目の低水準です。
このように、可処分所得の増加とほぼ同時期に「家庭形成」という大型消費イベントが訪れることが、ベトナム市場の需要立ち上がりを加速させる要因となっています。

性別初婚年齢

初婚年齢については、こちらのデータをご覧ください。

▶関連データ:性別初婚年齢

ベトナムの都市人口比率は39.5%と、日本の約92%と比べるとまだ半分以下の水準にとどまっています。一見すると都市化が遅れているように見えますが、現在の比率ではなく、注目すべきはその伸びの速さです。
ベトナムでは都市人口が着実に増加しており、直近では約2%の上昇を記録しました。これは調査対象17カ国の中で最も高い増加率であり、都市化が加速フェーズに入っていることを示しています。

都市人口比率_17カ国

17カ国を比較した人口比率については、こちらのデータをご覧ください。

▶関連データ:都市人口比率_17カ国

ベトナムでは、家族単位で生活する意識が強く、平均世帯人数は3.44人と、日本の2.33人に比べて1人以上多い水準にあります。日本の約1.5倍にあたる規模で、4~5人世帯がボリュームゾーンを形成している点が特徴です。
「個」よりも「集団」で暮らす大家族主義であり、食料品や日用品のまとめ買い需要、共有を前提とした耐久消費財、家族全体で利用するサービスなど、「世帯単位」での消費設計が有効であることを示唆します。

平均世帯人数_14ヵ国

▶関連データ:平均世帯人数_14カ国

3.仕事と役割 ― 女性が社会を牽引する

ベトナムの特徴として見逃せないのが、世界トップクラスの女性就業率です。女性の労働力率は68.2%と調査対象18カ国中で1位となっており、社会・経済活動において女性が重要な担い手となっています。
日本で見られるような、出産・育児期に就業率が一時的に落ち込む「M字カーブ(※)」はほとんど存在せず、就業率は30代後半にかけて自然にピークを迎える構造です。つまり、ライフイベントによってキャリアが分断されにくく、結婚・出産後も働き続けることが一般的な社会像がうかがえます。


※M字カーブとは、25~29歳をピークに就業率が徐々に低下し、その後再び上昇する女性就業の特徴的なカーブを指す。

女性の年齢別労働力率_18カ国

女性の労働力率については、こちらのデータをご覧ください。

男性の労働力率を見ると、日本が71.5%、ベトナムが76.7%と大きな差はありません。しかし60~64歳層では、日本が86.4%であるのに対して、ベトナムは69.3%にとどまります。これは、日本では再雇用制度などにより高年齢層の就業が継続しやすい制度的背景が影響していると考えられます。

男性の年齢別労働力率

男性の労働力率については、こちらのデータをご覧ください。

▶関連データ:男性の年齢別労働力率

ベトナムでは、日本のような配偶者控除制度が存在せず、健康であれば男女ともに働くのが一般的です。制度的に「扶養内で働く」という発想が生まれにくいことから、共働きは特別な選択ではなく、「当然」の家計モデルとして定着しています。こうした背景もあり、女性がキャリアを築き社会で活躍することへの心理的・制度的ハードルは低く、管理職に占める女性比率もアジアで2位と高い水準にあります。

労働時間を見ても、その忙しさは明確です。1週間当たりの労働時間は、日本人女性が31.3時間であるのに対し、ベトナム人女性は37.95時間と約6.65時間長く、日本よりも就業負荷が高い実態がうかがえます。

長時間働きながら家庭生活も担うライフスタイルのなかでは、家事の効率化や時短につながる商品・サービスへのニーズが潜在的に高まります。つまり、ベトナム市場では「時間を節約できること」「合理的で実用的であること」が価値として受け入れられやすいと考えられます。

1週間当たりの労働時間については、こちらをご覧ください。

4.消費と価値観 ― 「実利」重視

ベトナム人は、購買前の情報収集に非常に積極的です。SNSなどを活用して徹底的に比較・検討する一方で、最終的な購入は「実物を確認したい」という心理から、約6割が店頭を選択しています。
つまり、デジタルは意思決定を後押しする“調査の場”、リアル店舗は納得感を得る“最終確認の場”として機能しており、オンラインとオフラインが明確に役割分担された「オンラインで調べ、店頭で買う」=ROPO(Research Online, Purchase Offline)型の行動が定着しています。

また、トキ消費とコト消費が混在する、合理的な価値観を持っています。トキ消費は、その瞬間の楽しさや体験価値、思い出づくりにお金を使う利他的な消費行動、一方でコト消費はモノの所有よりも、得られる機能・効果・合理的メリットを重視する利己的な消費行動を指します。なお、調査ではアメリカ・中国はトキ消費派、タイはコト消費派が多く見られました。
ベトナムでは、この両方を重視する層がいずれも約7割に達しており、感性的な満足と実利的な価値を同時に見極める“ハイブリッド型”の消費スタイルが主流です。特に健康分野への支出意欲が高く、自分や家族の生活の質を高める領域には積極的に投資する傾向が見られます。
このように、ベトナム市場では「楽しい」「新しい」といった情緒的価値だけでは不十分であり、それが生活改善や将来的メリットにどうつながるのかまで示すことが、購買を後押しする重要な要素となります。

お金の使い方については、こちらのレポート(無料)をご覧ください。

ベトナムでは、消費と同時に「資産を守る」という意識が非常に強く、安定的な価値を持つ金(ゴールド)が重要な資産形成手段として位置づけられています。これは単なる嗜好品としての購入ではなく、将来への備えという実利的な意味合いを伴う点が特徴です。
象徴的なのが、旧暦1月10日の「富の神様の日(Ngày Vía Thần Tài)」です。この日に金を購入すると、その1年は商売繁盛してお金に困らないと伝えられており、多くの人が宝飾店に足を運びます。年中行事として金を買う文化が根付いていることからも、ベトナム人が“使うためのお金”と“蓄えるためのお金”を明確に意識し、実利を重視した価値観を持っていることが読み取れます。

結婚と資産については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

5.食について ―食べ物の 「出所」への厳しい眼差し

ベトナムの家庭では、日本と同様に「米」が主食として食卓に並びます。日々の食事は、ご飯と複数のおかずを組み合わせるスタイルが基本で、ご飯が進むような塩気のある味付けや、しっかりとした濃い味わいの料理が並ぶのが一般的です。

食材は早朝の市場と利便性の高いローカルスーパーを使い分けるのが一般的です。また共働き家庭の増加により時短志向が強まり、外食や総菜も活用されています。主食は米で、魚醤を使った濃い味付けのおかずを家族で大皿から取り分けて食べるなど、食事は家族の絆を深める重要な時間と位置づけられています。

images

家庭料理については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

ベトナムのトレンドに敏感なZ世代女性は、口にするものの選択に非常に慎重です。重視しているのは味だけではなく、次の2点に集約されます。

① 製造地・天然素材:
どこで作られ、何が使われているのかという情報の明確さを厳しくチェックし、由来が説明できる商品に安心感を抱きます。

② SNSによる信頼の裏付け:
自分が信頼するインフルエンサーやアカウントの発信内容を参考に、信頼できるブランドかどうかを判断します。

Z世代女性の野菜飲料購入時重視点

こうした傾向から、製造地のストーリーや原材料の開示が購買動機に直結しやすく、特に日本産であることが明確な商品は品質イメージの高さにつながります。飲料カテゴリーでは、産地がはっきりしている日本酒が評価されやすく、「適量なら健康的」という認識から低アルコールタイプが好まれる傾向も見られます。
また健康意識の高まりを背景に、抹茶は“体に良い飲み物”として広く認知されており、ウェルネス志向と親和性の高い商材として受け入れられています。

Z世代のトレンドについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

海外生活者データで、意思決定をスマートに加速
Global Viewer

インテージがストックする11カ国(アジア・US)の生活者の様々な実態・意識に関するアンケートデータを用いて、ご課題に応じたレポートをご提供するサービス。
カバーしている項目は、各種商品・サービスカテゴリーに関する行動実態・意識、価値観・情報接触など400項目に及ぶ。

images

6.健康について―医療へのアクセスが高くないからこそ、高まる健康意識

ベトナムは、韓国やシンガポールなどの先進国と比較して健康意識が高い傾向にあります。成長過程にあるベトナムでは、医療に頼りきるのではなく、日常の選択で健康をマネジメントしようとする新しい価値観が広がりを見せています。

各国Z世代の健康に関する考え方

Z世代健康に関する考え方については、こちらの記事をご覧ください。

ベトナム人が健康維持に強い関心を払う背景には、切実な社会環境があります。ベトナムでは、人口1,000人あたりの医師数はわずか0.8人と、日本の2.6人に比べて大幅に少なく、必要なときに容易に診察を受けられない可能性があります。こうした医療アクセスの制約が、「病気になる前に自分で防ぐ」という予防志向を高め、日常的な食事管理や健康関連商品の需要を押し上げていると考えられます。

人口1000人あたりの医師数_17カ国

医師の数については、こちらのデータをご覧ください。

ベトナムでは、発展途上国ならではの「将来への向上意識」が強く、自分を磨くための健康管理や情報収集への支出を惜しまない傾向が見られます。これらは単なる消費ではなく、将来の生活を守り、より良くするための“自己投資”として捉えられている点が特徴です。健康はコストではなく、自分の価値を高めるための投資対象として認識されている可能性があります。

7.まとめ:ベトナム市場を読み解く「3つのキーワード」

ベトナムの消費者像を端的に表すと、次の3つの視点に集約されます。

①Young & Family:
若年層が社会の中心を担う一方で、意思決定は常に家族や共同体を意識。個人よりも「世帯単位」の価値観が色濃い。

②Digital & Real:
SNSやオンラインで徹底的に情報収集するデジタル活用層でありながら、最終的には自分の目で確かめて判断する慎重さを併せ持つ。

③Pragmatic(実利主義):
健康、住まい、資産といった将来に直結する分野を重視し、「確実な価値」への支出を惜しまない。


若さゆえの勢いと、将来を見据えた堅実さ。この一見相反する要素が共存している点こそが、ベトナム市場の本質といえるでしょう。

Consumer Life Panoramaとは

世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。

本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

images



  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    日本在住14年目マレーシア人リサーチャー。ASEAN各国の調査を多く担当しています。

転載・引用について
  • 本レポート・コラムの著作権は、株式会社インテージ または執筆者が所属する企業が保有します。下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。

    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
  • 禁止事項:
    • 内容の一部または全部の改変
    • 内容の一部または全部の販売・出版
    • 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
    • 企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
  • その他注意点:
    • 本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
    • この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
  • 転載・引用についてのお問い合わせはこちら