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【中国:地球の暮らし方】「国潮」に影響された化粧品ブランドの選好

前回(【中国】部屋から分かる高所得層の家電ブランドを探る)では、「国潮」に影響されている中の中国の生活者たちの家電ブランドの選好について説明した。実はこのような影響は化粧品ブランドでも表れている。今回は中国人女性の化粧品ブランドの選好について、Consumer Life Panoramaに登録されている生活者を中心に紹介したい。

都市によって違う化粧品ブランド選好

中国では、北京、上海、広州、深センといった4つの一級都市と、近年急速に発展する杭州、重慶、成都など15個の新一級都市以外に、二級、三級等地方都市もたくさん存在している。都市によって収入や生活コストも異なるし、生活習慣も異なる。また、ブランドに対する情報量の差なども生じる。今回は比較的上位の収入層である一級都市上海在住のAさんとハルビン在住のBさんが持っている化粧品ブランドを比較してみよう。

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上海在住のAさんのスキンケア用品(左上)とメイクアップ用品(右上)
ハルビン在住のBさんのスキンケア用品(左下)とメイクアップ用品(右下)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama))

Consumer Life Panoramaとは


世界18カ国1,000名以上の生活者のビジュアルデータを蓄積した、ウェブサイト型データベース。住環境を閲覧できる3Dモデルや、各生活者の保有アイテムを撮影した2Dデータが多く搭載されており、文字や数字だけでは把握しづらい海外生活者の理解に役立つ。


本コラムで引用したようなビジュアルデータを用いて、
・海外生活者の属性別の違いを比較する
・カテゴリーの使用実態をリアルに把握する
・ターゲット生活者のライフスタイル全体を理解する
等、「現地に行かない」ホームビジット調査として活用が可能。

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AさんとBさんの所持ブランド一覧 (出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama)) 

まずはスキンケア化粧品。Aさんはプレステージブランドをメインに使っている。中でも特にCPB、the Ginzaなど日本ブランドをメインに使っている。一方で、Bさんは日本ブランドではなく、コストパフォーマンスのいい国産ブランドや海外ブランドを使っている。次に、メイクアップ化粧品を見てみると、AさんはYSL、Tom Ford、Dolly winkなど海外ブランドも使うし、Judydollといった中国ブランドも使っている。それと対照的にBさんは中国ブランドしか使っていない。

実はAさんは商品を選ぶ際に、独自性と実用性を一番重視している。ブランド知識も豊富なので、様々なブランドから独自性のあるものや自分に合うものを選ぶことができる。例えば、メイクアップ化粧品はそれぞれの化粧の部位や使用シーン等によって特徴的なブランドを国籍問わずに選んでいるが、スキンケア化粧品に関しては、アジア人の肌に合う品質のいい日本ブランドをメインに使っている。

一方で、BさんはAさんほどブランド知識豊富なわけではないので、様々な情報源から情報収集して勉強、試行錯誤をしている。Bさんは特に口コミを重視していて、買い物をする前には、必ずオンラインで口コミをチェックする。それ以外に、もう一つの情報源はネット上のKOLKOC。彼女はKOLKOCから勧められた商品について、口コミをチェックしながら買い物をして試している。そのため、今、日本ブランドは使っていないが、決して日本ブランドを絶対買わないわけではなく、中国のSNS上でもっと接点を増やしていけば、Bさんみたいな地方都市の消費者も今後日本ブランドを買う可能性は多いにあるだろう。

収入よって違う化粧品ブランド選好

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上海在住のCさんのスキンケア用品(左)とメイクアップ用品(右)
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama)) 

中国:上海在住のAさんとCさんの化粧品所持ブランド一覧

AさんとCさんの所持ブランド一覧
(出典:生活者データベース(Consumer Life Panorama)) 

また、ブランド選好は、同じ都市でも収入が違うことによって異なる。AさんとCさんは同じ上海に住んでいる。Aさんの世帯月収は約45万円、Cさんの世帯月収は約24万円である。Cさんはメイクアップ化粧品ではYSL等プレステージブランドも使っているが、コストパフォーマンスがよい韓国ブランドのHeraや中国ブランドのHuaxizi(花西子)も使っている。スキンケア化粧品に関しては、欧米ブランドをメインに使用するが、Aさんほどハイブランドを選択していない。

スキンケア化粧品は、アジア人の肌に合うことや品質がいいことを期待され、日本ブランドが選択されていたりする。一方で、メイクアップ化粧品は、海外ブランドの代わりに新興の中国ブランドも選択されるようになってきている。実際に、中国では今Huaxizi(花西子)やPerfect Diary(完美日記)等のような新興の中国ブランドは主にメイクアップ化粧品を中心に商品を展開している。

実は、このような商品はチャイボーグ(中国メイク)と一緒に、中国国内だけではなく、日本の若い女性の間でも受け入れられつつある。「国潮」は中国消費者だけでなく、海外でも影響力を拡大していく可能性があるので、中国ブランドの今後の発展に着目したい。



  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。最近ドラッグストアや化粧品店に行くと、中国化粧品ブランドが日本でも上陸していると気づいた。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。10代で留学した時に同年代の男性の韓国人留学生がスキンケアをしていて、肌への意識の高さに大きな衝撃を受けた。

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