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【ベトナム:地球の暮らし方】Ajimiから見る味噌のポテンシャル

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さしすせその1つである、みそは日本の伝統的な調味料の代表格といってもよいだろう。日本ではなじみのある味ではあるが、海外では受容されるのだろうか?どのようにすれば、日本の味を海外消費者にも理解してもらえるか。今回は、2022年4月~6月に、ベトナムのホーチミンで実施したテストマーケティング店舗「Ajimi」の第1弾企画の結果を事例にご紹介したい。

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Ajimiと展示商品

Ajimiはインテージが企画する日本商品テストマーケティングの専門店舗である4月から6月の二ヵ月間でホーチミン市のAeon Mall Binh Tanにて、日本企業の商品の試飲・試食の体験型スペースをテストオープンした。

その場でベトナム生活者の意識・行動データを取得することが可能。Ajimiのホーチミン店舗では来店する顧客に試食前後アンケートをとる。試食前には基本属性、試食意向と選択理由を確認し、試食後は味覚評価と購入意向を確認する。その後、価格を提示してまた購入意向を確認した後、商品に対する全体評価を自由回答で取得する。

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Ajimiホーチミン店舗でのアンケート項目

Ajimiホーチミン店舗では、インテージ選定の商品が30品近く展示されて、その中で、みそ関連はおもに3商品ある。即席みそ汁商品2品と、みそ入りのたまねぎクリームスープ1品。

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みそ関連3商品の試食人数
出所:Ajimiホーチミン店舗調査より筆者整理

今回は、Ajimiホーチミン店舗で展示していた上のみそ関連の3商品の試食前後の購入意向の変化と商品への評価を事例に、日本の伝統的な味が海外で展開する際の課題についてご説明したい。

試食前後の購入意向変化

顧客が入店した後、商品のパッケージや商品紹介情報から、好きな試食商品を2品選択することができる。上の試食人数からみて、みそ入りたまねぎクリームスープCより即席みそ汁A、Bに商品が選ばれやすい結果が見て取れるだろう。ベトナムではまだまだみそ汁の認知度は低いが、韓国料理レストランや「すき家」などのリーズナブルな日本食チェーンの出現により、都市部ではみそ汁を飲んだことがある人が増えつつある。その結果、みそ汁が普段見慣れているオニオンスープよりも選択されやすい可能性が考えられる。

それぞれの商品が選択される理由について聞いた結果(下図)、即席みそ汁A、B2商品は同じ傾向でパッケージと味の紹介で選択される。また、日本では人気だそうだという理由を選択する割合が、みそ入りたまねぎクリームスープCより高い。一方で、みそ入りたまねぎクリームスープCはパッケージと味の紹介以外に、成分/原材料も選択される要因の一つで、得点が即席みそ汁A、Bより高い結果となる。

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試食前に商品が選択される理由
出所:Ajimiホーチミン店舗調査より筆者整理

次は試食前後の購入意向の変化(下図)を見てみよう。試食前はどの商品は購入意向がほぼ同じ水準。しかし、試食後、即席みそ汁AもBも、「買ってみたくない」や「全く買ってみたくない」が選択される割合が一部増えた。一方で、「とても買ってみたい」割合はみそ入りたまねぎクリームスープCが圧倒的に高くなった。

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試食前後の商品購入意向の変化
出所:Ajimiホーチミン店舗調査より筆者整理

その理由について、まず味覚評価を確認した結果(下図)、ポジティブ評価(「とてもおいしい」「おいしい」の合計値)は即席みそ汁A、Bよりも、みそ入りたまねぎクリームスープCのほうが高い。特に、「とてもおいしい」割合に関してみそ入りたまねぎクリームスープCのほうが高い傾向が見て取れる。

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試食後の味覚評価
出所:Ajimiホーチミン店舗調査より筆者整理

実は、ベトナム人は薄味が好きだという先入観の影響もあってか、日本食チェーン店に出されているみそ汁は日本の本格的なみそ汁より味が薄かった。この薄味のみそ汁を食べていたベトナムの消費者はみそ汁に対する認識も日本の消費者と異なったのかもしれない。それに対し、即席みそ汁A、Bはベトナム人が試食前の想定を超えた塩味のため、試食後でも購入意向がそれほど高くならないこととなったと推測される。また、玉葱はベトナムでなじみのある味で、クリームスープはみそ汁の塩味を和らげる効果もあるため、よりベトナム人の口に合うかもしれない。

顧客の評価から得られる示唆

最後は、3商品に対するポジティブ評価とネガティブ評価に関する自由回答の結果を見てみよう。まず、即席みそ汁Aに関しては、適度な塩味や甘さ、香りのいい味噌スープなどが評価されている。ネガティブ評価は、「コメント無し」を除けば、味がしょっぱいことや、大豆や魚介の味やにおいが強いことなどが多く言及されている。即席みそ汁Bに関しては、次に、海苔の香りや、塩味や甘さのあるスープがおいしいと評価されている。ネガティブ評価は、 「コメント無し」を除けば、味がしょっぱいことや海苔の匂いが強いことなどが多く言及されている。最後、みそ入りたまねぎクリームスープCに関しては、玉葱の香りや適度な塩味と甘み、クリーミーなスープが評価されている。ネガティブ評価が少なく、 「コメント無し」と「価格が高い」を除けば、一部の人はしょっぱいと言及するが、出現頻度が即席みそ汁A、B2商品より少ない。

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即席みそ汁Aに対するポジティブ評価(左)とネガティブ評価(右)
出所:Ajimiホーチミン店舗調査より筆者整理

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即席みそ汁Bに対するポジティブ評価(左)とネガティブ評価(右)
出所:Ajimiホーチミン店舗調査より筆者整理

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みそ入りたまねぎクリームスープCに対するポジティブ評価(左)とネガティブ評価(右)
出所:Ajimiホーチミン店舗調査より筆者整理

この結果からみても、即席みそ汁A、Bはその味のしょっぱさで、評価が分かれていて、受け入れる人もいれば、思ったよりしょっぱいことでネガティブ評価をする人も一定数存在している。また、大豆、魚介類や海苔の匂いが強いことも即席みそ汁A、Bのネガティブ評価につながる一因となる。それに対し、たまねぎクリームスープCでは、たまねぎでみその匂いと中和させ、クリームスープでしょっぱさも中和させた結果、より良い評価につながったのかもしれない。

ベトナム人は料理の味付けにはこだわりがあるので、家の中で調理する家庭の場合、豊富な種類の調味料をキッチンに収納する世帯も少なくない。一方で、日本の調味料のほとんどは今のところ使用シーンが限られているため、食用油以外に、自宅で常備するものにはなっていない。

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調味料の種類が多いベトナム家庭(VN_40)と日本ブランドを使用するベトナム家庭(VN_64)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama
(Consumer Life Panoramaの概要はこちら

とはいえ、日本の味噌にチャンスがないわけでもない。例えば、近年、健康意識の高い人が多く、「発酵食品は健康に良い」という認識も浸透している。最近はベトナムのネットでも「健康に良い発酵食品」と検索すると「みそ」も挙がるようになり、レシピも多数紹介されている。また、ベトナムの食事では白米にスープは欠かせない。味噌汁はどんな野菜を入れても味が合うことから、訴求次第でベトナムの食卓に浸透する可能性もあると考えられる。もちろん、その前提として、今回Ajimiでテストした結果のように、日本の味を海外で普及させるためには、まずご当地の味覚を徹底的に理解して、そのギャップを把握することが必要かもしれません。

【次回のAjimi企画のご案内】

2022年10月1日から、ハノイの都心部に位置するフジマート2号店で、Ajimi企画第二弾を実施することとなりました。店舗に実際に訪れる現地の人々に、貴社ブランドの試食やブランドストーリーを実体験いただくショールーム型ブランド診断スペースというコンセプトで、ブランド体験の結果をデータでご提供することができます。実施概要は下記となります。

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Ajimiハノイ企画の実施概要

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Ajimi企画期間限定出店スペースのイメージ

Ajimi企画の詳細についてご興味をお持ちの方は、下記メールアドレスからお問い合わせください。
株式会社インテージ グローバル企画室 Ajimi プロジェクト事務局 ajimi@intage.com

【Consumer Life Panoramaとは】

Consumer Life Panoramaは、日本や海外の消費者のリアルな生活実態をご覧いただけるインテージのWEBデータベースです。各国生活者の住環境を360度画像で閲覧したり、一日の生活の流れや動線、デジタルライフをご覧頂くことができます。
本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
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  • Intage Inc

    執筆者プロフィール
    ヤン イェン

    日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。みそは濃いめが好き。

  • Intage Inc

    編集者プロフィール
    辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)

    Global Market Surferのサイトづくりを担当。お雑煮は白みそ、鮨には赤だしが好き。

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