imagesColumn

【ベトナム:地球の暮らし方】マルチ機能が当たり前の部屋づくり

ベトナムの伝統的な住宅は、縦長の複数階建てが多いことが特徴だと言われている。各階が細長で、全体的にも決して面積が広いとは言えない。そのため、各スペースの使い方には工夫が必要である。今回は、主にリビングと寝室に焦点を当てて、Consumer Life Panoramaに登録されているベトナム生活者のスペースの活用法についてご紹介していきたい。

関連記事一覧

第1回:【ベトナム:地球の暮らし方】住宅環境から見えるベトナム人の意識・価値観
第2回:<駐在員コラム>【ベトナム:地球の暮らし方】都市により住居タイプが異なることで、洗濯機タイプも違う?
第3回:<駐在員コラム>【ベトナム:地球の暮らし方】意外にも寒さが厳しい北部、バスルームにも南北の違いが
第4回:<駐在員コラム>【ベトナム:地球の暮らし方】ベトナムのキッチン事情~南北の気温差でキッチンの作りが違う?~
第5回:【ベトナム:地球の暮らし方】 日本の味覚がベトナムで通用するか
第6回:【ベトナム:地球の暮らし方】Ajimiでの試食活動から覗くベトナムの味覚特徴
第7回:【中国・ベトナム:地球の暮らし方】おいしい酸味の秘訣とは
第8回: 【ベトナム:地球の暮らし方】Ajimiから見る味噌のポテンシャル
第9回:【ベトナム:地球の暮らし方】味覚に関する固定観念を変える試食活動
第10回:【ベトナム:地球の暮らし方】 ベトナム人の水質へのこだわり
第11回:【ベトナム:地球の暮らし方】 ベトナムのトイレにある「手動式ウォシュレット」
第12回:【ベトナム:地球の暮らし方】南国の暑さ対策に必要なものは何か
第13回:【ベトナム:地球の暮らし方】マルチ機能が当たり前の部屋づくり
第14回:【ベトナム:地球の暮らし方】EV化が進む東南アジア

バイク置き場でもあるリビング

日本で言う「リビング」は、「居間」という文字通り、家族がくつろいだりする場所である。一方、ベトナム語ではリビングを「Phòng Khách」と呼び、直訳すると「来客のための部屋」となる。その名の通り、ベトナム人にとって、リビングは昔から来客を迎えるために使われ、家の顔とも言われている。
ベトナムでもリビングにはソファが定番。ソファに座っておしゃべりしながら、主人が来客にお茶やお菓子でもてなすのは基礎的な礼儀なので、ローテーブルも必須で、よくソファとセットで販売される。
洋風の布製や革製のソファのほか、ベトナムでは昔から木製のひじ掛け付長椅子も人気がある。複雑な彫刻の入った木製椅子は美的価値があると考えられ、主人にとって自慢のポイントであることが多い。

images

 木製の肘掛け付長椅子セット(VN_70)
     出典:Consumer Life Panorama [http://consumer-life-panorama.com/]
           Consumer Life Panoramaの概要はこちら

また、リビングは家の顔と考えているからか、他の部屋より装飾が充実している。昔から中国文化の強い影響を受けているため、幸福をもたらすとされる中国の伝統的な神々や人物の像が飾られている家庭もある。

images

 中国に由来する神と仏の像(VN_17)
     出典:Consumer Life Panorama [http://consumer-life-panorama.com/]
           Consumer Life Panoramaの概要はこちら

一方、大都市では住宅の面積が限られていることもあって、リビングは来客をもてなす以外の用途にも使われている。
特に特徴的なのは、バイク置き場としての利用している家庭がよく見られることだ。ベトナムではバイクの所有率が非常に高いにもかかわらず、公共の駐車場はほとんどない。コンドミニアムなどの集合住宅ではバイク置き場が備えられていることもあるが、戸建(タウンハウス)の場合は自分でスペースを作る必要がある。余裕があれば、家の前を屋外駐車場として使うが、土地が高価の大都市では、ほとんどの家庭にとってそれは贅沢なことだ。
また、家の前にバイクを駐車するのは盗難リスクがあり、通行の迷惑にもなるため、玄関に一番近いリビングに駐車するケースがあるのだ。多くの家庭にとってバイクは貴重な財産なので、セキュリティのためにリビングのスペースを一部犠牲にしても仕方ないと考えているのだろう。家庭によっては、バイクに邪魔されないリビングが欲しい、あるいはバイクの台数が多すぎてリビングに入りきらないという場合は、リビングを2階に移し、1階にバイク置き場のスペースを作るという場合もある。

images

 バイクがリビングに駐車される(VN_34)
     出典:Consumer Life Panorama [http://consumer-life-panorama.com/]
           Consumer Life Panoramaの概要はこちら

images

 家族全員のバイクが停まっているバイク置き場(VN_60)
     出典:Consumer Life Panorama [http://consumer-life-panorama.com/]
           Consumer Life Panoramaの概要はこちら

床にマットレスを直置きする寝室

ベトナム人は、リビングがゲストを迎える場所であるのに対し、寝室はあくまでも居住者のプライベートな場所だと考える。そのため、コンドミニアムの場合は、通常、玄関から離れた奥の場所に配置される。戸建(タウンハウス)の場合は、1階に寝室が配置されることはなく、上の階に複数配置することが多い。これはプライバシーへのこだわりでもあり、湿気対策でもある。
昔の家庭では、主寝室にテレビを置くことが多い。それは、夫婦が家でリラックスする場所として寝室を使っていたからである。ベッドでリラックスしながらテレビを見ることができる。しかし、近年ではスマートフォンやパソコンの普及により、テレビを見るニーズが減り、寝室からテレビが姿を消す家庭も出始めている。とはいえ、リラックスの場としての機能はいまだに大切にされているので、一人で使う場合でもキングサイズやクイーンサイズといった大きなサイズのベッドが使われる家庭も一定数存在しているのだ。

images

 一人の息子の寝室であるキングサイズベッド(VN_112)
     出典:Consumer Life Panorama [http://consumer-life-panorama.com/]
           Consumer Life Panoramaの概要はこちら

また、ベトナムは日本ほどリモートワークが普及しているわけではないため、大人の寝室にデスクなどのワーキングスペースが設置されていることは稀である。その代わり、夫婦の寝室には、よく化粧台がある。そこで女性が毎日スキンケアや出勤前の化粧をしている。
一方、通学の子供の寝室には必ず机や本棚などが置かれている書斎スペースがある。小学生の時代から、夕方に宿題や自習をすることは一般的なので、子供のいる家庭には欠かせないスペースだ

images

 30代の働く女性の化粧台(VN_110)
     出典:Consumer Life Panorama [http://consumer-life-panorama.com/]
           Consumer Life Panoramaの概要はこちら

images

 10歳の子供の書斎スペース(VN_63)
     出典:Consumer Life Panorama [http://consumer-life-panorama.com/]
           Consumer Life Panoramaの概要はこちら

ベトナムは南北で気候に多少違いがある。北部では夏は高温多湿で冬は寒いが、南部では乾季と雨季の2つの季節しかない。そのため、南北の寝室のインテリアも若干の違いがある。寒さと湿気への配慮から、北部では寝る場所を地面から高くするためにベッドを使う家庭が比較的に多い。ベッドがない場合でも、マットレスが直接に地面に接触しないように、すのこを置くことがある。一方、南部では地面に直接にマットレスを置くことも一般的である。その他、涼をとるため、床に直接寝たり、床にマットを敷いて寝たりする家もある。

images

 すのこに置くマットレスハノイの家庭(左:VN_68)、マットレスを直接に床に置くホーチミン市の家庭(右:VN_20)
     出典:Consumer Life Panorama [http://consumer-life-panorama.com/]
           Consumer Life Panoramaの概要はこちら

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、生活行動動画をご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。海外生活者の理解を深めるのにご活用いただけるサービスです。
Consumer Life Panoramaデモサイト:http://consumer-life-panorama.com/demo/
Consumer Life Panoramaの概要はこちら:https://www.global-market-surfer.com/solution/


  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン・イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。テレワークが始まってからは、寝室にテレワークスペースを設置して、マルチファンクションで使えるようになっている。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    高浜 理沙

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。ベトナムのリビングの使われ方は、今はなき昔の日本の「客間」を想起させる。今後、時代とともにベトナムのリビング・家族のくつろぎの在り方も変わってくるのだろうか。

転載・引用について
  • 本レポート・コラムの著作権は、株式会社インテージ または執筆者が所属する企業が保有します。下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。

    「出典: インテージ 調査レポート「(レポートタイトル)」(●年●月●日発行)」
    「出典:Global Market Surfer ●年●月●日公開
  • 禁止事項:
    • 内容の一部または全部の改変
    • 内容の一部または全部の販売・出版
    • 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
    • 企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的とした転載・引用
  • その他注意点:
    • 本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
    • この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
  • 転載・引用についてのお問い合わせはこちら