imagesColumn

【中国:地球の暮らし方】「顔値経済」に影響される男性の化粧品使用

中国の若者の間で、美意識が高まる中で、「顔値即正義」という言葉も広がっている。中国語の「顔値」とは顔面偏差値のことで、先天的な部分もあるが、後天的に努力することで、変えることもできる。そこで、後天的努力の一つ重要な構成として、化粧がより多くの人に重視されている。しかも、この概念は、女性だけではなく、男性まで浸透している。これが、今になって「顔値経済」を推進する一つ大きな原動力となる。今回は、この「顔値経済」に影響され、中国の若者の男性がどういった化粧品を使っているのかについて、Consumer Life Panoramaの情報を使いながらご紹介する。

images

CLPの対象者。(左から:CN_13, CN_97, CN_100)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

関連記事一覧

第1回:【中国:地球の暮らし方】中国人はおしゃべり好きなのに、独立型キッチンを好むのはなぜ?
第2回:【中国:地球の暮らし方】風呂場とトイレが意外と広くない中国家庭
第3回:【中国:地球の暮らし方】中国家庭のリビング使用実態は玄関と冷蔵庫からわかる!
第4回:【中国:地球の暮らし方】空間最大限利用のためのバルコニー活用術とは?
第5回:【中国:地球の暮らし方】配線の自由度が高い中国住宅
第6回:【中国:地球の暮らし方】自宅に置かれている小物から見る中国人のライフスタイル
第7回:【中国:地球の暮らし方】中国住宅の住環境と掃除事情
第8回:【中国:地球の暮らし方】空間と地域で違うエアコン選択
第9回:【中国:地球の暮らし方】プライバシーと収納の考え方
第10回:【中国:地球の暮らし方】洗濯機を浴室やランドリーエリアに設置する理由は?
第11回:【中国:地球の暮らし方】古くから伝わる暑さ対策の知恵
第12回:【中国:地球の暮らし方】年収が同じでも、エリアの差が激しい生活環境
第13回:【中国:地球の暮らし方】部屋から分かる高所得層の家電ブランドを探る
第14回:【中国:地球の暮らし方】「国潮」に影響された化粧品ブランドの選好
第15回:【中国:地球の暮らし方】ミレニアル世代の子育て事情
第16回:【中国:地球の暮らし方】中国人の衛生意識
第17回:【中国:地球の暮らし方】「顔値経済」に影響される男性の化粧品使用
第18回:【中国:地球の暮らし方】パンデミックによる伝統医療への再認識をチャンスに
第19回:【中国:地球の暮らし方】じめじめした日に悩みを抱える中国南部の住宅
第20回:【中国・ベトナム:地球の暮らし方】おいしい酸味の秘訣とは
第21回:【中国:地球の暮らし方】子供の成長を考慮した部屋作り
第22回:【中国:地球の暮らし方】 競争社会における早期教育の需要
第23回:【中国:地球の暮らし方】地域とキッチン
第24回:【中国:地球の暮らし方】中国消費者のデンタルケア事情
第25回:【中国:地球の暮らし方】急速に発展するEV市場
第26回:【中国:地球の暮らし方】室内空気質へのこだわり
第27回:【中国:地球の暮らし方】中国人は水よりお湯を好む理由
第28回:【中国:地球の暮らし方】給湯器の普及と使用実態
第29回:【中国:地球の暮らし方】 寝室から見るライフスタイルの変化

男性にも波及する「顔値経済」

近年、中国で、ローカルブランドと海外ブランドの間での競争が激しい化粧品業界において、新しい市場ができつつある。それは若年男性向けの化粧品だ。中でも特に25歳以下、いわゆるZ世代の美へのこだわりが上の世代に比べて高い。女性の化粧ニーズに若い男性の美意識の向上、中国では「顔値経済」が爆発的に成長している。

男性の美意識の向上は特に化粧品消費の増加が顕著に現れている。男性のメイクアップやスキンケアに対し、日本と韓国ではもう当たり前になっているが、中国では一昔前はまだ否定的な意見が多かった。ところが、最近はガラッと変わった。その原因は3つあると考えられる。第一に、近年女性の経済的地位が向上することにより、男性への「顔値」に対する要求が高くなっていること。第二に、男性消費意識の覚醒により、自分へのケアをより重要視するようになっていること。第三に、ECの普及により、女性より利便性や効率重視を重視する男性消費者にとって化粧品がわざわざ店舗に行く必要なく、オンラインで簡単に買ったこと。

また、SNSへの書き込みも増加している。その一つの指標的な事件として、「口紅王子」といわれる中国有名のYouTuber李佳琦(リー・ジャーチー)のように、男性の美容ブロガーが増えてきていることが挙げられる。例えば、RED(小紅書)は以前女性がメイン使うイメージがあった。女性たちは RED(小紅書) を使って、化粧品やファッションの書き込みをシェアしたりする。今はユーザー層が拡大して、男性ユーザーも使用するようになってきていて、男性向けの化粧品やファッションの投稿が増えている。

images

RED(小紅書) でシェアされている男性化粧に関するコンテンツ。(筆者のアプリより)

化粧品使用実態

ここからは、Consumer Life Panoramaに登録されている男性生活者の持っている化粧品をご紹介しながら、男性化粧品の使用実態についてご説明したい。

images

対象者が所有する化粧品一覧。(左から:CN_13, CN_97, CN_100)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

今回ご紹介する3名の方は全員上海在住の25歳以下で、いわゆるZ世代の生活者である。筆者が注目している中国の若年男性の化粧品ユースに関する特徴について3つご紹介したい。

第一に、メイクアップより、まずはスキンケアを買う。女性とは違って、男性はまず自然とさわやかさを重視する。そのため、フェイスマスク、洗顔料、化粧水など、スキンケアを好む傾向がある。実際に、Consumer Life Panoramaに登録されているZ世代の男性の化粧品を確認すると、この3人に関してはスキンケア商品を保有している。また、メイクアップについては、ファンデーションやコンシーラーを購入する人がほかのカテゴリーより多いのではと思う。

第二に、価格より、機能性を重視する。商品を買うときには、特定のブランドにこだわるより、価格の高いものを買うことよりまず自分に合うかどうかを重視する。

第三に、「国潮」が男性市場にも影響を与えている。日本ブランドや欧米ブランド等、早期に中国に進出して、トッププレイヤーとなる海外ブランドが市場をリードすると同時に、国産ブランドも成長している。実際に、Consumer Life Panoramaに登録されているCN_13が持っている化粧品を確認すると、「寻荟记」というアロエの天然成分を使うことを強調する国産ブランドの保湿クリームを使っている。今はまだ主流ではないかもしれないが、その存在感が増しているのが間違いない。

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、デジタルライフをご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
Consumer Life Panoramaデモサイトはこちら
Consumer Life Panoramaの概要はこちら


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤンイェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。保湿のために、化粧水やクリームをたまに使う。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。化粧水を使うようになったが、メイクへの心ハードルはとても大きい。

転載・引用について
  • 本レポート・コラムの著作権は、株式会社インテージ または執筆者が所属する企業が保有します。下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。

    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
  • 禁止事項:
    • 内容の一部または全部の改変
    • 内容の一部または全部の販売・出版
    • 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
    • 企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
  • その他注意点:
    • 本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
    • この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
  • 転載・引用についてのお問い合わせはこちら