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【各国結婚と資産事情】サウジアラビア編:結婚するときの準備

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2018年に女性の自動車運転が解禁となったサウジアラビア。その後も女性だけでできることが増え、社会進出する女性が多くみられるようになった。今回は、サウジアラビアの結婚事情と結婚するときに必要な準備について、結婚式を控えている20代のカップルである、男性ムハマドさんと女性マリアムさんの話を交えながら紹介する。

サウジアラビアにおける結婚について

サウジアラビアでは結婚するにあたって、大きく2つのパターンがある。一つは男性が結婚したいタイミングを家族に伝え、家族がアレンジする(特定の相手がいない)パターン。もう一つは男性が結婚したい人を家族に伝える(特定の相手がいる)パターン。 どちらも男性のアクションがキーポイントとなっている。

ここでは二つ目の、男性が家族に結婚したい人を紹介するパターンで、結婚までの一般的なステップを紹介する。

まず初めに男性は母親に結婚したい女性がいることを伝え、その女性の母親に電話をするようにお願いする。そして話し合いの場を用意し、男性と母親、女性の両親とでそれぞれのことを深く知るために、両家で話し合いをする 。

その後、男性と女性で5分ほどの対面を行い、その際に女性はアバヤ(身体のラインを隠す黒いマントのような服)やヒジャブ(スカーフ)などカバーはしない。特定の相手がいないパターンの場合は、この対面まで面識が無い事もある。

対面後、男性は数日から1週間女性の家族からの連絡を待ち、女性側の家族から承諾があった場合、ホトバと呼ばれる婚約式が女性側の家で行われる。その際は男性の家族・叔父、叔母なども招待し、コーランの一部を読み上げる。基本的には女性側が夕食、コーヒーや紅茶などのおもてなしをする。

婚約式と結婚式の間に は男性と女性のデート期間がおおよそ3か月から6か月の間設けられ、男性側はこの期間に結婚式に向けた資金の準備をする。婚約前にデートはできない。

1回目の結婚式はモスクか女性の家で行われる。Sheikh(シェイク、部族の長老、首長や崇拝される賢人)と呼ばれる人を挟んで、男性(新郎)と女性(新婦)の父親が座り、握手など慣例の儀式を行い結婚が成立する 。この場に新婦は不在。昔は紙ベースの結婚契約書だったが、今はスマートフォンやパソコンなど電子機器で行える。

その後、メルカ という男性(新郎)の結婚式が行われる。男性のみ出席する形になり、新郎の男性の家族と友達、新婦の男性の家族だけが結婚式に参加。男性の結婚式は、新婦の父親が式場の費用を出す。もし人数の多い結婚式をする場合は新郎が出すこともある。

そして新郎の女性の家族と新婦の女性の家族と友達だけが参加する、ザワージュと呼ばれる女性の結婚式が行われる。新郎新婦は式の最後にお披露目。その際は、女性の参加者は全員アバヤとヒジャブを着ける。新郎は5分から30分ほど式に参加する。こちらは新郎が費用を準備するとされている。

上記のような結婚式までの流れは、サウジアラビアの西側にあるジッダでの段取りとなっており、お互いの住居地が異なる場合や遊牧民の場合はまた違った流れになる。

男性側が準備する資産

結婚式に至るまでに、ほとんどの資産を男性側が準備する。マハルと呼ばれる女性に渡す現金の金額は様々で、相場は20,000 SAR(約75万円)~ 100,000 SAR (約375万円)となっており、中にはこれ以上の金額を渡す人もいる。マハルと一緒に装飾品を贈る習慣があり、指輪、ブレスレット、ネックレスなど、ゴールドのアクセサリーを贈る。ムハンマドさんは、婚約式にマリアムさんにブレスレットをプレゼントしている。一般的にサウジアラビアの生活者はダイヤモンドよりも金の装飾品を好んで購入することが多く、例えば出産祝いに赤ちゃんに金のブレスレットをプレゼントしたりする習慣がある。

マハルと装飾品は、Oud(ウード・沈香)と共に箱の中に入れて女性の家に持参する

住宅に関しては、家や全ての家具についても男性側が準備することになるが、家の購入の資金を用意することが難しい場合もある。マリアムさんによると最近ではアパートを借りる人が増えているという。その背景には消費税が15パーセントに上がったことや、コロナの影響で給料が低下していることが考えられ、アパートの家賃は1年で20,000SAR(約75万円)~40,000SAR(約150万円)が相場。一方で、結婚して数年後に戸建ての新築を建てる人もいる。

結婚指輪は男性がどちらの分も用意することもあれば、新郎が新婦の指輪を、新婦が新郎の指輪を準備することもある。サウジアラビアでは、婚約指輪は主流ではなく、メルカの際は右手薬指に指輪を着け、ザワージュの時に左手薬指に着ける方もいるようだ。

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金のアクセサリーが人気

結婚や家族を持つことを若い頃から意識

サウジアラビアの20代の男性は「アルバイトではなく、収入の良い仕事に就きたい」と就職活動に励んでおり、なぜ良い収入の仕事にこだわるのか聞いた所「将来の結婚までに、お金と家を準備していたい。」と話していた。このような意見を持っている男性は多く、「結婚」に興味を持っている人が多いように感じられる。サウジアラビアでは、結婚までに必要な費用だけでなく、結婚後も男性が女性を経済的に支えるという考えを持っている人が多く、男性は若いうちから「結婚」や「子どもをもつ」などの将来を意識して就職をしている人が多いと考えられる。

サウジアラビアでは結婚に際して女性が準備する資金はほとんどなく、準備するものは結婚式のための写真撮影の女性カメラマンをお願いすることや白いドレスなどになる。 また新郎から贈られるマハル(現金)で、新婦は新しい洋服や靴、アクセサリー、カバンなど一通り買い揃えることができる。それは新婦の新しい門出を表すことになり、結婚式を挙げる日まで自分の美を磨くことに尽くし、美容院や美容クリニック、歯医者などに行く人も多い。

女性の運転も解禁された、車社会のサウジアラビア

サウジアラビアで生活する上で車は必要不可欠なもので、通勤から学校の送り迎えまで移動手段として利用されている。ドライバーを雇っている場合も多い。日本の自動車は信頼されていて、トヨタを支持している人が多く、女性ドライバーにも人気となっている。

最近では中国製の自動車もリーズナブルな値段で購入できることが人気で、よく見かける。

2018年の女性の運転解禁以降、彼女たちは自動車運転免許証の取得に励んでおり、教習所が少ないこともあり一時期は4か月待ちの頃もあったようだ。

結婚を理由に、車を購入すると考えている人は少ないと思われる。

サウジアラビア人は、結婚の準備に男性が用意する資産が多くなっている。しかし近年は、女性の社会進出も徐々に進み、女性で働いている人も増えてきた。この様なことからも、時代が変わってきていることを感じる。

インテージのネットリサーチによる自主調査データ

調査地域:日本、中国、香港、タイ、インドネシア、ベトナム、インド、アメリカ、スウェーデン
対象者条件:
・男女20歳~49歳、(人口構成比に合わせてウェイトバックあり)
・主要都市在住(以下参照 ) ・SEC 中間層以上
標本抽出方法:オンラインアンケート調査
標本サイズ:n=328(日本)n=407(中国)n=329(香港)n=323(タイ)n=341(ベトナム)n=339(インドネシア)n=344(インド)n=324(アメリカ)n=327(スウェーデン)
調査実施時期: 2022年2月16日~3月16日
詳細はこちらから >>https://www.global-market-surfer.com/report/detail/152/

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  • TNCライフスタイル・リサーチャー

    執筆者プロフィール
    TNCライフスタイル・リサーチャー

    株式会社TNCが運営する、世界70ヵ国100地域600名に住む日本人女性のネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」が、数字では見えてこないトレンドや、生活者の生声を切り出します。その生情報を元に、企業の課題解決のための提案や商品企画を行っています。 https://www.tenace.co.jp/ 担当者プロフィール:サウジアラビア在住6年目。サウジアラビアの結婚は、他の国と大きく異なる点も多く、改めて色んな発見と驚きがありました。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    チュウ フォンタット

    マレーシア人リサーチャーです。15年前から来日し、今も東京を拠点とし、東南アジアをはじめ海外のインサイトについて発信しています。

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