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【ベトナム:地球の暮らし方】 日本の味覚がベトナムで通用するか

筆者は4月からAjimiという日本企業の商品の試飲・試食の体験型店舗を運営するために、ベトナムのホーチミン市に入った。早くも1ヵ月過ぎて、たくさんの現地の消費者と接し、様々なベトナム料理も体験してきた。今回はこの1ヵ月で実感したベトナム人の味覚の特徴及びその中に潜んでいる日本商品のチャンスについて、Consumer Life Panoramaに登録されている生活者のデータも使いながらご紹介する。

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さっぱりした味は日越の共通言語?

ベトナムは南北に細長い国なので、地域によってもちろん料理もそれぞれ違う特徴を持っている。

例えば、南北の味の特徴を比較すると、北部は比較的あっさり味。フォーは北部の料理で、ハーブなどは殆ど用いず、スープは澄んでいる。一方、南部のフォーはハーブやもやしを大量に投入。好みによって黒醤(海鮮醤)やチリソースなどを加えるのでかなりコクがあり、食べ終わった後のスープは濁っている。

また、南部の人の方が、辛いなら辛い、甘いなら甘い味がしっかり出ているのを好み、北部の人はどれも突出していない調和のとれた味を好む傾向がある。

ここではあくまでも筆者が滞在するホーチミン市が代表となる南ベトナムの料理を中心に、その特徴について共有することを冒頭で説明しておきたい。

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さっぱりした味、ハーブを大量に使うベトナム料理(筆者より)

ベトナム料理と言ったら、まずさっぱりした味、ヘルシー等のイメージが強いだろう。そのうち、筆者も特に実感したことは料理の味がさっぱりしていることだ。フォー、麺、ご飯ものや春巻きなど、どれもさっぱりしたベースとなっている。そのかわりに、つけだれ、ソース、調味料や香辛料の種類が豊富である。人それぞれの好みに応じて、適量かけたり、つけたりすることが多い。また、ハーブの種類も豊富で、好みで入れることで、自分流の味付けができるのだ。(さらに、料理だけでなく、果物もチリソルト等をつけて食べる習慣もある。)

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お弁当も、レストランも、一皿の料理に必ずドレッシングが付く(筆者より)

また、実際の家庭の調理場やスーパーに行って見てみても、調味料の種類が多いことに気づくだろう。それは、料理によって、違うつけだれやソースを使って味のアレンジをしているのかもしれない。

ベトナムでは、ヌオックマム(魚醤)、中国からの醤油、オイスターソース、フランスをはじめとする欧米文化からのケチャップやチリソース、という具合に、様々な文化圏からの調味料が入り込み、うまくミックスされているのだ。さらに、ライム、生唐辛子、ニンニクなどフレッシュな調味料のほか、輸出量世界トップのコショウ、魚やエビの発酵調味料(マム)もある。

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ベトナム家庭の調理台に置かれている調味料(VN_96, VN_64)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

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ベトナムのディスカウントショップで販売されている調味料の一例(筆者より)

今までベトナムの味覚について紹介してきた。さて、日本料理もさっぱりした味だとよく言われるので、ベトナムでもそのまま通用できるのではないか。

実は、ベトナムはさっぱり味と言っても、日本のさっぱり味とはかなり違い、スパイスもたくさん使い、基本的にうま味調味料(味の素)やスープの素を多用するので、同じさっぱりでも、日本と同じだという風に受け止めてはいけない。また、二ヵ国ともうま味を追求するが、日本はほとんど魚介類等を使ってうま味を引き出すのに対し、ベトナムでは鶏や牛等を使うことが多いらしい。

また、日本食の受け入れ状況を見てみると、確かに、ベトナムでは今日本食が人気だ。都心部を歩くと、寿司屋さんはあっちこっちにあり、スーパーでも寿司が販売されている。ただ、それが日本のお菓子などの食をそのまま持ってきて必ず成功するとは言い切れないことに気をつけていただきたい。

今回のAjimiプロジェクトで、4月15日から日本の人気商品30品を弊社側でセレクトして、ベトナムのホーチミン市で期間限定店舗で紹介してみた。ここでは、Ajimiプロジェクトの一例をあげよう。

30品のうち、大豆成分由来の唐揚げ風味スナックやトンカツ風味スナックは、試食をする消費者が多かった。ところが、試食したものに対するポジティブとネガティブの評価を聴取したら、しょっぱいというコメントを多くもらった。同じさっぱりした味が特徴な国でも、パッケージや成分等についていくら好評を受けたとしても、味を現地に合わせてアレンジしないと、リピートが難しいかもしれないだろう。

現地スーパーで見た日本の味の現状は?

日本の味覚の媒体は麺つゆ、ポン酢、しょうゆなど日本食によく使われている調味料である。このようなものはホーチミン市ではどこで、どうやって販売されているのだろう。

ホーチミン市では、日本の調味料を販売する主な場所は3つある。ひとつはAeon SupermarketやAeon Citimartなど日系スーパーの日本商品コーナー。ひとつは現地人が経営する日本食材日用品店。もうひとつはAnnam Gourmetといった富裕層向けの高級輸入食品店。

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ベトナムの売り場にある日本の調味料(筆者より)

店舗によっては品揃えがかなりいいところもあるが、どれもただ単純に商品を並べて置いてあるだけ。商品名と価格のラベルはあるが、それ以上の情報がない。

ベトナム料理はつけだれやソースなどを使用して食べる習慣があるため、日本の調味料もうまくローカルのアレンジ方法を開発できたら、受け入れられる可能性があるのではと感じている。商品を並べているだけでは、日本のことをよく知っている人や日本人にしか買ってもらえず、現地の人にはなかなか購入してもらえない。いかにして、海外でブランディングをするかは現地を知り、知恵を絞って考るしかない。

【Ajimiとは】

Ajimiは日本商品テストマーケティング専門店舗です。4月15日よりホーチミン市のAeon Mall Binh Tanにて、日本企業の商品の試飲・試食の体験型スペースを3か月間テストオープンしております。その場でベトナム生活者の意識・行動データを取得することが可能です。
■実施場所:Aeon Mall Binh Tan (ホーチミン市Binh Tan区) 2階 (表示階は1F)
■期間:2022年4月15日~6月26日
出品カテゴリ:主に食品・飲料・健康食品・嗜好品(一部ビューティアイテム)
■費用:出品料無料(輸送費用等実費ご負担いただきます)
申し込み方法等の詳細につきましては、こちらのファイルをご参照ください:(PDFファイル)
■Ajimiへの出品希望の方はこちらからもお問い合わせいただけます

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Ajimi店舗の写真(筆者より)

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、デジタルライフをご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
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  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。初めての1ヵ月以上の海外出張ではあるが、すっかりベトナムでの生活になじんでいる。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。フォーにハーブをたくさん入れて食べるのが好き。

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