【中国:地球の暮らし方】「顔値経済」に影響される男性の化粧品使用
- 公開日:2022/02/09
- 更新日:2025/09/10
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中国の若者の間で、美意識が高まる中で、「顔値即正義」という言葉も広がっている。中国語の「顔値」とは顔面偏差値のことで、先天的な部分もあるが、後天的に努力することで、変えることもできる。そこで、後天的努力の一つ重要な構成として、化粧がより多くの人に重視されている。しかも、この概念は、女性だけではなく、男性まで浸透している。これが、今になって「顔値経済」を推進する一つ大きな原動力となる。今回は、この「顔値経済」に影響され、中国の若者の男性がどういった化粧品を使っているのかについて、Consumer Life Panoramaの情報を使いながらご紹介する。
CLPの対象者。(左から:CN_13, CN_97, CN_100)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
Consumer Life Panoramaとは
世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。
本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。
男性にも波及する「顔値経済」
近年、中国で、ローカルブランドと海外ブランドの間での競争が激しい化粧品業界において、新しい市場ができつつある。それは若年男性向けの化粧品だ。中でも特に25歳以下、いわゆるZ世代の美へのこだわりが上の世代に比べて高い。女性の化粧ニーズに若い男性の美意識の向上、中国では「顔値経済」が爆発的に成長している。
男性の美意識の向上は特に化粧品消費の増加が顕著に現れている。男性のメイクアップやスキンケアに対し、日本と韓国ではもう当たり前になっているが、中国では一昔前はまだ否定的な意見が多かった。ところが、最近はガラッと変わった。その原因は3つあると考えられる。第一に、近年女性の経済的地位が向上することにより、男性への「顔値」に対する要求が高くなっていること。第二に、男性消費意識の覚醒により、自分へのケアをより重要視するようになっていること。第三に、ECの普及により、女性より利便性や効率重視を重視する男性消費者にとって化粧品がわざわざ店舗に行く必要なく、オンラインで簡単に買ったこと。
また、SNSへの書き込みも増加している。その一つの指標的な事件として、「口紅王子」といわれる中国有名のYouTuber李佳琦(リー・ジャーチー)のように、男性の美容ブロガーが増えてきていることが挙げられる。例えば、RED(小紅書)は以前女性がメイン使うイメージがあった。女性たちは RED(小紅書) を使って、化粧品やファッションの書き込みをシェアしたりする。今はユーザー層が拡大して、男性ユーザーも使用するようになってきていて、男性向けの化粧品やファッションの投稿が増えている。
RED(小紅書) でシェアされている男性化粧に関するコンテンツ。(筆者のアプリより)
化粧品使用実態
ここからは、Consumer Life Panoramaに登録されている男性生活者の持っている化粧品をご紹介しながら、男性化粧品の使用実態についてご説明したい。
対象者が所有する化粧品一覧。(左から:CN_13, CN_97, CN_100)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))
今回ご紹介する3名の方は全員上海在住の25歳以下で、いわゆるZ世代の生活者である。筆者が注目している中国の若年男性の化粧品ユースに関する特徴について3つご紹介したい。
第一に、メイクアップより、まずはスキンケアを買う。女性とは違って、男性はまず自然とさわやかさを重視する。そのため、フェイスマスク、洗顔料、化粧水など、スキンケアを好む傾向がある。実際に、Consumer Life Panoramaに登録されているZ世代の男性の化粧品を確認すると、この3人に関してはスキンケア商品を保有している。また、メイクアップについては、ファンデーションやコンシーラーを購入する人がほかのカテゴリーより多いのではと思う。
第二に、価格より、機能性を重視する。商品を買うときには、特定のブランドにこだわるより、価格の高いものを買うことよりまず自分に合うかどうかを重視する。
第三に、「国潮」が男性市場にも影響を与えている。日本ブランドや欧米ブランド等、早期に中国に進出して、トッププレイヤーとなる海外ブランドが市場をリードすると同時に、国産ブランドも成長している。実際に、Consumer Life Panoramaに登録されているCN_13が持っている化粧品を確認すると、「寻荟记」というアロエの天然成分を使うことを強調する国産ブランドの保湿クリームを使っている。今はまだ主流ではないかもしれないが、その存在感が増しているのが間違いない。
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執筆者プロフィール
ヤンイェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。保湿のために、化粧水やクリームをたまに使う。
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編集者プロフィール
辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。化粧水を使うようになったが、メイクへの心ハードルはとても大きい。