【中国:地球の暮らし方】自宅に置かれている小物から見る中国人のライフスタイル
これまでのコラムでは、日本と中国を比較しながら、中国生活者の住空間やレイアウトなどについて紹介してきた。実は、中国人のライフスタイルは居住空間ごとの違いや、レイアウトの違いからだけではなく、住宅中に散在する小さなアクセサリーからも伺えるのだ。
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お湯へのこだわり
たぶん世界中、中国人ほどお湯にこだわる民族はほかにいないと言っても過言ではないだろう。その裏には、中医の陰陽調和という理論がある。お湯を飲むと、「温陽」という効果があり、寒さを追い払い、体の中の「陰」の気を中和することで、病気を治す効果があると中国人はこのことについて昔から信じている。また、中国の水道水は日本のように直接飲める水ではないので、中国で常温の水を飲みたい場合は、一度水道水を沸かしてから、常温まで放置するという習慣がある。また、中国のレストランに行くと、ほとんどの場合、お客さんに出すのがお冷の代わりに、温かいお茶だということは気づくだろう。これも、この中医の理論と習慣による影響なのだ。
そのため、実際に中国人の家庭にはこの習慣を反映する小物がたくさん見られる。まず、中国の家庭をよく見ると、必ず湯沸かし器やケトルが一つは置かれている。お湯を沸かしたら次は保温だ。保温機能がついている湯沸かし器の場合は沸かした後そのまま置いていればいいのだが、ケトルの場合、保温でほかに必要なものがある。そのため、中国人は昔から魔法瓶や保温瓶を使う習慣がある。
湯沸かし器(左)、ケトル(中)と魔法瓶(右)を設置する中国住宅
(出典:生活者データベースConsumer Life Panorama)
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中国人は普段の生活の中でお湯を使うシーンが多い。まず一番多いのが直接飲用すること。また、料理に使ったり、お茶を入れたりすることもよくある。それ以外にお湯を使うシーンとしては、寒い時期に洗面や足を洗う場合にも使用する(給湯器が普及してこの習慣は減少していると考えられる)。そのため、中国人家庭では十分なお湯を常に確保するニーズが高い。そこで広く使われているのが魔法瓶だ。また、一回目と二回目のコラムの際に、キッチンの水の二重利用や洗面などに使用する湯桶について紹介したことがあるが、魔法瓶は湯桶と同じ、昔の時代の習慣で、中高年の家庭を訪問すると、今でもこの習慣を残っているのが多い。
多様な調理と狭いキッチンスペースという課題
一回目と三回目のコラムの際に、中国家庭のキッチンスペースが狭いため、よくキッチンに置けなくなるのが冷蔵庫だということについて紹介した。中華の調理方法は多い。そのために、利用する調理器具も相当ある。一方で、キッチンのスペースが限られている。そのため、調理器具をどこに収納、設置するかがかなり大きな課題となる。実際に、キッチンから追い出されたのは、冷蔵庫だけではない。特に1人当たり住居面積がとりわけ少ない上海では、この課題が顕著だ。例えば、炊飯器をリビング・ダイニングルームに置いたり、電子レンジなどを隙間空間に置いたりすることで、みんなこの課題解決のために、知恵を絞っている。
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執筆者プロフィール
ヤン イェン
日本在住の中国人リサーチャー、中国をメインに海外消費者生活実態を発信。日本に来ても、お湯を飲む習慣はまだ変わっていない。
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編集者プロフィール
辰田 悠輔(たつだ ゆうすけ)
Global Market Surferのサイトづくりを担当。学生時代はキンキンに冷えたお茶ばかり飲んでいたが、中国出張をきっかけに常温のお茶を飲み始めて今も続いている。
- 2021/02/02
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