imagesColumn

[China: World Residence Tour] Explore the high-income consumers' electronics brands that can be found in their rooms.

昔、中国ブランドと言ったら、安っぽくて、デザインもダサく、品質もあまりよくないというイメージだったかもしれないが、今では大きく印象が変わってきている。特に近年中国国内では「国潮」が流行る中、中国のメーカーも昔のこのような印象を払拭しようと、中国国内マーケットでのイメージアップのみならずグローバルでもイメージアップをしようと働きかけている。特定の商品カテゴリーにおいては、グローバルブランドと太刀打ちできる中国ブランドも現れている。このようなトレンドの中で、高所得層はどのように家電を選んでいるか。Consumer Life Panoramaに登録されている上海の3人の生活者が持っている家電をご紹介しながら、一緒に探求していこう。

今回ご紹介するのは、上海の中でも比較的収入が高く、保有している自動車が電気自動車(EV)といった先進的な世帯の3人にあたる。

images

対象者の車。左から:XpengCN_28, XpengCN_30, TeslaCN_54
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama) 
Consumer Life Panoramaの概要はこちら)

images

対象者の家の内装イメージ。左から:CN_28, CN_30, CN_54
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

関連記事一覧

Vol.1:[China] Why do the Chinese consumers prefer closed kitchens even though they love to talk?
Vol.2:[China] Why bathroom and toilet are relatively small in Chinese households?
Vol.3:[China] The entrance and refrigerator are the key to understand how do Chinese households use living room
Vol.4:[China] How do Chinese households use their balcony?
Vol.5:[China] High flexibility on electric wiring
Vol.6:[China: World Residence Tour] Chinese Lifestyle as Seen from Small Items in the Home
Vol.7:[China: World Residence Tour] The Living Environment and Cleaning Conditions of Chinese Housing
Vol.8:[China: World Residence Tour] Different air conditioner choices for different spaces and regions
Vol.9:[China: World Residence Tour] Ideas about Privacy and Storage
Vol.10:[China: World Residence Tour] Why do they install washing machines in the bathroom or laundry area?
Vol.11:[China: World Residence Tour] Ancient wisdom on how to cope with the heat
第12回:【中国】年収が同じでも、エリアの差が激しい生活環境
第13回:【中国】部屋から分かる高所得層の家電ブランドを探る
第14回:【中国】「国潮」に影響された化粧品ブランドの選好
第15回:【中国】ミレニアル世代の子育て事情
第16回:【中国】中国人の衛生意識
第17回:【中国:地球の暮らし方】「顔値経済」に影響される男性の化粧品使用
第18回:【中国:地球の暮らし方】パンデミックによる伝統医療への再認識をチャンスに
第19回:【中国:地球の暮らし方】じめじめした日に悩みを抱える中国南部の住宅
第20回:【中国・ベトナム:地球の暮らし方】おいしい酸味の秘訣とは
第21回:【中国:地球の暮らし方】子供の成長を考慮した部屋作り
第22回:【中国:地球の暮らし方】 競争社会における早期教育の需要
第23回:【中国:地球の暮らし方】地域とキッチン
第24回:【中国:地球の暮らし方】中国消費者のデンタルケア事情
第25回:【中国:地球の暮らし方】急速に発展するEV市場
第26回:【中国:地球の暮らし方】室内空気質へのこだわり
第27回:【中国:地球の暮らし方】中国人は水よりお湯を好む理由
第28回:【中国:地球の暮らし方】給湯器の普及と使用実態
第29回:【中国:地球の暮らし方】 寝室から見るライフスタイルの変化

海外ブランドの強みと日本ブランドの得意分野

中国人の家電に対する海外ブランドへの信頼はまだ厚いが、中国ブランドの存在感も高くなってきている。
まず、大型家電のブランドをみてみよう。例えば、冷蔵庫の場合、この3世帯のうち、2世帯がドイツブランドや日本ブランドを持っている。また、洗濯機に関しても同じ傾向が見られる。生活者CN_28の家では冷蔵庫も洗濯機もそろってボッシュを使用し、生活者CN_30の家では、パナソニックの洗濯機を使用している。一方で、生活者CN_54の家では2台の洗濯機を持っているが、主に使用しているのがLGの洗濯機となる。それはやはり、海外のブランド、特にドイツブランドと日本ブランドに対して、耐久性がよく、品質もいいというのが共通して抱いているイメージであることが一因として考えられる。

images

冷蔵庫(上)と洗濯機(下)ブランドの国籍一覧
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

大型家電以外にも日本ブランドの得意分野がある。美容家電がその代表的なカテゴリーのひとつだ。今回の3世帯のうち、2世帯(CN_30とCN_54)がパナソニックのヘアドライヤーを使用している。(残りの1世帯はダイソンのヘアドライヤーを使っている。)特にCN_54では日本ブランドのヘアドライヤー以外に、ヤーマンの美顔器も持っている。

images

CN_30のヘアドライヤー(左)、CN_54のヘアドライヤー(中)と美顔器(右)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama)
Consumer Life Panoramaの概要はこちら)

特定分野で強みを構築している中国ブランド

一方で中国ブランドは特定の分野で自分の強みを構築しているようだ。今回ご紹介する上海の3世帯が持っている家電ブランドをカテゴリー別に整理すると、主に3つの傾向がみられる。

images

家電ブランドの国籍一覧(筆者がCLPの情報より整理)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

第一に、中国ブランドは中国生活者のライフスタイル変化をいち早くとらえてそれに合わせた製品を出している。中国料理といったら、油をたくさん入れて、火を使って炒めたり、揚げたりすることが多い。特に炒めるときには、火の上で鍋振りをかなりの頻度でしないといけない。そのため、今まで中国のキッチンにはガスコンロが主流であった。しかし、近年西洋的な調理方法もだんだん浸透し、調理方法も多様化になっている。例えば、中華炒めなど以外に、オーブンを使って焼いたりすることも増えている。また、ガスコンロの代わりにIHコンロもその効率性、安全性と手入れのしやすさから、中国でも一部の消費者の中で人気を呼んでいる。

images

中国ブランドのオーブン(CN_54)とIHコンロ(CN_28)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

CN_28のキッチンにあるIHコンロがまさにTaigroo(鈦古電器)という2015年成立した中国ブランド。Taigrooはこの傾向をいち早くとらえて、シンプルなデザインを特徴として、ハイエンド向けのIHコンロと関連の調理器具に特化して製品を作っている。

第二に、中国ブランドは中国生活者ならではの生活習慣に満たす製品を出している。

images

CN_54のコーヒーマシン(左)と子供の服用の小型洗濯機(右)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

海外では朝にコーヒーを一杯飲むのと同じように、中国では豆乳を朝食の時に飲むことが一般的。CN_54のダイニングには、一台のコーヒーマシンが置かれている。これはJoyongという中国メーカーが出しているOnecupというブランドのコーヒーマシン。ほかのブランドと違って、このコーヒーマシンはコーヒーを作る以外に、豆乳も作ることができる。共働きの忙しい朝、たった30秒で大人向けにはコーヒーを、子供向けには豆乳を用意できるということもあって、中国では人気となっている。

もう一例を挙げよう。今までの一人っ子政策の影響か、中国の家庭は子供に対してかなり大事にして育てている。その程度がある角度からすると、日本以上に気を付けているといっても過言ではない。例えば、CN_54は3歳の子供がいる3人家族。親たちは子供を元気に成長させるために、健康かつ清潔な環境を作るのに様々な工夫をしている。特に気を付けているのが、細菌やウイルスから子供を守るという点だ。この世帯では大人用の洗濯機以外に、なんと高温消毒機能をついているHaierの子供の服用の小型洗濯機も持っている。

第三に、中国ブランドは進んだAI、IoTの技術をいち早く取り入れて安い価格で製品化している。中国はよくIT先進国といわれている。中国の家電メーカーもこういった先進技術をどんどん取り入れ、家電を進化させている。しかも、国内生産なので、値段も抑えている。その結果、海外の同じ機能を持つ製品と比較して、値段が安く、コストパフォーマンスがいいとよく評価される。例えば、スマートスピーカーは大手のBAT(Baidu, Alibaba, Tencent)三社以外に、XiaomiやHuaweiなども出している。特にXiaomiはそれ以外にもスマート家電を複数持っているので、生態圏まで形成している。また、掃除ロボットも同じで、海外ブランドと同じ値段のものはよりスマホとの連動がよく、機能も多いので、人気がある。

images

スマートスピーカー(左:CN_28, 中:CN_30)とロボット掃除機(右:CN_54)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

まとめ

「国潮」という中国語は中国の要素を取り入れたファッショントレンドのことを意味する。ここでいう中国の要素は中国の伝統文化、中国風デザインのことだけでなく、中国のテクノロジーと技術力もそのひとつ。ここ数年、中国経済が進み、人々が豊かになってくると同時に、愛国心も高まっていることが背景。

それと同時に、中国のメーカーもローエンドのものの製造から付加価値の高いものを挑戦し、XiaomiHuaweiなどのようなハイテク企業が成長してきた。その結果、中国産はコストパフォーマンスがよく、品質も外国ブランドに劣らないという意識が広がってきた。海外ブランドと比べて、中国ローカルのブランドの強みは中国生活者の理解とそのライフスタイル変化への対応のスピードにある。

一方で、前述のように、日本ブランドは品質が評価されている以外に、独自の優位性も依然として存在している。いかにしてその独自の強みを発揮しながら、中国生活者のニーズを正しく理解して、いちはやく対応するかはこれから日本ブランドにとっての課題かもしれない。

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、デジタルライフをご覧頂くことができます。 本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
Consumer Life Panoramaデモサイトはこちらからご覧いただけます。
Consumer Life Panoramaの概要はこちら


  • Intage Inc

    Author profile
    Yang Yan

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。日本でも中国のTV番組を見たいので、わざわざ中国からXiaomi smart TV boxを持ってきた。

  • Intage Inc

    Editor profile
    Yusuke Tatsuda

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。朝は牛乳派だが、今回のコラムをきっかけにホームメイド豆乳に興味を持った。

Reproducing and quotation
  • The copyright of this report/column is held by Intage Inc. or the company to which the author belongs. Please confirm the following prohibitions and cautions, and specify the source when reproducing or quoting.
    Example:
    "Source: Intage's Research Report "(Report title) (issued on DD/MM/YYYY)"
    "Source: Global Market Surfer, article published on DD/MM/YYYY"
  • Prohibiton:
    • Modification of part or all of the contents
    • Sale or publication of part or all of the contents
    • Use that is offensive to public order and morals or that leads to illegal activities
    • Reprpducing or quotation for the purpose of advertising or sales promotion of companies, products, or services.
  • Other cautions:
    • We are not responsible for any trouble, loss or damage caused by the use of this report.
    • These terms of use do not restrict the use of quotations, etc., which are permitted under the Copyright Act.
  • If you have any questions about reprinting or quotation, please contact us from here