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【ベトナム:地球の暮らし方】Ajimiでの試食活動から覗くベトナムの味覚特徴

前回(【ベトナム:地球の暮らし方】 日本の味覚がベトナムで通用するか)ではベトナムの味覚及びその中に潜んでいる日本商品のチャンスについて、筆者のベトナム出張の体験とConsumer Life Panoramaに登録されている生活者のデータを使ってご紹介した。今回は、ベトナムでインテージが店舗運営している「Ajimi」という日本商品の体験スペースで、入店する現地の顧客たちが実際に日本の伝統的な食べ物を試食した結果をご紹介して、ベトナム消費者の味覚に関する特徴及び日本の味の受容状況をご説明する。今回はインテージメンバーの任意で、日本の伝統的な食べ物である梅と甘酒の商品を数種類選んで、現地の消費者に試食していただいた。ここからは一緒にその試食の結果を見てみよう。

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梅系商品の試食結果

日本では古くから梅干し、梅酒など梅を使った食品が人々に愛されている。実は、ベトナム北部では干し梅を食べる習慣もある。ただ、日本の酸っぱさを強調する梅干しと違って、甘さで酸っぱさをより中和させて甘酸っぱい味が特徴だ。

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ベトナムの甘酸っぱい干し梅(筆者撮影)

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Ajimiでは、いくつかの梅系商品を選んで消費者に試食してもらった。ここでは、特に特徴的なもの3品をピックアップして、その試食結果をご紹介したい。今回ピックアップした3品はそれぞれ、アイファクトリー梅ぼしのシート、ノーベル男梅シートとサンガリア梅ソーダ。

アイファクトリーとノーベルの2品はどれも梅シートだが、味はかなり違う。前者は普通の梅シートより甘さ多めに甘酸っぱい味で薄く柔らかいシート状に作られている。一方、後者は本格的で濃厚な梅干しの味わいを強調し、厚い正方形の形に作られ、噛めば噛むほどしみ出す濃厚な梅の味わいが楽しめるシート菓子。それ以外に、飲料の場合、サンガリアの梅ソーダを選んだ。蜂蜜入りなので、こちらも甘くて飲みやすい味わいとなっている。

消費者はAjimiで商品のパッケージや商品紹介のPOPを見て、陳列されている30商品のうち、2商品の試食を申し込むことができる。5月15日までに、上記3商品を試食した人数はそれぞれ49人、34人と63人。(出品時期が違うため、試食人数だけでは人気があるということが言えない)

試食前に、購買意欲を聞いた結果、どれもほぼ同じレベルだった。選択理由に関して尋ねたところ、どれも「パッケージ」「成分、原材料」「味の紹介」を選択理由に挙げる割合が高い。

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梅系商品の試食前の購買意欲と理由(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

その後、上記商品を選んだ消費者に、実際に商品を試食して、味と試食後の購買意欲も聞いた。その結果、「濃厚な梅干しの味」を強調するノーベルの男梅シートよりも、「甘酸っぱい新食感」を強調するアイファクトリーの梅ぼしのシートのほうが、「とてもおいしい」「おいしい」を選んだ割合が高い。また、同じく蜂蜜入りのサンガリアの梅ソーダも高く評価されている。その試食結果に影響されて、3商品の購買意欲にも差が出た。

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梅系商品の試食後の味覚評価と購買意欲(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

最後に、試食した商品の評価について、ポジティブとネガティブの2つの面から意見を聞いた。取得したテキストデータに対して、テキストマイニングを行い、キーワードを出現頻度で整理した。(日本語のテキストはベトナム語の原文を機械翻訳したもの)

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↑アイファクトリー梅ぼしのシートへの評価(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

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↑ノーベル男梅シートへの評価(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

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↑サンガリア梅ソーダへの評価(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

その結果、試食後の購買意欲が高いアイファクトリーとサンガリアの商品へのポジ評価のうち、「甘い」というキーワードが共通として出現頻度が高い。一方で、ノーベルの味の特徴があるものなので、人の好みによって、ポジティブな評価とネガティブな評価がかなり分かれている。同じ「酸っぱい、塩辛い/しょっぱい」でも、それが原因で好きな人もいれば、好きでない人もいる。最初でもご紹介したように、北ベトナムには甘みがメインの干し梅といった伝統的な食べ物がある。酸味が強い日本の梅干しとかなり異なるため、日本の梅干しに慣れていない人が多い可能性が考えられる。

甘酒商品の試食結果

梅系商品の試食結果から、ある程度、ベトナム人は「酸っぱい」「塩辛い/しょっぱい」よりも「甘い」味が好きだということがうかがえるのだろう。ただ、それが甘いものであれば、どれも受け入れやすいという意味ではない。この結論については、甘酒商品の試食結果を使って説明をしたい。

ベトナムでは、お米を発酵させた発酵食品「コムルウ」というものがあるが、これは日本の甘酒みたいに、飲用するものではないので、日本の甘酒はベトナム人にとって新規性がある。今回、「Ajimi」で甘酒商品も何種類か出品してみた。ここでは、ナショナルブランドの森永甘酒と地方メーカの福光屋シルキー糀甘酒をピックアップしてご紹介したい。

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Ajimiで出品した甘酒商品(左から:森永甘酒、福光屋シルキー糀甘酒、筆者撮影)

森永甘酒の甘酒は2つの発酵素材「酒粕」と「米麹」のブレンドに、砂糖を加えることで作られ、日本では長年愛用されている。一方で、福光屋は地方ブランドの中でも有名なもので、成分は米と米麹だけで、米本来の甘さを強調する。5月15日までに、上記2商品を試食した人数はそれぞれ21人、46人。(出品時期が違うため、試食人数だけでは人気があるということが言えない)

試食前に、購買意欲を聞いた結果、「とても買ってみたい」を選ぶ割合は森永のほうが福光屋より高い。選択理由に関して尋ねたところ、どれも「パッケージ」「味の紹介」を選んでいるが、「成分、原材料」を選ぶ人の割合は福光屋より森永のほうが高い。この2種類の甘酒の原材料に関して一番大きい違いは森永の甘酒に砂糖が入っていること。

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甘酒商品の試食前の購買意欲と理由(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

ただ、試食後の味覚評価と購買意欲を見たところ、「とてもおいしい」を選ぶ人の割合は森永のほうが高いが、「どちらともいえない」や「おいしくない」と評価する人の割合も森永のほうが高い。その味覚評価に影響され、「とても買ってみたい」「買ってみたい」を選ぶ人の割合を見ると、福光屋のほうが逆に高くなっている。

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甘酒商品の試食後の味覚評価と購買意欲(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

最後に、試食した商品の評価について、ポジティブとネガティブの2つの面から意見も、梅系商品と同じように、テキストマイニングを行い、キーワードを出現頻度で整理した。(日本語のテキストはベトナム語の原文を機械翻訳したもの)

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森永甘酒への評価(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

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福光屋シルキー糀甘酒への評価(Ajimiでの試食データを筆者より整理)

その結果、試食後の購買意欲が高いアイファクトリーとサンガリアの商品へのポジ評価のうち、「甘い」や「米の匂いや香りがする」など共通として出現頻度が高い。一方で、森永の甘酒の場合、甘酒に砂糖も入っているという原因か、甘すぎることでネガティブ評価も受けている。逆に、福光屋の甘酒は適度な甘さということで評価されている。

以上の結果から見て、ベトナム人消費者は甘いものを好む傾向が見られる。例えば、ベトナムのコーヒーやお茶にも砂糖を入れて甘い味にするのが一般的。とはいっても、甘いものならどれでもいいというわけでもないようだ。砂糖の量を過ぎると、逆にネガティブな評価をする可能性もある。そこで、いかにして、ベトナム消費者にとっての「適度」な甘さを見つけるのが重要になってくるだろう。

【Ajimiとは】

Ajimiは日本商品テストマーケティング専門店舗です。4月15日よりホーチミン市のAeon Mall Binh Tanにて、日本企業の商品の試飲・試食の体験型スペースを3か月間テストオープンしております。その場でベトナム生活者の意識・行動データを取得することが可能です。
実施場所:Aeon Mall Binh Tan (ホーチミン市Binh Tan区) 2階 (表示階は1F)
期間:2022年4月15日~6月26日
出品カテゴリ:主に食品・飲料・健康食品・嗜好品(一部ビューティアイテム)
費用:出品料無料(輸送費用等実費ご負担いただきます)
申し込み方法等の詳細につきましては、こちらのファイルをご参照くださいPDFファイル

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Ajimi店舗の写真(筆者より)

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、デジタルライフをご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
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  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。ベトナムでコーヒーを注文するときに、かならず「No sugar」を伝えることを心掛けている。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。

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