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【ベトナム:地球の暮らし方】南国の暑さ対策に必要なものは何か

熱帯の国であるベトナムは一年中気温が高いとはいえ、南北に細長い国でもある。そのため、暑さ対策においては、日本とだいぶ違う南国ならではの方法がある上に、北部と南部はまた違いがある。さらに、ベトナムは発展途上国でもあるので、近年著しい経済成長の一方で、近代的な解決法と伝統的な知恵が共存しているという側面もあるので面白い。今回は、ベトナムの暑さ対策について、Consumer Life Panoramaに登録されている生活者をご紹介しながら、解説していきたい。

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増えるエアコン台数と不足する電力供給

ベトナム、特に都市部では近年エアコンの使用率が増えている。ベトナムの統計データによると、2019年の全国の使用率は31.4%だが、ハノイ、ホーチミンといった主要都市では、それぞれ75.1%と52.9%で全国平均より20%以上高い。
このデータを見ると、ベトナムにある程度詳しい方であれば少し違和感を感じるのではないだろうか?ホーチミンはハノイよりずっと南のほうに位置しており熱帯気候で一年中気温が高く、経済もハノイより進んでいるのに、エアコンの普及は亜熱帯気候で四季があるハノイのほうが高い。実は、ハノイは盆地のような地形のため、湿気が逃げにくいという特徴があるのだ。その結果、ハノイでは夏になると、温度の高い熱風に加え、湿度も高く、エアコンがないととても耐えられない。一方、ホーチミンでは風通しさえよくすれば、エアコンなしでも結構過ごせるのだ。

とはいえ、近年の経済成長に伴い、家電を買って家をより快適にするというニーズも増えてきている。そのため、近年エアコンを購入する世帯も増えている。先ほどのハノイとホーチミンの2019年のデータだが、5年前の2014年と比べて、それぞれ33.4%ポイント、16.5%ポイント増加したという。
また、中国に代わって世界の工場となるというベトナム当局の野心もあって、ベトナムに工場を設立する企業が増えている。家庭でエアコンをはじめとした家電の使用量が増えているのに加え、工業の電気へのニーズも増加している。一方で、ベトナムは水力発電に頼っているため、電力供給は天然水量に依存しており、電力不足も近年深刻な問題となってきている。

そのため、普段の生活でも節電するように、政府は一般生活者向けの節電運動を行っている。エアコンがなかった時代、扇風機は夏の救世主だったが、エアコンが普及されてきている今でも、日常的に節電するために扇風機はやはり欠かせなく、各部屋に1台の扇風機を置く家庭も少なくない。扇風機には、スタンドタイプ、壁掛けタイプ、シーリングファンなど、さまざまなタイプがある。また、近年では水を使った冷風機も普及している。リビングやダイニングなど広い空間に設置するのが一般的だ。さらに、夏の電気不足に対応するために、停電時に使用できるような充電機能を備えた扇風機もある。

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 寝室にある扇風機(左)リビングにあるシーリングファンとエアコン(中)リビングにある冷風機(VN_127, VN_70, VN_98)
  出典:Consumer Life Panorama
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涼感へのこだわり

冷房が普及すると同時に、暑い夏に少しでも涼感を感じるために昔から伝わってきた方法も同時に使われている。例えば、寝るときに肌が接触する表面が涼しくするため、夏にはベッドシーツの代わりに草や竹で作った日本の茣蓙のようなマットを使うのが昔からの伝統だ。また、特に南部では、床に直接寝る家庭も存在している。そのため、床を清潔に保つことが重要なので、1日1回はモップで床を掃除するのが一般的とのこと。床掃除用の洗剤も広く使われており、素肌が床に接触することが多いため、天然成分の洗剤が好まれる。特に、レモングラスのエッセンスが入った洗剤は、蚊を寄せ付けないため人気がある。

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 ベッドのないベトナム寝室とレモングラスエッセンスが入った洗剤(VN_26) 
  出典:Consumer Life Panorama
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また、ソファも木製のものが昔から人気がある。そこには2つの理由が考えられる。ひとつは、布や革より涼しいためで、もう一つは、複雑なつくりの木製ソファは身分の象徴でもあるため、リビングに飾るとインパクトがあるためだ。天然木や希少な木材を使用したセットは高価である。このセットは、ホームオーナーにとって自慢のポイントであることが多い。冬に気温が下がる北部では、木製のソファの上に座布団など置く家庭もある。

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 リビングの中心に置く木製ソファセット(VN_70) 
  出典:Consumer Life Panorama
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【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、生活行動動画をご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。海外生活者の理解を深めるのにご活用いただけるサービスです。
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  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン・イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。東京の夏が蒸し暑く、外出の時には必ず手持ち扇風機を鞄に入れておく。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    高浜 理沙

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。

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