
目次
1.はじめに:インドZ世代を、ASEAN3カ国との比較から捉える
Z世代と聞くと、SNSや動画から情報を得て、オンライン上で素早く商品を選ぶ姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、インドのZ世代を詳しく見ると、デジタルを使いこなす一方で、家族や友人など身近な人とのつながりを大切にする姿が浮かび上がります。
彼らにとってデジタルは、人との関係に代わるものではありません。家族や知人の意見、SNS上の投稿、動画、レビューなどを行き来しながら、信頼できる情報を集め、納得できる商品やサービスを選ぶための手段となっています。
本記事では、インドと日系企業の進出が多いASEAN3カ国(ベトナム、タイ、インドネシア)のZ世代を比較します。4カ国に共通する傾向とインドZ世代に特徴的な動きを照らし合わせながら、インドZ世代が大切にしている生活価値観と、情報収集や意思決定を含む購買行動との関係を読み解きます。
2.家食や家族との時間に表れる「人とのつながり」
インドZ世代の生活価値観を理解するうえで、まず注目したいのが増やしたいと考える時間です。インテージ インディアの調査では、自宅での食事や家族と過ごす時間が上位に挙がりました。 詳細を見ていきます。
(1)自宅で食事をする時間を増やしたい
インドZ世代では、「自宅で食事に費やす時間」が増やしたい時間の第1位となり、77.7%に達しました。ベトナムでも71.8%で第1位、インドネシアでは70.4%で第3位、タイでも59.3%で第4位に入っています。一方で「外食に費やす時間」は、インド、ベトナム、インドネシアで最も減らしたい時間となり、タイでも第2位でした。
この結果から、インドZ世代には、自宅を単に休む場所としてではなく、食事を含む日常の時間を充実させる場として捉える傾向がうかがえます。外の刺激や利便性だけを求めるのではなく、身近な生活の質にも目を向けている点は、インドZ世代への理解を深める一つの手がかりといえます。

図1:Z世代が増やしたい(確保したい)時間<インドとASEAN諸国の比較>
出典:INTAGE Research

図2:Z世代が削減したい時間(負担) <インドとASEAN諸国の比較>
出典:INTAGE Research
(2)家族や両親との時間も増やしたい
もう一つの注目としては、家族に関する項目も上位に入っている点です。インドZ世代では「両親と過ごす時間」が55.3%、「家族全員で過ごす時間」が53.0%と、いずれも半数を超えました。ベトナムではそれぞれ51.3%と49.3%、インドネシアでは61.1%と59.5%、タイでも42.6%と46.3%となっています。
いずれも4カ国に共通して、5割近くが「家族や両親との時間を増やしたい」という意識があり、中でもインドZ世代は高い傾向にあります。
(3)「充実感」にも信頼できる人との関係が影響
さらに、「豊かで充実していると感じる時間」について調査すると、インドZ世代では「信頼できる友人や家族と過ごす時間」が21.3%で第1位でした。自宅での食事時間を増やしたい意識と、家族や信頼できる人との時間を重視する傾向を合わせて見ると、インドZ世代にとっての豊かさは、個人だけで完結するものではなく、身近な人との関係の中にも見いだされていると考えられます。
もちろん、「自宅での食事」が必ず家族との食事を意味するわけではありません。しかし、家食・家族との時間・信頼できる人との時間がそれぞれ上位に挙がっていることから、インドZ世代を理解する際には、若者の自立やデジタル志向だけではなく、身近な人と過ごす日常を重視する側面も欠かせない観点となります。

図3:Z世代が「豊かで充実している」と感じる時間(トップ3)
出典:INTAGE Research
このように、インドZ世代はデジタルを日常的に使いこなす一方で、家族や友人との関係から得られる安心感や信頼も大切にしていることが見て取れます。そして、この「人とのつながりを重視する価値観」は日々の過ごし方だけでなく、商品やサービスを選ぶ際に誰の意見を参考にし、どの情報を信頼するのかという購買行動にもつながっている可能性があります。
※調査内容の詳細をご覧になりたい方は、こちらのレポートも参照ください。
インドZ世代とASEAN Z世代の違いとは?
3.スマートフォンは人とつながり、生活を動かすインフラ
では次に、「スマートフォンを紛失・落とした際の影響」の調査結果を見ていきます。インドZ世代にとってのスマートフォンの位置づけを確認してみると、デジタルとリアルな人間関係が対立するのではなく、互いに重なり合っている様子がうかがえます。

図4:スマートフォンを落としたり紛失したりした際の影響
出典:INTAGE Research
(1)スマートフォンを失ったとき、最も困るのは「連絡できないこと」
スマートフォンを紛失した際の影響として、インドおよびベトナム、タイ、インドネシア4カ国の全てで「メッセージングアプリで他の人と連絡が取れない」が最上位となりました。
上記2章で紹介したように、家族や友人との関係を重視するインドZ世代にとって、メッセージングアプリは、リアルな人間関係とは別の世界にあるものではないようです。これは、身近な人との連絡や情報共有を日常的に支え、対面での関係を補完する手段になっている可能性があります。つまり、リアルなつながりがあるからデジタルが不要になるのではなく、リアルな関係を続けるためにもデジタルが使われている、と捉えることができます。
(2)連絡だけでなく、決済や検索にも不可欠
次に、インドZ世代では「モバイル決済ができない」も52.3%で同率第1位でした。他にも電話・SNS・検索・銀行アプリ・動画視聴など、スマートフォンが生活のさまざまな機能を担っていることが分かります。
つまり、インドZ世代にとってスマートフォンは、娯楽や情報閲覧のためだけの端末ではありません。人と連絡を取り、必要な情報を探し、決済を行うなど、日々の行動を進めるための生活インフラとして位置づけられていると考えられます。
(3)デジタルを通じて、身近な人とのつながりを保つZ世代
このように、インドZ世代にとってスマートフォンは、娯楽や情報閲覧のためだけの端末ではありません。人との関係を保ち、必要な情報にアクセスし、日々の行動を進めるための生活「インフラ」であることが見てとれます。この点を押さえると、インドZ世代のデジタル活用を「オンラインを好む若者」という一面的なイメージではなく、生活と人間関係を効率よく支える実践的な行動として理解しやすくなります。
4.SNSで見つけ、身近な人やレビューで確かめる購買行動
こうした「人とのつながり」と「デジタルの実用的な活用」は、商品を選ぶ場面にも表れています。ここでは、インドZ世代とASEAN(ベトナム、タイ、インドネシア)Z世代に調査した「製品の選び方・購入方法」から見えてくる購買行動を深堀します。
(1)商品カテゴリーによって情報源を使い分ける
「飲料・食品購入時に利用する情報源」を見ると、全4カ国で「店頭」が第1位でした。一方で、友人・知人、動画サイト、SNS投稿、SNS広告、オンライン食品スーパーなども上位に入っています。このことから、日常的に購入する商品では実物を目にしやすい店頭を基本としながら、デジタルや口コミも併用していることが分かります。

図5:飲料・食品購入時に利用する情報源
出典:INTAGE Research
次に、「化粧品・洗剤・日用品の購入時に利用する情報源」では、インドZ世代の第1位が「ソーシャルメディアへの投稿」で33.0%、第2位が「レビューサイト/アプリ」で31.3%でした。一方でベトナムでは「友人や知人」、タイでは「店頭」、インドネシアでは「ソーシャルメディア広告」がそれぞれ第1位であり、同じZ世代でも、国によって有力な情報接点が異なることが見て取れます。

図6:化粧品、洗剤、日用品を購入する際に利用する情報源
出典:INTAGE Research
(2)高額商品ほど、デジタルと対人的な信頼が並ぶ
自動車や家電など、高額な商品を購入する場合はどうでしょうか。
「自動車・オートバイの購入時に利用する情報源」においては、インドZ世代の第1位は「動画サイト・アプリ」で33.3%、第2位は「友人や知人」で32.3%でした。
また、「家電製品・スマートフォン、エアコンの購入時に利用する情報源」では「動画サイト・アプリ」が37.0%で第1位、「ショッピングサイト・アプリ」が31.7%で第2位となる一方で、友人や知人(29.3%)、店頭内(31.3%)、レビューサイト・アプリ(29.3%)なども約3割という結果でした。

図7:自動車・オートバイ購入時に利用する情報源
出典:INTAGE Research
(3)信頼の対象が「リアルからデジタルへ」の広がり
この調査結果から見えてくるのは、インドZ世代はデジタルか口コミかの二者択一ではなく、動画やSNSで商品を知り、レビューやショッピングサイトで比較しながら、友人や知人の意見も判断材料にしている点です。つまり複数の情報源が並行して使われており、身近な人を信頼する姿勢が失われたのではなく、「信頼できる情報」を探す範囲が、デジタル上の評価や体験談へ広がっていると考えられます。このことから、インドZ世代とASEANのZ世代は、オンラインとオフラインの情報を組み合わせながら、信頼できる選択肢を探していることがうかがえます。
5.特にインドで顕著な、効率的・合理的な購買プロセス
インドZ世代の購買行動をさらに詳しく見ると、情報を多く集めるだけでなく、発見・比較・購入条件の確認・購入後の共有までを、一連のプロセスとして進めていることが分かります。
【4段階で整理する購入プロセス】
① 発見・候補の絞り込み
YouTubeやInstagram、友人や家族などを通じて商品を知り、自分との関連性や有用性を見ながら候補を作ります。企業からの広告だけでなく、利用者のレビューや身近な人の意見も、商品の発見と絞り込みに関わります。
② 評価・比較
レビュー・評価・開封動画・比較動画などを確認し、複数のプラットフォームで価格を比べます。ブランド名だけで判断するのではなく、機能や仕様・安全性・信頼性といった実質的な価値を確かめます。
③ 決定・購入
価格や機能に加えて、割引・返品のしやすさ・カスタマーサポート・ブランドとの相性などを確認します。インドZ世代では、購入時に「カスタマーサポート」を重視する割合が40.3%、「キャンペーン、割引、景品」が26.7%で、いずれも比較対象のASEAN3カ国のZ世代より高くなっています。
④ 購入後の共有
購入後はレビューやフィードバックをオンラインで共有し、その情報が別の消費者の判断材料になります。つまり、良い商品であることだけでなく問題が起きた際の迅速な対応も、ブランドへの長期的な信頼や評価、そして次の購入に左右します。
このように、インドZ世代の購買行動は、SNSで話題の商品をそのまま衝動的に購入するという単純なものではないようです。身近な人やデジタル上の第三者評価を手がかりに商品を知り、レビューや比較動画、価格情報を確認し、サポートや割引まで含めて購入価値を判断しています。デジタルは、選択肢を増やすだけでなく選択肢を効率よく絞り込み、「失敗しにくい選択」をするために使われている点が特徴となっています。
6.インドとASEAN3カ国:共通点と相違点
ここまで紹介したように、インドZ世代とASEAN3カ国のZ世代には、人とのつながりを重視しながら複数の情報源を使う、という共通点があります。一方で、比較することで信頼する情報源や購入時の重視点の国ごとの違いや、インドZ世代の購買行動の輪郭がより明確になります。

インドZ世代とASEAN3カ国のZ世代には共通する価値観がある一方、情報収集や購買行動には違いが見られました。なかでもインドZ世代では、動画やレビュー、SNS、友人・家族からの情報を組み合わせて、比較・検討を重ねる傾向が特徴的です。そのため、インドZ世代に商品やサービスを届ける際には、一つの情報接点だけではなく、発見から購入後の共有までを見据えたコミュニケーションが求められるでしょう。
7.まとめ:人とのつながりを起点に、デジタルで納得解を探すインドZ世代
ここまで紹介してきたようにインドZ世代を理解するには、「デジタルネイティブ」という側面だけではなく、人とのつながりや商品を選ぶ際の判断基準にも目を向ける必要があります。ここでは、調査結果から見えてきたインドZ世代の生活意識と購買行動の特徴を、4つのポイントに分けて整理します。
① 家族や友人とのつながりを大切にする
インドZ世代は、自宅での食事や、家族・友人と過ごす時間を重視しています。デジタルネイティブ世代でありながら、日々の充実感の基盤には、身近な人との関係や信頼があることがうかがえます。
② デジタルを使い、幅広い情報を効率よく集める
商品やサービスを選ぶ際には、SNS(YouTubeやInstagram)、動画、レビューサイト、ショッピングサイトなどを積極的に活用します。デジタルは、数多くの選択肢から自分に合う商品を効率よく探す手段になっています。
③ 人とデジタル、両方の情報から信頼性を確かめる
インドZ世代は友人や家族の口コミを参考にしながら、利用者のレビュー・動画・店頭の情報なども組み合わせ、商品やブランドの信頼性を確かめています。身近な人への信頼とデジタル上の評価は対立せずに、相互に判断を補っています。
④ 価格や機能、購入後の対応まで比較して合理的に選ぶ
価格や割引だけではなく、商品の機能・安全性、返品のしやすさ・カスタマーサポートまで確認します。情報収集の目的は、流行に乗ることだけではなく、失敗の可能性を抑え、納得できる価値を選ぶことにあります。
このように、インドZ世代の生活価値観と購買行動は、「人とのつながりを大切にしながらデジタルを使って情報を比較し、自分なりの納得解を探す」ということが見えてきました。
この視点からインドZ世代を捉えることが、商品やサービスが選ばれるための重要なポイントになるでしょう。
調査概要
・対象:15~29歳の男女(Z世代)
・サンプル数:計1,329人(ベトナム337人、タイ324人、インドネシア368人、インド300人)
・調査期間:ASEAN3カ国 2025年2月7日~3月9日、インド 2026年3月24日~4月10日
・本記事における「ASEAN」:ベトナム、タイ、インドネシアの3カ国
・出典:INTAGE Research
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