【中国・ベトナム:地球の暮らし方】おいしい酸味の秘訣とは
「夏は酸味」と、養生訓が書いた通り、毎年夏になると、おいしい酸味でさっぱりしたいと思う人が多いだろう。実は養生を最も重視する中国でも、東南アジアといった暑い国でも、酸味を摂取する習慣があるのだ。それぞれの国では、どのようにおいしい酸味を出すのか。また、日本とどこが違うのか。今回は、Consumer Life Panoramaに登録されている中国とベトナムの生活者のキッチンから、それぞれの国のおいしい酸味の秘訣を探索してみよう。
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食事に合わせてお酢を使い分ける中国
中国では古くからお酢を使う伝統がある。生活に必要な七つのものは「柴、米、油、塩、醤、酢、茶」といわれるように、お酢は中国人の日常生活の中でかなり重要な役割を果たしている。また、漢方では、お酢は体の湿気を取る効果もあるといわれている。それ以外に、お酢には食欲促進、美肌効果、夏の疲れを取るといった効果もあるため、中国では料理の中でかなり広く使われている。
中国のキッチンに必ず収納されているお酢(左:CN_82, 右:CN_94)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama)
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日本では、料理に使うお酢といったら、主には白い米酢のイメージだが、実は中国では米酢や白酢といった色が薄い酢もあれば、香酢、陳酢といった色が濃い酢もある。しかも、こういった色が濃い酢のほうがもっと広く使われているのだ。
酢といえば、中国では4大名酢といわれている江蘇省の「鎮江香酢」、山西省の「山西老陳酢」、四川省の「保寧酢」と福建省の「永春老酢」がある。それぞれはその地方の料理に合った製法で作られ、味も香りも違う。製法で分けると、また「白酢」「米酢」「香酢」「陳酢」といった4種類に分けることができる。
白酢は主な成分酢酸と水なので、透明な色をする一方で、酸味がメインとなっている。そのため、色が浅い野菜を炒める時やスープを作る時に少し入れても元の色を変えずに酸味が出るようにできる。代表的な料理はジャガイモの細切り炒め。米酢は主な成分が米なので、酸味以外に少し甘みもある。そのため、野菜の浅漬けの時に使うと、味を豊かにする効果がある。香酢は名前の通り、発酵したいい香りがする酢のことを指す。色も白酢より濃く見える。和え物にいれることが多い。すっきりする以外に香りもするので料理をより一層おいしくする効果がある。また、麺類にも合うので、餃子のたれ、混ぜそばにもよく使用される。陳酢醸造時間が長いため、色が濃く、後味もいい。餃子のたれにも使われるが、以外に、「老酢落花生」といった料理があって、ピーナッツを漬けて、酒のつまみとしてもよく使われている。
中国酢の種類
出典:Tencent
さらに、お酢以外にも、地方によっては同じ料理でも違う方法で酸味を出すこともあるのだ。最も有名な事例は中国東北地方の有名料理鍋包肉(ゴウバオロー)だ。これを日本語でいうと豚肉の甘酢炒めなので、甘酸っぱい味がメインの料理である。ところが、同じ東北地方でも、作り方が2通りある。黒竜江省では酢を使うのが主流だが、瀋陽ではケチャップを使うのが多い。
自然の酸味を活かすベトナム
国は変わってベトナムでも、酸味が食欲促進の効果があると認識して、料理に酸味を入れる習慣がある。ただ、中国と違って、お酢を使うよりも自然の酸味を活かすといった特徴がある。主に使われているものは、ライム、きんかん、タマリンド、パイナップルとトマトなどが挙げられる。
ベトナム家庭の冷蔵庫にあるトマト(左:VN_118)とライム(右:VN_122)
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama)
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まず、ベトナムには酸っぱい味で有名なのはcanh chua(カインチュア)という酸っぱいスープがある。これはメコンデルタエリアの特色の料理で、タマリンドにパイナップル、トマト等を入れて出汁を作るのだ。酸味がよく効いて人気がある。
麺類を食べる際に、よくライムやきんかん等で果汁を絞って、スープに入れるのが一般的な作法だ。ライムは身体の熱を逃す食べ物だといわれるので、ベトナムではかなり人気がある。麺類以外に、チキンや貝を食べる時に、塩、コショウプライスライムといった食べ方もある。
麺類に使われるライム(左)とタマリンドのジャム
出典:筆者撮影
また、ベトナム人は甘酸っぱい味が気に入り、漬物でも薄い酸っぱさに甘い味覚が特徴的だ。それ以外に、タマリンドをジャム状にしたうえで、はちみつを入れて、水で希釈して、中に氷をたくさん入れる飲み物がベトナムでは暑さ対策に効くもの。こうして、それぞれの国では、自分なりの方法でおいしい酸味を出しているのだ。
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本記事の写真の一部も、このデータベースに登録されている生活者の写真を引用しています。カスタマイズした調査によらず、手元で海外生活者の住環境を観察したいという場合においてご活用いただけるサービスです。
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執筆者プロフィール
ヤン イェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。ウィスキーにレモンを入れるのが好き。
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編集者プロフィール
辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。ライム、ザボン、タマリンドは得意なのに、日本のもずくだけは苦手。
- 2022/07/31
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